ジャニー喜多川氏死去の報道、芸能評論家はどう見たか 「スッキリ!」の“ほぼ全員喪服”に「天皇が亡くなった訳でもないのに」
7月9日夜、ジャニーズ事務所社長のジャニー喜多川氏が87歳で亡くなった。メディアでは一夜明けた10日以降、喜多川氏に関する報道が続いている。番組によっては30分以上、長ければ1時間程度の尺を割き、ジャニー氏の功績を紹介するものが多い。
一方、視聴者からは、こうした報道のいくつかに疑問を感じたという声もある。例えば日本テレビは10日、朝の情報番組「スッキリ」で喜多川氏の訃報を伝えたが、司会やコメンテーターなど9人のうち、黒や紺色以外の色を着たのは1人だけだった。ネットではこの様子に「喪服みたい」「追悼番組でもないのに違和感ある」という声が相次いでいた。
こうしたジャニー氏に関する様々な報道を、芸能評論家はどう見たのだろうか。芸能文化評論家の肥留間正明さんはキャリコネニュースの取材に対し、「こうした対応はまったくおかしい。テレビ局として反省しなければならない」と憤った。
「黒や紺の服を着ていないからといって、哀悼の意を表していないわけではない」
肥留間さんは、「確かに、プロデューサーといえば、ジャニーさんの右に出る人は誰もいない。マネージャー、プロデューサーがこれだけ番組に取り上げられるのは過去に例がなく、逆に言えば、日本の芸能史というのはジャニーズ事務所の歴史ということ」と、ジャニー氏の功績を称える。しかし、それと服装の話は分けて考えなければいけない。
「番組で扱う内容には、楽しいこともゴシップ的なものもあり、ジャニー氏だけを取り上げるわけではない。局の姿勢は恥ずかしい。天皇陛下が亡くなったわけでもないのだから、こんな姿勢を取る必要はなかった」
「黒や紺の服を着ていないからといって、ジャニーさんに哀悼の意を表していないわけではない」と言うのももっともだ。その上で、
「ジャニーズ事務所所属の人が出演するなら、その人が喪服を着用するのも分かる。しかし、出演者全体で着る必要はない。もはや視聴者に対する冒涜」
とも主張した。
「亡くなった人に追い打ちをかけるのはやめよう、という意識が芸能記者の間にある」
ネット上では、テレビや新聞各局がジャニー氏の功績ばかりを報道することに対しても違和感がある、とする声が多数出ている。ジャニー氏は1999年、所属タレントへの性的虐待を週刊文春に報じられた。ジャニーズ事務所は、記事は事実でないとして裁判を起こしたが、最高裁は2003年、記事中の虐待は事実だったと認める判決を出している。
新聞やテレビ、ネットの報道を見ると、大手新聞社やニュースサイトでジャニー氏の虐待に触れているのは、朝日新聞や英BBCくらいだ。ほとんどの国内メデイアが虐待の件を扱っていないことに、「不自然だ」「忖度が働いている」という声があるのも頷ける。
しかし肥留間さんは「亡くなった人間に追い打ちをかけるようなことはやめよう、という意識が芸能記者の間にある」とコメント。虐待の事実が報道されないことに、一定の理解を示した。
海外では司会者や芸能人の死後、生前の彼らにセクハラを受けた被害者が告発するのも珍しくはない。そういう点では、今回のジャニー氏を巡る報道は非常に日本的だったと言えそうだ。
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