メルセデスF1が開発に協力した呼吸補助装置『CPAP』、設計図をメーカー向けに公表へ
2020年4月8日(水)19時45分 AUTOSPORT web
メルセデスは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者に使用するための呼吸補助装置の設計図を、メーカー向けに公開すると発表した。この呼吸補助装置は、ブリックスワースにあるメルセデスのハイパフォーマンス・パワートレインズ部門(HPP)が開発に関わったものだ。
世界的流行を見せている新型コロナウイルスと闘うために、メルセデスはイギリスに拠点をおく他のF1チームと協働しながら、自社の設備を活用している。
ブリックスワースにあるHPPでは、通常はチームのパワーユニット(PU)を設計、開発している。今回HPPは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の技師やユニバーシティ・カレッジ病院(UCLH)の臨床医と連携して、『UCL-Ventura』と呼ばれる持続的気道陽圧(CPAP)機器を記録的なスピードで開発した。患者の呼吸が酸素マスクだけでは十分行えない場合に、この呼吸補助装置を使うことで、より楽に呼吸できるようになるという。
この呼吸補助装置は、非常に短い時間のなかで開発された。最初の開発会議が行われてから1台目の生産までに要した時間は、100時間にも満たなかった。しかも製造に必要な詳細情報は、すべてのメーカーに向けて、UCLのライセンス許諾に関するウェブサイト上で公開されている。
メルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインズのマネージング・ディレクターを務めるアンディ・カウエルは、「このプロジェクトが発表されて以降、世界中から驚くほど多くのCPAP機器に関する問合せを受けた」と述べた。
「設計図と製造仕様書を公開することにより、世界中のメーカーが素早くかつ大量にこの機器を生産でき、世界規模でCOVID-19に立ち向かうためのサポートになる」
UCLHやロンドンの他の病院でUCL-Venturaを使用した患者の状態に対する評価を受けて、イギリス政府は1万台を発注した。メルセデスのブリックスワースの施設では、通常F1用のピストンとターボチャージャーを生産する40の設備を使って、CPAPの製造が行われている。
メルセデスは、ブリックスワースの施設全体が「今回の需要に対応すべく生産設備を新たな用途に割り振った」としている。
UCLのマイケル・アーサー学長兼学部長は、「今回のプロジェクトにより、大学、病院、産業界が団結して国益のために動けば、途方もない成果を挙げられることを証明できた」と語った。
「これらの機器は、患者を集中治療室に入れずに対応するうえで大きな役割を果たす。しかもUCL、UCLH、HPPの緊密な連携作業のおかげで、わずか数週間で生産にこぎつけることができた」
「UCLコミュニティは、今回の大成功をもたらしたチームの全員を大変誇りに思う」