【新車購入ガイド】最新国産コンパクトのノート、フィット、ヤリス、いま選ぶべき本命グレードは?

2021年2月25日(木)16時30分 AUTOSPORT web

 市販車の最新ニュースや購入ガイドなどをオートスポーツwebならではの視点で掘り下げる『オートスポーツweb市販車深掘り企画』。今回は、最新の国産コンパクトカーを取り上げます。


 2020年はトヨタ・ヤリス、ホンダ・フィット、ニッサン・ノートと国産コンパクトカーの主力3台が続々とフルモデルチェンジを実施。ここ数年、SUV人気の影に隠れがちのカテゴリーだったが、新世代技術がふんだんに注がれた最新モデルの投入で、状況は大きく変わりつつあります。早速、この3台の魅力を深掘りしていきましょう。


* * * * * * *


 今回取り上げる3台のうち、最も注目度が高いのは2020年末に新型に切り替わったニッサン・ノートだ。

ニッサン・ノート


 先代はガソリン車とe-POWERと名付けたハイブリッド車の2本立てだったが、新型ノートはガソリン車に見切りをつけて、e-POWER車のみで勝負を挑む。


 パワートレインは1.2リッター直3エンジンが発電を行い、その電力でモーターを動かす仕組み。先代以上にモーターの出力が高められ、発電効率も改良された。


 ニッサンの誇る強力な運転アシスト機能を備える『プロパイロット』をオプションで選べるようになるなど、走行関連機能の充実ぶりは新型ノートの大きな強みだ。


 また、車体関連の進化も見逃せない。ニッサン/ルノーが共同開発した『CMF-B』と呼ばれる最新プラットフォームを採用したことで、シャシー性能が大きく向上し、先代に比べると乗り心地の快適性が上がり、高速走行時の安定感も高まった。


 プロパイロットをはじめとした目玉装備がセットオプションになるため、ライバル勢と装備水準を揃えると実質的な購入価格が少し割高に感じるという弱みもあるが、洗練されたスタイリングや巧みな内装仕立てのおかげで、ひとクラス上のモデルに近づいた印象だ。


■購入ガイド:ニッサン・ノート編


車両価格帯:202万9500〜244万5300円


■本命グレードは『X』。プロパイロットは“選ばない”選択もあり


 ニッサン・ノートはe-POWER専用モデル。ガソリン車が選べた先代と比べるとスタート価格は大きく上昇した。目玉装備のプロパイロットは純正ナビゲーションとのセットオプション(約42万円高)になるため、実質的にフィット/ヤリスよりも少し割高だ。


 新型ノートは、その価格高に見合うだけの進化を遂げているが、コンパクト2BOXはコスパの良さも重要な項目。ライバル勢に比べると割高感が否めない価格設定はどうしても目立つ。


 新型ノートのグレードは『F』『S』『X』の3つで、FF車と新開発リヤモーターを搭載する4WD車を選ぶことができる。『F』と『S』は、プロパイロットが選べないため、『X』(218万6800円〜)が事実上のエントリーグレードと考えていい。


 発売ひと月で2万台を超える初期受注を獲得しているが、グレード比率は『X』が84.2%、『S』が15.6%、『F』が0.2%と、『X』の支持が圧倒的に高い。


 新型ノートで最も悩ましいのは、プロパイロットを装着するかどうか。出来の良い純正ナビゲーションのセットオプションとはいえ、このクラスのモデルで約42万円の追加費用が必要になるのは厳しい。


 発売ひと月の実績でプロパイロットの装着率は41%に留まるなど、新型ノートを購入した半分以上のユーザーはプロパイロットを省いた仕様を選んでいる。


 もうひとつ、注目したいのが駆動方式。先代もリヤモーター式の4WD車が設定されていたが、小型モーターゆえに最高出力は3.5kWで多少のアシスト駆動が期待できるレベルだった。だが、新型ノートの4WD車には最高出力50kWの大型モーターを搭載。前後の駆動力制御まで対応する本格電動4WD車に進化した。


 寒冷地に向けた生活四駆ではなく、オンロードでの安定性の向上も期待できるシステムのため、新型ノートの走りの魅力を高める選択肢でもあるのだ。


 新型ノートの劇的進化ぶりを考えれば、プロパイロットを含めた“全部入り”が欲しくなるが、『X』はアルミホイールやLEDヘッドライトなどもオプション装備になるため、それらを追加していくと総額300万円を超えてしまうケースも……。


 ニッサンの新世代モデルゆえにひとクラス上が狙えるこの仕様でも満足度は高いだろうが、ここまでは「出したくない」というユーザーもいるだろう。そんなニーズに対して提案したいのが、プロパイロット未装着のまま『X』を買う選択だ。


 標準でプリクラッシュブレーキや車線逸脱防止などの安全系装備は手広くカバーしているため実用面で問題はないし、ナビゲーションやアルミホイールなどは、社外製品を含めた幅広い選択肢の中から自分が好きなアイテムを選ぶこともできる。


 強力な運転支援機能を備えるプロパイロットは便利だが、これがなくても新型ノートに注がれた多くの魅力は十分に楽しむことができる。

高速道路でドライバーの負担を軽減してくれるプロパイロットは、このクラスの中でもトップレベルの機能を備えるが、純正ナビとのセットオプションということが残念。必要がなければ省く選択もある。
中央にナビモニターを配置する未来的なキャビンレイアウト。専用設計の9インチ純正ナビはオプションだが、できれば装着したい。前後シートは標準ではファブリックだが、オプションでレザーシートも選べる。
4WD車の大幅進化も新型ノートの特徴。リヤモーター単独で50kWの高出力を発揮するほか、前後の駆動力配分を自在に変えられる。『S』と『X』に設定され、FF車との価格差は約25万円。
カスタム系の『AUTECH』は外装をエアロパーツで差別化し、ブルー/ブラックの専用本革シートを装備する。車両価格は250万4700〜276万3200円。
新型ノートのパワートレインは、シリーズ式ハイブリッドのe-POWERのみ。フロントモーターの出力は85kW/280Nmを発揮する。電動走行ならではのパワフルな加速が楽しめる。


■広さ、使い勝手、価格まで平均点の高さが魅力のフィット


■広さ、使い勝手、価格まで平均点の高さが魅力のフィット


ホンダ・フィット

 次に紹介するのはホンダ・フィットだ。スタイリングは“和み路線”を目指しているが、広々したキャビン空間が強みなのは、ニッサン・ノートと同じだ。新型フィットはガソリン車も選べるが、主力は2モーター式の『e:HEV』を搭載するハイブリッド車。


 新型フィットの最大の長所は、便利に使える機能と装備の充実ぶりだ。大きなガラスエリアと余裕のあるキャビン設計がもたらす居心地の良い運転感覚や、荷室アレンジを含めたユーティリティ性の高さだ。


 一定の実用性は必要だけどミニバンほどの広さと使い勝手は必要ないという、国内独自のユーザーニーズを上手に汲み取っている。


 また、ハイブリッド車の走りの快適さもポイント。2モーター式の『e:HEV』は、一般道路が主体となる低中速域では、エンジンで発電した電気でモーター駆動を賄うシリーズ式ハイブリッドだが、ノートのe-POWERとは異なり、高速道路などで負荷がかかる時にはエンジン駆動に切り替わる直動機構を備えている。


 簡単にいうと高速走行を苦手としない上級ハイブリッド車。先代のスポーティ路線と決別したこともあって、サスチューンの味付けはマイルドになったが、必要十分の動力性能を持ち、さらに燃費もなかなかの優等生だ。


 先代に比べると少し価格は上昇したが、安全&運転支援機能のホンダセンシングが全グレードに標準装備されるなど、装備水準も優秀。コスパの良さも大きな魅力だ。


■購入ガイド:ホンダ・フィット編


車両価格帯:155万7600〜253万6600円


■5つのキャラを用意。ハイブリッド車の優秀さが際立つ


 新型フィットは先代のシャープな顔つきからイメージを一変。穏やかな温かみのあるスタイリングに生まれ変わった。グレードも、装備や機能面よりも、内外装の意匠やイメージの違いを強く強調しており、ガソリン車とハイブリッド車それぞれにキャラが異なる5つのグレードを用意する。


 5グレードのなかで最も実用重視なのが『BASIC(ベーシック)』と『HOME(ホーム)』。この2つは生真面目なキャラで、ボディカラーと前後シート素材と内装意匠のわずかな違いが差別点。少しだけ『HOME』が上級の設定だ。


 残りの3グレードはスポーツカジュアルな『NESS(ネス)』、SUVテイストの『CROSSTAR(クロスター)』、レザーシートなどでプレミアム感を強化した『LUXE(リュクス)』と、それぞれ内外装意匠が大きく異なる。


 いずれも純正ナビゲーションこそオプションだが、安全運転支援機能のホンダセンシングは標準装備。どのグレードでも、このクラスでは価格に見合った十分な装備内容を持つ。


 フィットのグレード選びで重視したいのは、ガソリン車とハイブリッド車のどちらを選ぶべきかという問題。ガソリン車も平均的な性能を持つが、ホンダ最新の『e:HEV』を搭載するハイブリッド車は、燃費はもちろん動力性能も優れている。


 ガソリン車とハイブリッド車の価格差は約45万円と大きな開きがあるが、性能を考えればハイブリッド車が割高というわけでもない。多少予算がオーバーしたとしても、ハイブリッド車を選んだ方が満足できるだろう。

キャビンは直線的に描かれたシンプルなデザイン。インパネなど基本レイアウトは全グレード同じ。主力グレード『HOME』は自宅のソファに座っているかのようなくつろぎの空間が広がる。
1.3リッターガソリン車も選べるが、主力はふたつのモーターが組み合わされる『e:HEV』搭載のハイブリッド車。高速走行時はエンジン駆動に切り替わるなど、速度域を選ばない万能さ。
優れた運転支援機能を備えるホンダセンシングは全グレードに標準装備。ライバルに比べてサスチューンは穏やかな味付けで、安心感のあるゆったりとした乗り味を披露する。
『NESS』の内外装は、スポーツカジュアルな雰囲気で仕立てられている。
SUVテイストをプラスしてアウトドアユースを意識する『CROSSTAR』。
『LUXE』はレザーシートが採用されるなど、上質感を強めたグレード。


■ドライバー優先の設計で他2車とは別路線を進むヤリス


■ドライバー優先の設計で他2車とは別路線を進むヤリス


トヨタ・ヤリス

 トヨタ・ヤリスは、ノートとフィットとは異なる正統派2BOXキャラが持ち味で、ボディ形状からして明確に違う。ノート/フィットはリヤ後方を長めに取ることで、後席の居住性にも配慮したパッケージを採用するが、ヤリスはルーフ後端を軽く絞り込むようなイメージが強い。


 後席/荷室も最低限必要なスペースに留め、その余裕分を走りの魅力を高める設計や前席周辺スペースの充実に当てている。


 このドライバー優先の割り切った設計は、コンパクト2BOXの世界的なトレンドのひとつ。ノート/フィットと比べると使い勝手は一歩譲るが、実はコンパクト2BOXとして正常進化を遂げているのはヤリスの方ともいえる。


 走り関連のメカニズムの充実ぶりもヤリスの特徴。プラットフォームはGA-Bシャシー、パワーユニットは1.5リッター直3のダイナミックフォースエンジンと、トヨタTNGA技術が注がれた最新仕様が投入されている。


 ガソリン車もハイブリッド車も回して味のある特性ではないため、純粋なスポーツハッチというわけにはいかないが、低回転域からスムーズに盛り上がる動力性能は、コンパクトクラスとは思えぬほど力強い。


 普段使いで扱いやすいレスポンスの良さはひとクラス上とも錯覚してしまうほどだ。さらに燃費性能は、ハイブリッド車もガソリン車も現状の国産車ラインナップの中でナンバー1と言っていいほど優れている。


 内装の意匠や仕上げにチープさを感じる部分があるのは残念だが、ヤリスに注がれた最新メカニズムと充実の機能装備を考えれば、この小さな不満は割り切るべきだろう。


■購入ガイド:トヨタ・ヤリス編


車両価格帯:139万5000〜249万3000円


■高性能をリーズナブルに楽しめる1.5リッターガソリン車を狙い撃ち


 ヤリスは1.0リッターのガソリン車の設定があるため、フィットやノートより安い価格帯から狙える。


 最もリーズナブルな1.0リッター車はビジネス需要をターゲットにした仕様。数々の最新設計が注がれたヤリスの実力を味わうには明らかに役不足だ。ヤリスは性能と価格のバランスに優れる1.5リッターのガソリン車とハイブリッド車のふたつから選ぶのが鉄則だ。


 動力性能や燃費を含めた総合力は、1.5リッター直3ダイナミックフォースエンジンとTHS IIが組み合わされるハイブリッド車の方が上だが、1.5リッター車にもダイナミックフォースエンジンは搭載されるため、ハイブリッド車に肉薄する性能を持っている。


ハイブリッド車の巧みな動力制御や高速ツーリングでの余力感は魅力的だが、1.5リッター車とハイブリッド車をの価格を同等グレード同士で比べるとその差は約43万円。


 ハイブリッド車が明らかなに優位なフィットとは異なり、十分な性能を持つ1.5リッター車という選択もあるだろう。


 1.0リッター車は若干異なるが、グレードは『X』『G』『Z』の3つ。1.5リッター車とハイブリッド車の全グレードには、運転支援のLTA(レーントレーシングアシスト)までカバーするトヨタセーフティセンスやDA(ディスプレイオーディオ)が標準装備されるため、最もベーシックなX系を選んでも実用性能は問題ない。


 グレードの違いは主にメーター類や前後シート、キャビン意匠の違いによるもの。最上位のZ系は装備機能も充実するが、ヤリスならではの高性能ぶりをリーズナブルに楽しめる、X系という選択も悪くない。

走り自慢のヤリスだが、最新パワートレインを搭載するハイブリッド車と1.5リッターガソリン車は、燃費性能も優秀。
車載ITのDA(ディスプレイオーディオ)は、多くのグレードに標準装備される。スマートフォンと連携することでナビアプリを使えるが、オプションで独立型ナビ機能も追加できる。
ハイブリッドの4WD車には、リヤモーターを搭載する最新設計のE-Fourを採用。生活四駆という性格が強いが、滑りやすい路面状況が多い地域からのリクエストにも応えている。
1.0リッター車にはレス仕様もあるが、基本的にトヨタセーフティセンスは標準装着される。ACCは高速型になるが、操舵支援のLTAなどの上位機能までカバーしている。
卓越したシャシー性能を持つこともあって、派生モデルとして専用ボディと1.6リッターターボを搭載するGRヤリスも展開。走り最優先という向きには、こちらもオススメだ。

AUTOSPORT web

「ノート」をもっと詳しく

「ノート」のニュース

「ノート」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ