【アジア杯コラム】韓国代表が誇る“ファンタスティック5”に注目…指揮官は進むべき道筋を示せるか

2024年1月8日(月)20時0分 サッカーキング

[写真]=Getty Images

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 韓国代表は現地1月6日に行われた国際親善試合でイラク代表に勝利した。主導権を握って試合を進めながら1-0とロースコアで、FWソン・フンミンら主軸を投入した後半の低調ぶりは今後への少なくない不安を感じさせた。

 そもそも就任当初からユルゲン・クリンスマン監督に対しての見方は厳しかったが、6連勝かつ7試合連続無失点にも関わらず、アジアカップを前にその手腕への疑念は深まっている。プレミアリーグで得点王争いをするソン・フンミンやFWファン・ヒチャンら豊富な攻撃陣のタレントを生かしきれていないのが現状だ。

 6日のイラク代表戦では後半からソン・フンミン、DFキム・ミンジェ、FWチョ・ギュソン、MFイ・ガンイン、そしてファン・ヒチャンと主力5人を一挙に投入したがシュート3本に終わった。本来の控え選手が多かった前半の8本に比べてシュート数は半分以下となり、有効な攻撃の形がなかなか見えてこない。幸いだったのは2枚の警告を受けたイ・ガンインの退場がアジアカップ本大会に影響を及ぼさないことくらいだろう。

 韓国メディアの論調は極めて現実的かつ批判的だった。クリンスマン監督がイラク代表戦の後半から起用した「ファンタスティック5」の負担を減らさなければならないという見解は、複数のメディアで一致している。「プランB」をテストした前半にプレーした選手たちとソン・フンミンら5人との実力差が大きく、誰か一人でも負傷や体調不良で欠けてしまえば窮地に陥る可能性も指摘されている。

 特に守備陣ではキム・ミンジェが鍵を握る。彼がピッチに立っていなかった前半は度々イラク代表のカウンターを食らい、自陣ゴール前でピンチを迎えた。かつてJリーグで活躍し、2023シーズンはKリーグMVPに輝いたキム・ヨングォンとキム・ミンジェのコンビは守備の安定には欠かせない。

 攻撃に関しては、ファン・ヒチャンとイ・ガンインが左右両サイドで高い突破力を発揮し、中央のソン・フンミンもアジアでは別格のクオリティでチャンスメイクからフィニッシュまで何でもこなす。だが、彼らに自由を与えるあまり明確な「型」がなく、ゴールまでの道筋が行き当たりばったりというのが韓国代表の現状だ。

 それでも優勝候補であることに変わりはない。「ファンタスティック5」の控えにはシュトゥットガルトで活躍するFWチョン・ウヨンやセルティックのFWオ・ヒョンギュ、イラク代表戦で決勝点を奪ったマインツのMFイ・ジェソンら欧州組が名を連ねる。確かにチーム内格差はあるが、個々のクオリティはアジアトップクラスだろう。

 あとはクリンスマン監督が連戦になる大会の中でチームに対してどのように進むべき方向を示していけるか。不透明な就任プロセスから、就任後も韓国にほとんど滞在せず自宅のあるアメリカで過ごすこと、さらには細かい発言、戦術的なオプションの少なさで常に批判の的になってきた元ドイツ代表の指揮官がアジアカップという大舞台で求心力を発揮できるかが注目される。

【KEY PLAYER】FW7 ソン・フンミン

「現在アジアでNo.1の選手は誰か?」と問われた時、「ソン・フンミン」と答えることに疑義を唱える者はいないだろう。プレミアリーグの強豪トッテナムでキャプテンを任され、今季は得点王争いでも常に上位につけている万能アタッカーはいまや世界的なスーパースターたちに肩を並べたアジアサッカー界の顔だ。

 プレミアリーグで通算157得点を挙げ、今季は8シーズン連続の二桁得点も達成。どこからでもゴールを奪えるシュートのクオリティを備えるだけでなく、最前線と2列目のどのエリアでも力を発揮できるユーティリティ性、そして攻守両面で一切の妥協がない献身性も持ち合わせる。

 韓国代表でもキャプテンを務め、主にトップ下として起用される。中央に配置されればプレーエリアの広大さを存分に活かすことができ、自由にボールに絡みながら、周りの選手たちを動かして最終局面で違いを作っていける。昨年11月の北中米ワールドカップのアジア2次予選・中国代表戦では2得点1アシストを記録し、3得点全てに関与してチームを3-0での快勝に導いた。

 ソン・フンミンはアジアカップには過去3度出場しているが、2011年大会は3位、2015年大会は準優勝、2019年大会は準々決勝敗退と頂点には届いていない。キャリア最盛期とも言える31歳で迎える自身4度目の今大会は、何としてもアジア制覇を成し遂げようと闘志を燃やしているに違いない。

文=舩木渉

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