CNF導入の現在の課題。ふたたび熱を帯びてきた海外での開催とコラボ【第1戦/GTA定例記者会見】

2023年4月16日(日)12時31分 AUTOSPORT web

 4月16日、スーパーGT第1戦岡山の決勝レース前に、シリーズをプロモートするGTアソシエイション(GTA)の坂東正明代表による定例記者会見が行われ、今シーズンから導入されるカーボンニュートラル・フューエル(CNF/GTA R100)のGT300クラスにおける開幕2戦の投入延期、そして今後のスーパーGTの海外イベント開催、ふたたび会話が始まった海外カテゴリー、海外自動車メーカーとのコラボ、さらに次期GT500車両規定の方向性などについて説明された。


■CNFは第2戦後GT300のテストを実施


 スーパーGTでは、今シーズンからGTAが主導してCNFの使用が進められているが、GT500クラスでは開幕戦から使用されているものの、GT300クラスについては開幕前の公式テストでの試用の結果、第2戦まではこれまで同様のハイオクガソリンが使用され、CNFの導入は第3戦からに延期されることが先日アナウンスされた。この日のGTA定例記者会見では、その背景を坂東代表が説明した。


「合成燃料については、各車両に入れテストを行ってきたが、燃料がオイルと混じってしまう希釈の問題、さらに揮発性の問題が残っている。GT500についてはベンチテストで調整しながら、希釈がいちばん少ない状態などを見つけ、テストで問題ない状況までもってくることができたが、GT300の場合、GT3はカスタマーレーシングカー。またGT300規定車両はもTCDやSTIがテストを行ってきた」と坂東代表。


「そのなかでオイルの粘度を変えたり、油温を変えたりしてきたが、希釈が起きやすいなど、調整期間が必要だった。実際の車両に入れたときに油温を上げたり、油圧やキャッチタンク、オイル粘度などの調整をできる限りでやってもらっている。カスタマーサービスでも、より適合がとれるようにやってもらっているが、もう少し調整の期間をおいてから行おうということになった」


 今後、GT300クラスについては第2戦富士の後、GTエントラント協会が主催し、鈴鹿サーキットでテストを行い、第3戦以降の投入に向けて調整を行っていくことになる。「ひとつひとつステップを踏みながらやっていきたい。各自動車メーカーなどから、CNF投入について否定的な意見は出てはいない。ただプライベーターの場合はエンジンが壊れてしまっては困ってしまう。今後、ハイオクと同じような扱いにできるようにやっていきたい」


 なお、昨年第8戦後のCNFテスト、さらに今季の公式テストでは、CNFがもつ匂いについても各チームやドライバーからさまざまな声が上がっていたが、この岡山から改善が施された。


「今回持ってきているCNFは色、匂いなど、前から使っているものと異なっている。匂いはかなり大丈夫になってきていると思う。昨日(土曜日)も嗅いでみたが、売っているガソリンを嗅ぐよりも優しい感じがする。芳香剤のフローラルのような甘い匂いがする」と坂東代表は語った。

2023スーパーGT岡山公式テスト 今季から使用されるカーボンニュートラルフューエルのETSレーシングフューエル


■コロナ禍が明けふたたび増える海外開催のオファー


 またこの日の定例会見では、坂東代表から今後の海外展開、さらに将来のGT500規定についても発言があった。まず海外開催については、当初2020年からタイとマレーシアでの2戦開催が予定されていたものの、コロナ禍により中止にとなっており、2019年を最後に、スーパーGTのシリーズ開催は実現していない。


 コロナ禍が明けつつある今、海外での開催について坂東代表は、「海外の各プロモーターからは、開催したいという依頼が来ている」と明かした。ただ、課題となるのはやはり輸送。近年は世界情勢もあり海外への輸送コストが高騰している状況だ。


「ロジスティクスの部分をどうするか。この費用がぜんぜん下がらない。どうにかならないかという話はしているが、これという回答がまだない。また、いろいろなスケジュールを組まなければいけないので、そのもう一歩まで至っていない」と坂東代表。


 ただ、海外展開に向けては、これまでのタイやマレーシアに加え、アジアのいくつかの国からオファーが来ていることを明らかにした。


「先週、上海から来年やりたいという声も寄せられた。ブリーラム(タイ)もやりたいと言うし、マレーシア、インドネシアからもある。とはいえスケジュール、ロジスティクスが確立できないとなかなか先には進めない」


 コロナ禍は明けつつあるとはいえ、国内のカレンダー調整やロジスティクスなどなど、海外展開にはまだ課題もありそうだ。

2020年1月のスーパーGTセパンテストのナイトセッションを走るTRD開発車の90号車トヨタGRスープラ


■2024年以降のGT500規定は。ふたたび海外メーカーの関心も


 さらに、2023年年1月の東京オートサロンでは、ホンダが2024年のGT500参戦車両としてシビック・タイプR-GTを発表したが、2024年以降のGT500クラスの車両規定についても言及した。


「(2024年については)変更点はない。2023年まででモノコック交換や節目があるが、現行モノコックも確認をしながら、ねじり剛性などシーズン末までやる。2024年まで使って、2025年以降に新車を入れるが、あまり変更点はない。ただ2028年までの車両は、環境を盛り込んだものを採り入れていきたい。凍結する内容としては各々のメーカーと話し合っていきたい」


「(2024年については)変更点はない。2023年はモノコック交換の節目だったが、現行モノコックも確認しながら使用しており、ねじり剛性などシーズン末に確認するが、2024年まではこの車両を使い、2025年に向け新しいものを使うが、あまり変更点はない」と坂東代表。


「そこから2027年、もしくは2028年まで使用するものとなるが、そのなかに環境に対応したものなどを盛り込んだ規則、設計をしていきたいと思う。またコストの問題もあるので、その点をどうするか」


 現行のGT500規定はもともと、DTMドイツ・ツーリングカー選手権との統一規定として作られたものだが、今後の規定については、ドイツ自動車連盟(ADAC)などと連絡を取り合いながら、2028年以降の次世代GT500についての構想、話し合いを今季中に行いたい意向を明らかにした。


「海外のマニュファクチャラーと2028年〜2029年以降に向けた“キックオフ”を今年やりたいと思っている。向こうもGT3のひとつ上のカテゴリーについて考えているようで、いろいろ会話をしていきたい。まずは“キックオフ”できちんと集まることが重要だと考えている」


 スーパーGTとDTMはコロナ禍以前の2019年に富士スピードウェイで特別交流戦を行い大きな話題となったが、その後、DTMはGT3へのスイッチ、さらにITRとその姿が変貌。交流の頻度は低下してしまった。ただこちらもコロナ禍を越えたことで、ふたたびお互いが歩みよりつつある。


 海外開催、そして海外カテゴリー、そして海外自動車メーカーとのコラボや参戦など、2023年以降のスーパーGTは、さまざまな可能性が考えられていくことになりそうだ。

2019年には富士スピードウェイでDTMドイツ・ツーリングカー選手権権との特別交流戦『ドリームレース』も開催された

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