ポール発進のラーソンは激昂に散る。トヨタのベルが“恋焦がれた”ダート戦を制覇/NASCAR第8戦

2023年4月11日(火)11時40分 AUTOSPORT web

 シリーズ恒例となりつつあるダートオーバルでの1戦、2023年NASCARカップシリーズ第8戦『フードシティ・ダート・レース』が4月8〜9日にブリストル・モータースピードウェイの特設サーフェースで開催され、グラベル競技愛好家としても知られるクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が、アンダーイエローでのフィニッシュにも助けられ、同陣営のタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)を退け待望の今季初優勝を飾った。


 一方、ポールシッターだった前戦勝者カイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)は、今季カップ復帰のライアン・プリース(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)との攻防で激しい感情に飲み込まれ、激昂から自滅という最悪のパターンを辿る結末となった。


 新たな車両規定“Next-Gen”も2年目を迎えた今季は、開幕からペナルティ裁定と上訴の繰り返しという負のループに見舞われており、前戦リッチモンド後にはその“最大の標的”となっているヘンドリック・モータースポーツ(HMS)がふたたび矢面に立つことに。


 第7戦終了後、さらなる検査と分解のためピックアップされたウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)とアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)の24号車と48号車は「全体の組み立て車両規則および技術変更ログの違反」を取られ、それぞれ60ポイントと5点のプレーオフポイントが剥奪、各クルーチーフに7万5000ドル(約994万円)の罰金と追加で2戦の出場停止(現在も4戦分の実行期間中)が課された。


 そんな嫌な空気と沈滞したムードを振り払うかのように、ダートオーバル特有のヒートレースで気を吐いたのが2021年カップ王者のラーソンで、決勝のスターティングラインアップで優位に立つべくポイントを積算。ファイナルラップで6番手から首位浮上を果たし、見事に今季2回目、キャリア通算16回目のポールポジションを射止めた。


 フロントロウにオースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)を従えスタートを切ったラーソンは、75周のステージ1を制したものの、この際にプリースを壁に押しやる動きを見せたことで相手の不興を買うことに。


 レディックとディロンに続いてステージ2を3番手で終えていたラーソンは、最終ステージで逆転勝利を狙う位置につけていたが、運命の175周目に“報復行動”を受け、一瞬にして我を忘れる事態を迎える。


「彼(プリース)は僕が以前したと感じたことに対して、返済したかったんだと思う」と振り返ったラーソン。


 ターン4の外側でプリースのマスタングに“幅寄せ”を受けた5号車は、行き場を失いウォールと接触。すぐさまボトムに下がったスチュワート・ハース・レーシングの41号車を追いかけるかのようにインサイドへ向かい、そのまま接触スピンでレースを終えた。


「彼は僕をフェンスにぶつけてしまい、サスペンションの損傷を負って彼に衝突してしまった」と続けたラーソン。「残念だけど、その手前でスピンアウトしてその場所に戻った自分に腹を立てるべきだ。ただただ苛立たしい」

今季移籍で好調を維持するタイラー・レディック(23XI Racing/トヨタ・カムリ)もダートでの優勝戦線に絡んでいく
ふたたびペナルティ対象となってしまったアレックス・ボウマン(Hendrick Motorsports/シボレー・カマロ)「僕らはただ、ドライブするだけさ」
のちの遺恨劇は「故意ではない」とカイル・ラーソン(Hendrick Motorsports/シボレー・カマロ)「なぜ彼が報復したのかわからないよ」
昨年度のダート覇者、カイル・ブッシュ(Richard Childress Racing/シボレー・カマロ)
も終盤まで粘るが、サスペンション破損でレースを終える


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 これで主役に躍り出たのがステージ2終了後もオールドタイヤを装着していたベルで、残り100周にわたってリードラップを維持する。対照的にステージ2を制したレディックは、2回目のブレークでピットインし、12番手からの巻き返しを図る。


 各コーナーで深いアングルを維持し、首位のベルに追い縋ったチェイス・ブリスコ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)をパスし、ようやく223周目に2番手に上がったレディックだったが、残り25周からの追撃では決め手に欠く状況が続く。複数のコーションを経てホワイトフラッグでもこの日最後、14回目のイエローが宣言されたとき、250周のドリフトコントロール勝負を粘り抜いたベルが、カップ通算5勝目を手にした。


「もう、言わせてくれ! これは僕の人生でもっとも長いラップのひとつだった」と、終盤のトヨタ対決を振り返った勝者ベル。コロナ禍直前にもミゼットのビッグイベントで3連覇を達成している“ダートガイ”は、このサンダーバレーの赤土の上で「ようやく勝てたことがうれしい」と、自身の悲願達成を喜ぶ。


「土であろうとコンクリートであろうと、この場所はとても楽しいね。ハードにドライブすれば、すぐに壁の餌食になる。右フロントを入れたらほんのわずかにプッシュ、でも右リヤを滑らせ過ぎたらアウト。本当に楽しかったよ」


 ボトムラインを選べばストレートが伸びず、ハイラインでは繊細なコントロールが要求されるトラック。それでもベルはダートでの経験を活かし「間違いなく、今夜のトラックは最高の体験だった」と続ける。


「ターン3と4は僕にとって真に恐ろしいコーナーだった。行き過ぎると、すべての勢いを失ってしまうからね。逆にターン1と2では何度か壁にぶつけた。そこにはもう少し湿気があったようで、よりよくクルマを保持してくれたんだ。だから僕も『よし、1と2は本当に攻撃できる』みたいな感じだけど『3と4は気をつけなきゃ』って感じだった。今は最高の気分だよ!」


 同じくブリストルのダートで併催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第6戦『ウェザーガード・トラックレース・オブ・ダート』は、現カップ王者ジョーイ・ロガーノ(ThorsSport Racing/フォード・F-150)が150周のうち138周をリードし、僚友タイ・マジェスキーを従え勝利。服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)の16号車タイラー・アンクラム(トヨタ・タンドラTRD-Pro)は、2回のアクシデントに巻き込まれ、残念ながらリタイアとなっている。

「彼がスピンアウトして後ろに下がったのは僕のせいではなかった。彼は明らかに短気だった」とライアン・プリース(Stewart-Haas Racing/フォード・マスタング)
ダートでの経験を活かし「間違いなく、今夜のトラックは最高の体験だった」と勝者クリストファー・ベル(Joe Gibbs Racing/トヨタ・カムリ/左)
「残り2周からの白旗で、確実に仕掛ける気でいた。うまくいったかどうかはわからないけどね」と惜しくも2位のレディック
NASCAR Craftsman Truck Series第6戦『Weather Guard Truck Race on Dirt』は、現カップ王者ジョーイ・ロガーノ(ThorsSport Racing/フォード・F-150)が制している

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