仮称HTCRとして導入予定の共通ハイブリッド機構は2024年に延期。規格の“持続可能性”が課題に

2023年1月6日(金)16時35分 AUTOSPORT web

 TCR規定ツーリングカーを統括するWSCグループは、2023年から予定していた共通ハイブリッド機構の導入を2024年まで延期すると発表し、理由として「世界的なツーリングカー競技のフォーマット変更」を挙げている。


 イタリアを拠点にWTCR世界ツーリングカー・カップにも参戦したロメオ・フェラーリの支援協力も得て、広範なテストプログラムを通じた技術開発が続けられてきた仮称“HTCR”と呼ばれる同システムは、2022年末の段階でほぼ完成の状態まで仕上げられており、メーカーやプロモーターからも強い関心を呼び起こす起爆剤になることが期待されていた。


 しかし、ツーリングカーを取り巻く状況の変化により、昨年末の時点でプログラムは1年延期されることが決まり、WSCを率いるマルチェロ・ロッティ会長は「この決定は、世界的なツーリングカー競技のフォーマット変更に続き、今後開かれる新しいシナリオによって決定されたもの」だと説明。


 2023年を前に突如として幕を閉じたWTCRに代わり、その立ち位置を引き継ぐTCRワールドツアーと、新たなランキングシステムの導入に際し、同時にハイブリッドの段階的な導入を強行することが「新システムの運用に干渉するだろう」との見通しを語った。


「我々がTCRワールドツアーのアイデアを具現化するに至ったTCRワールド・ランキングの導入は、ハイブリッドシステムの適用を“再考する”よう、我々にアドバイスする契機になった」と明かしたロッティ代表。


「実際、これによりハイブリッドシステムを搭載していないクルマで各国のナショナル選手権に出場する選手たちは、相対的にTCRワールドツアーの常連と対等に戦うことができなくなっていただろうね」


「そのため、来年からハイブリッドシステムを導入したいプロモーターに状況を説明し、2024年に彼らの要求が満たされることを伝えたんだ」

仮称”HTCR”と呼ばれる同システムは、Romeo Ferrarisの支援協力も得て、2021年から広範なテストプログラムを通じた技術開発が続けられてきた


■電動化の分野において、他のツーリングカーシリーズに後れを取るTCR規定


 ハイブリッドシステム自体は、すでにモータースポーツにとって目新しい技術ではないものの、この決定によりTCRは電動化の分野で遅れを取ることが避けられない情勢となった。


 最初のTCR共通ハイブリッド機構のテストは2021年後半に開始されていたものの、同年にはWTCRの電動姉妹シリーズであるピュアETCRが誕生し、翌年には FIAステータスが付与され、新たにFIA ETCRことeツーリングカー・ワールドカップと改名され、クプラ、ヒョンデ、アルファロメオが参戦した。


 純粋な内燃機関を搭載するTCR規定車両で争われたWTCRでは、マニュファクチャラーが直接的なワークス体制参加することを許可されていなかったが、参戦チームの予算の多くは各ブランドのカスタマーレーシング部門、つまりマニュファクチャラー本体の意向を汲んだ活動が実態となっていた。


 電気自動車やハイブリッドに限らず、水素など代替燃料の技術開発に莫大な資金を投資することが至上命題となっている現在の自動車市場において、持続可能性こそがモータースポーツの資金源を握るメーカーにとって重要な部分を占めている。


 WTCRのプロモーターだったディスカバリー・スポーツ・イベントで責任者を務めるフランソワ・リベイロは、シリーズの発展的終了をアナウンスした際にも、いわゆるカーボンニュートラル・フューエル(CNF)の導入を示唆するコメントを残しているが、技術的には「TCRカテゴリーで使用される量産エンジンとは、まだ互換性がなく機械部品に対する要求が高すぎる」との見解も示していた。


 イギリスでは、従来よりB10燃料を採用するBTCCイギリス・ツーリングカー選手権が2022年から共通ハイブリッド機構を搭載するなど、独自の“サステナビリティ”構想で生き残りへ本腰を入れ、北米や日本でもハイブリッド機構やCNF燃料の本格採用に動き出しているなか、世界的に展開されるTCR規定ツーリングカーも、持続可能性の一刻も早い対策に向け「待ったなし」の状況となっている。

世界的に展開されるTCR規定ツーリングカーも、持続可能性の一刻も早い対策に向け、待ったなしの状況となっている

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