史上初となる連覇のカギは? 阪神・岡田監督が抱く“不変の執念”「去年より、今年の方が、俺は勝ちたい」【コラム】

2024年3月2日(土)7時0分 ココカラネクスト

岡田監督も納得の充実の春季キャンプを送った阪神。連覇を目指すチームに穴はあるのか?(C)産経新聞社

 今年2月の沖縄は天気に恵まれた。

 タイガースの岡田彰布監督は約1か月、晴天のもと、鍛錬を重ねた選手の成長、そして成熟しつつあるチームに「メンバーは変わってないけど、同じ事をやってもちょっと違うようなキャンプに見えた。そういう意味では一回り大きなチームになったような感じはします」と目を細めた。

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 2月27日、沖縄・宜野座キャンプを打ち上げ、岡田監督は2024シーズンへ向けて確かな手応えを言葉に込めていた。

 昨季に18年ぶりとなるリーグ優勝、そして38年ぶりの日本一を成し遂げたチームは今季、球団史上初となるリーグ連覇に挑む。岡田監督の言葉にあったように、主力の顔ぶれは不変。優勝メンバー主体のチームにおいて喫緊の戦力補強は必要なく、黄金期の到来すら感じさせる充実ぶりが伺える。

 しかし、“現状維持”でふたたび白星を積み重ねられるほど勝負の世界が甘くないというのは百戦錬磨の指揮官が誰よりも分かっている。それは自ら連覇へのカギに「同じメンバーでは勝てん」と新戦力の台頭を挙げていることからも明らかだった。

 頂点に上り詰めた快進撃の原動力のひとつとなったのは、リーグ屈指の人員と層の厚さを誇る投手陣だった。今季も先発陣はオフにFA移籍などの大きな加入や離脱もなく、昨季とほぼ同じ顔ぶれがローテーションの陣容を固めそうな流れだが、そこが強みにも弱みにもなり得る。

 キャンプ初日、ブルペンに一番乗りしたのは、“復肩”をかける青柳晃洋だった。昨季は自身初の開幕投手を務めながらローテーション定着後では初となる長期の2軍降格を経験するなど、8勝に終わって不完全燃焼の1年を過ごした。

 今オフは近年の勤続疲労で狭まっていた可動域を広げるトレーニングに注力するなど、巻き返しを期している。本人が「野球人生を左右する」と口にする背水の1年。青柳が2年連続の不振となれば、チームにとって痛手となってしまうが、今春初実戦では持ち味のゴロを量産する好投で好発進し完全復活の兆しを見せている。

 その青柳に代わって昨年大車輪の活躍で、リーグMVPに輝いた村上頌樹もここまで快調で、プロ4年目を迎えた左腕・伊藤将司も開幕投手に名乗りを挙げるなど脂が乗りきる時期。次代のエースとしてのポテンシャルを秘める才木浩人もケガなくキャンプを終えるなど、ここまでの主力先発投手陣は順調そのものだ。

 ただ、昨季に12勝を挙げるなどブレイクを果たし、チームに大きく貢献した大竹耕太郎は1月に左肩の良性腫瘍(ガングリオン)を切除した影響で慎重な調整を続け、ベテランの西勇輝も右ふくらはぎの張りを抱えるなど、経験豊富な2人がキャンプ中の実戦登板は見送られてもいる。

阪神が抱える「贅沢すぎる悩み」

 岡田監督の“理想”は不変だ。就任1年目の昨年からローテーションを託す6人に加えてバックアップも含めた「7、8人」で年間のローテーションを回す構想を確立してきた。実際、村上はそのバックアップから大化けした。

 青柳、伊藤将、才木、西勇、大竹、村上の実績組が問題なければ、ローテーションの6枠は問題なく埋まる。ここに高卒2年目の有望株である門別啓人や、先発転向で猛アピール中の及川雅貴などを待機させることが可能だ。

 それでも、盤石の6人に故障や調整遅れなどが生じれば、少し不安は出てくる。現状として2軍の先発陣で1軍の先発争いに割って入るような存在は乏しく、門別などの抜てきで表向きの穴は埋まっても指揮官の「7、8人」構想に足りる人員が不足する可能性が出てくるからだ。

 とはいえ、それも他球団からすれば贅沢すぎる悩みなのかもしれない。トミージョン手術明け3年目で本格開花が期待できる才木のフル回転、青柳の復調、門別の成長……と不安を補って余りある“伸びしろ”も多々ある。先発同様に人員豊富なリリーフ陣にも3年目の変則右腕・岡留英貴という台頭もあった。岡田監督の掲げる「守りの野球」の主役を担うのは、今季も投手陣で変わりないだろう。

 その守りの野球で勝つためには攻撃での“1点”が必要になる。取るべきところで着実に加点し、ゲームの主導権を奪う。そうやって2023年はライバル球団から勝利を確実にもぎ取ってきた。

 その面で見れば、今キャンプ中に指揮官が苦言を呈した場面があった。

 2月17日の楽天との練習試合の6回の攻撃。1死一塁から栄枝裕貴、前川右京が立て続けに凡飛を打ち上げて一塁走者を進められずに終わると、試合後に岡田監督はこう漏らした。

「栄枝にしても、前川にしても、(一塁走者に)スチールのサイン出てるんよ。それをポーンと打ち上げてしまうやろ。あんなんシーズンでやったら大変やで。ヒット、ホームラン打つのがアピールやない」

 まだ実績のない若手が目の前の1打席で結果を求めるのは仕方ない。ただ、監督は“シーズンなら”という現実的な視点の欠如を嘆いた。

 一方、同じ試合の8回1死二、三塁で打席に立った小幡竜平は三塁走者をホームに生還させる渋い一ゴロを打った。昨年に開幕から1軍に同行し続けた23歳には“岡田野球”の浸透が垣間見えた。プレシーズンの段階で完全体であるはずはなく不安や改善点は、言い換えればチームが秘める進化の余地。黄金期への土台は今年のキャンプでも着実に築かれた。

 1月31日、キャンプインを前日に控えた全体ミーティングで岡田監督は10分にも及んだスピーチで選手たちに語りかけた。

「タイガースは(セ・)リーグで連覇した経験がない。今年の目標は、それ一点。143試合が終わって、最終的に一番上にいたい。去年より、今年の方が、俺は勝ちたいと思っている」

 タクトを振るう将の勝利への執念を体現するのは、グラウンドでプレーする選手たちに他ならない。レギュラー陣のさらなる進化の気配と、ニューカマー出現の息吹——。2024年も猛虎の疾走は止まらない。

[取材・文:チャリコ遠藤]

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