エクストリームEの海上パドック、セント・ヘレナ就航。開幕戦の地に向けリバプールを出港

2021年2月22日(月)17時0分 AUTOSPORT web

 2021年4月に開幕を迎える独創的コンセプトの電動オフロード選手権『Extreme E(エクストリームE)』で、創設アナウンス時から目玉のひとつとして公開されてきた“フローティング・パドック”となる元貨客船、RMS St.Helena(セント・ヘレナ号)が2年間の大規模改修プロセスを経て就航。開幕の地サウジアラビアに向けて、2月18日にイギリス・リバプールの港を出港した。


 南大西洋に浮かぶイギリス領、セント・ヘレナ島とロンドンを結ぶライフラインとして機能し、数年前に貨客船としての使命を終えていた元RMS(Royal Mail Ship/王立郵便船)は、シリーズラウンチの会場として姿を見せた2018年からエクストリームEシリーズの管理下に置かれ、あらゆる領域のオーバーホールと機械的改修、新機能の実装を含む数百万ユーロの大規模な改修プロセスを完了した。


 地球環境保全活動とその啓蒙、さらに男女平等と独創的な放映形態を採用するこの新シリーズで、ロジスティックスのみならずチャンピオンシップ・ハブとして機能する同船が、インテリアの全面改装とフレッシュなカラーリングをまとって新たな任務に赴くときがきた。


 このエクストリームEの仕掛け人であり、電動モータースポーツの先駆であるABBフォーミュラE選手権同様シリーズCEOを務めるアレハンドロ・アガグは、その出発式にて「こうして今日、セント・ヘレナ号が出航の日を迎えたことを心から誇りに思う」と挨拶の言葉を述べた。


「彼女の新しい航海はすべての始まりを意味し、このExtreme Eの初年度シーズンが正式に進行中であることを示すものだ。これは大規模なプロジェクトで2018年に我々がこの船を購入して以降、内装も含めて見違えるような姿に生まれ変わった」と続けたアガグ。


「この機会を利用して、セント・ヘレナで新しい旅の準備をするため一生懸命に働いてくれたすべての乗組員と、ここリバプールのキャメルレアード港のチームに感謝したい。彼らの努力なしに、我々がこの旅に参加するのは不可能だった」


 スパーク・レーシング・テクノロジーズ(SRT)と、ウイリアムズ・アドバンスド・エンジアリング(WAE)が設計・製造を担ったワンメイク電動SUV『ODYSSEY 21(オデッセイ21)』プロトタイプを筆頭に、チームガレージを形成するエアシェルターテント、表彰台、スタート用ガンツリー、TV用放送機器などが積み込まれたセント・ヘレナには、プラスチック廃棄物をチャンピオンシップのトロフィーに変える特殊な3Dプリンターや、AFCエネルギー社と共同開発されたゼロエミッション車充電用の水素燃料電池など、環境保全に配慮した数々の機器も搭載された。

開幕戦に向け、ワンメイク電動SUV『オデッセイ21』やエアシェルターテント、表彰台、スタート用ガンツリー、TV用放送機器などが積み込まれた
最後の参戦発表チームとなったJBXEを率いるジェンソン・バトンも、マシンのシェイクダウンを済ませている


■気候科学の研究者14名も乗船。航海中に海洋研究を実施へ


 また船体修復のアプローチも部品交換による廃棄を極力回避し、内装を剥がして再生材として活用することで現代的でモダンな空間に仕上げ、低エネルギーのLEDライト、水消費量の少ないバスルームや備品、さらには地中海から集められたリサイクル・ペットボトルから作られた椅子なども採用。キッチンには水耕栽培システムも備え、調理時に活用されるなどシリーズのロジスティクス・ハブとして新しい生活を始める準備が整えられた。


「この船の特徴で私のお気に入りのひとつは、かつてのスイミングプールに代わって創設された科学研究所だ。開幕の地サウジアラビアからは、さまざまな科学者が海洋研究プロジェクトを実施するため乗船してくれる。彼らと協力できることをうれしく思うよ」


 アガグCEOがそう説明するように、シリーズの創立科学パートナーであるEnel Foundation(エネル財団)との協業で、航海中に船内で気候科学の進歩に関連する研究を行うべく、実験を続けるための研究室を設置。合計14名の科学者によって7つのプロジェクトが進められる計画で、それぞれ海洋研究のさまざまな分野に焦点が当てられ、その詳細は今後数週間で発表される予定となっている。


 このセントヘレナの航海中は50人の乗組員が船上に住み込みで働き、最大175名が眠れる62のキャビン、ふたつのラウンジ、80席のレストラン、100席のエクステリアデッキ、80席のプレゼンテーションエリアに加えて、20フィートの輸送コンテナを90台収容する能力が確保された。


 イギリスを発ったセント・ヘレナ号は、20日間ほどの航海で地中海を経由し、開幕戦の舞台となる4月3〜4日の“Desert X Prix”ことサウジアラビアに上陸。その後、地中海を引き返して5月にセネガルへと戻って“Ocean X Prix”を戦い、8月にグリーンランドで“Arctic X Prix”、10月にはブラジルの“Amazon X Prix”、そして12月にパタゴニアで“Glacier X Prix”を転戦する計画となっている。

2月11日に開幕まで50日を迎え、Veloce Racingのジェイミー・チャドウィックは「各地の美しさと地形を体験するだけでなく、地域の気候変動の影響について認識を高め、現地でレースすることにとてもワクワクしている」と語っている
イギリスを発ったセント・ヘレナ号は、20日間ほどの航海で地中海を経由し、開幕戦の舞台となる4月3〜4日の”Desert X Prix”ことサウジアラビアに上陸する

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