「1勝くらいでは涙は出ない」初優勝の松下信治。「これまで空回りしていた」本山哲監督【SF第3戦鈴鹿決勝トップ3会見】

2022年4月24日(日)18時27分 AUTOSPORT web

 4月24日に鈴鹿サーキットで決勝を迎えた2022年全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦鈴鹿。決勝後の会見でスーパーフォーミュラ初優勝を飾った松下信治(B-Max Racing team)、2位の野尻智紀(TEAM MUGEN)、3位の牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、そしてB-Max Racing teamの本山哲監督がレースを振り返った。

2022年スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿決勝で表彰台を獲得した松下信治(中)、野尻智紀(左)、牧野任祐(右)


●優勝 松下信治(B-Max Racing team)


「予選9番手からのレースだったので、昨日の時点では決勝の天候がわからないという状況でしたが、できれば雨になってほしいと思っていました。雨のレースになったら、スタートが命だと思っていましたが、案の定、スタートが良くて何台か抜けて5番手くらいまで順位を上げられた。あとは自分のペース次第だなと思っていたのですが、ペースが思ったよりも良かった。トップ3が見えたくらいで結構、前とのギャップが縮まらなくなってきて『これは結構、長期戦になるな』と思っていたのですけど、トップも2番手もタイヤがキツそうだという連絡が本山(哲)監督から来て、自分も結構タイヤがキツかったのですけど『諦めちゃいけないな』と、そこで踏ん張ったのが良かったと思っています」


「その後、(牧野)任祐とのバトルも結構、シビレましたし、接触もなくてクリーンなバトルができました。この前の富士では彼にぶつかってしまったので、そういう意味でも今回はいいレースができたなと思いますし、トップ争いではやっぱり(野尻)智紀が強いので、今回は勝たせてもらいましたけど、予選で彼の前に行かないとシリーズ的にも厳しいと思うので、この勝利に浮かれずに1台体制と言う意味ではまだまだビハインドなので、頑張りたいと思います」
 
(スーパーフォーミュラで初優勝が決まったときの気分は)
「本当にうれしいです。なんて言ったらいいのかわからないですけど、とにかく(昨年の鈴鹿で)初ポールを獲ったときも『勝てるな』と思っていたのですけど、これはドライバーはみんな同じだと思うのですけど、同時に不安もある。やはり、『勝ちに不思議あり、負けに不思議なし』と言いますか、勝てるときは予選9番手からでも勝てちゃうし、勝てないときは予選1位からでも勝てないのだなあと思いました」


 (本山監督と田坂泰啓エンジニアがサインガードで号泣していたが、松下選手は?)
「本当にうれしいのですけど、涙は出なかったです。大口を叩くつもりじゃないですけど、やっぱり目標が高いので。1勝くらいで涙が出るというのは今の僕にはないと思っています。やっぱりチャンピオンになりたいので、チャンピオンになったら涙を流したいと思います」


(優勝後のインタビューで本山監督といろいろあったけど仲直りしたと行っていましたが?)
「(開幕戦の)富士の時に任祐とぶつかって、僕もむしゃくしゃしていて、本山さんと小競り合いしてしまって。まあ、全然たいしたことないです」

スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿で初優勝を果たした松下信治(B-Max Racing team)


●2位 野尻智紀(TEAM MUGEN)


「悔しいのひと言です。とはいえ、チャンピオンシップのことを考えると2位というのはそんなに悲観すべき結果ではないと思いますし、シーズンが終わった時に『転んでも2位だった』と言えるようなレースになるように、次のレースにこの悔しさをぶつけていきたいなと思います。レース内容としては序盤からグレイニングが出てしまって、タイヤのヒートアップに苦しみました。序盤で後続が離れたのですけど、2番手が牧野選手に代わってじりじりと追い上げてきているのは聞いていましたし、自分のペースを維持するのはなかなか大変でしたけど、いろいろな工夫をしながら最後までやれることはやれたかなと思います。ですので、悔しいですけど、やりきった内容でしたし、今回は心から松下選手に初優勝おめでとうと言いたいです」

スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿で2位となった野尻智紀(TEAM MUGEN)


●3位 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)


「去年も3位があったのですけど、今回はまったく内容の違う3位で、非常に悔しいレースになってしまいました。まずスタートが思ったより良くて3番手までポジションを上げることができて、その後の序盤は正直、まったくプッシュせずと言うか、タイヤが絶対にキツくなることは分かっていたのでプッシュはしなかったのですけど、山下(健太)選手(KONDO RACING)を抜いたあたりからトップの野尻選手とのギャップが序々に詰まってきていて、かなり詰まったタイミングで松下選手が後ろからきているのもわかっていたので、ちょっと難しいシチュエーションになりました」


「ペースを上げすぎると自分のタイヤがキツくなるし、でも後ろから松下選手が来て挟まれるような形になりました。ただ、僕はそこで守りに行くこともなったですし、勝つために攻めてプッシュしてペースを上げて走ることができたので、正直、後悔は何もありません。終わってから冷静に考えて、1位、2位よりペースを上げるタイミングが、僕の方がちょっと早かったかなと思います。ただ、3位という結果は悪くないと思いますし、次のオートポリスではしっかり勝てるように準備したいなと思います」

スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿で3位となった牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)



●「今回は正直、優勝を狙えるとは思っていなくて」監督としてスーパーフォーミュラ初優勝を飾った本山哲監督



●本山哲監督(B-Max Racing team)


「チーム監督に就任して、数年はもちろん試行錯誤の時期を過ごして、毎年毎年、新たな要素を取り入れてチームとして少しでも向上するということで、そこで向上したこともありますし、上手くいかなかったこともありました。去年も2台体制から1台体制になって、1台になったことでその1台に集中するということで今のメンバーのなかにノブ(松下信治の愛称)が加わって、昨年もポールポジションを獲ったり表彰台には上がれたのですけど、やっぱリノブ自身もそうですし、チームとしても優勝経験がないというところで、最後の優勝というところを目の前にして、見えてはいるけど遠いなという実感はありました」


「そこを昨年のオフから今年に掛けて頑張ろうとやってきましたけど、その気持ちがちょっと空回りしていたところもあって、オフのテスト、そして開幕戦、チームとしては非常にリズムが悪かった。特にノブ自身がちょっと力みと焦りがあって、本当にリズムがうまく回らなかった。今回に向けてチームとしても1回そのあたりを整理して、今回は正直、優勝を狙えるとは思っていなくて、チームとしてきちんとベースを作る、安定して戦えるシーズンに向けてというところでトップ3、できなくてもトップ6には必ず入ろうと、そして落ち着いて週末を過ごそうと決めていました」


「今日のレースに関しては雨のなかで、予選はちょっとうまくいかなくて9番手というところで、ただ今日のレースに関してはスタートのポジションがアウト側とイン側で、イン側の路面に雨が流れているので9番手(アウト側)は非常にラッキーで、スタートで4〜5番手に行けるなと思っていたら、その通りのポジションで行ってくれた」


「そのあとの水が少ないときはヨコハマタイヤの性能はすごくいいのですけど、やはり鈴鹿のようなハイスピードサーキットで、水が少ないときのレインタイヤはフロントタイヤをうまく扱っていかないといけない。そこをエンジニアの田坂(泰啓)さんとクルマでなんとかセーブするセットアップを進めて、あとはノブ自身にとにかくフロントタイヤだけどケアして走るようにしてもらって、そうしたら必ず順位が落ちてくるクルマが出てきて、絶対にチャンスが来るから、と」


「ノブ自身、力まないようにとにかく普通にスタートして、普通に走れば6位以上には絶対に入れるというところをベースにして行って、全体的なチーム、そしてドライバーが焦らず、力まずにやってくれたことが大きかったと思います」


 「レースのなかではいろいろセーブさせたところがあって、序盤、ノブがうまくタイヤをセーブしてうまく走ってくれて、そこからプッシュするとタイム的には明らかに一番速い状況もある中で、その後も数周タイムを上げて、大きくラインをずらして水のあるところを走ってくれてタイヤを冷やしてくれた。そういったところで非常に珍しく、自分を抑えて我慢した走りをしてくれて、そういった地道な努力が結果に結びついたので、今回はチームもそうですし、ノブ自身、非常に落ち着いてやってくれたので、みんなに感謝しています」


 (選手での優勝と監督しての優勝の違い、レース後の涙)
「やっぱり違った喜びのところがあります。監督してチームスタッフ、エンジニア、データエンジニア、ドライバー、みんなが上手く働いてくれないと優勝はできない。スーパーフォーミュラはレベルの高いカテゴリーなので、そういった意味ではもちろん、その中の中心となるのはドライバーであるし、僕にも責任があるし、クルマという部分では田坂さんの責任が非常に大きい。チームとしてうまくコミュニケーションを取って、今は非常にいいチームになれた。田坂さんもいろいろ苦労して悩んでいたので、今回結果が出てよかったと思います」

スーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿で監督して初優勝を果たした本山哲監督(B-Max Racing team)

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