上田桃子、吉田優利、渋野日向子らチーム辻村が実践 「ひと呼吸素振りでスイングの角が取れる」【四の五の言わず振り氣れ】

2024年4月25日(木)12時15分 ALBA Net

「もっと内へ!もっと速く!」と吉田を指導する辻村。アンダーからクラブが入る吉田の角はこうして削れていった

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2007年の賞金女王・上田桃子を始め、吉田優利、渋野日向子らそうそうたるメンバーが集う「チーム辻村」は素振りを重視している。スイングを素振りで作り、素振りが心と体と技を磨く。チーム独自のひと呼吸連続素振りとはどんなものなのか? 辻村明志コーチが語る。


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ゴルファーである皆さんは当然、素振りをしたことがあるはずです。では、この素振りについてどのような考えをお持ちでしょうか。おそらく多くの方はストレッチやボールを打つ前の準備、決まり事の確認、あるいは不安を払拭するために振っていると思われます。

それにしても道具を使うスポーツ……野球やテニス、卓球、剣道……で、ゴルフほど練習で素振りをしないスポーツはあるでしょうか。素振りは自宅でもでき、何よりお金がかかりません。しかもゴルフの上達が約束されている練習です。いや、技ばかりか心も体も鍛え、磨くことのできる優れた稽古と言ってもいいでしょう。これを読み終えた瞬間、多くの皆さんがクラブを握って素振りすることを望んでいます。

さて、初めて荒川博先生(王貞治に一本足打法を指導し本塁打世界記録まで成長させた元巨人軍コーチ。辻村や上田桃子のゴルフの師匠でもある。2016年に死去)と話をさせていただいたとき、「巨人V9 時代の王(貞治)や長嶋(茂雄)は1日300 回、チームの中で一番素振りをした」と、素振りの重要性を力説されました。正直、ボクは300 回くらいなら、と高をくくっていました。

後日、(上田)桃子プロと2人、初めてコースで指導を受けたとき、クラブを持参しなかった私に「クラブも持ってこないで、それで指導ができるか!」と、いきなり雷を落とされたことを思い出します。そしてボクと桃子プロに命じたのが、ひと呼吸での連続素振りです。深呼吸をして息を吐いたら、息を止めたまま一気に行う連続の素振りです。

実は王さんや長嶋さんの行っていた300回の素振りとは、この素振りだったそうです。具体的にはひと呼吸で15回を20セット。これで300本だというのです。これはやればわかりますが、多くの人はせいぜいひと呼吸で5回、10回できればいいほうでしょう。実際、ボクと桃子プロは最初は7回しかできませんでした。先生には9ホール指導していただき、毎回ティイングエリアで素振りを命じられました。9ホール目でようやくボクが11回、確か桃子プロは10回できたかどうか。情けないことに2人して、9ホール合計100 回もできなかったのです。

翌日、朝イチで桃子プロから電話。その日は朝から練習予定だったのですが、弱々しい声で「午後からにしてください」。筋肉痛で動けない、というのです。電話を受けたボクも、筋肉痛でベッドから出られない状態でしたから願ったりかなったり。午後から始めた練習は、予定の3分の1もできなかったことを付け加えておきます。

それにしても王さんや長嶋さんは、これを毎日300 回……。歴史に名を残す偉人の偉人たる由縁でしょう。ただ、これを単なる根性や精神論で片付けてもらいたくはありません。なぜならボクたちに走った痛みこそ、スイングに大事な筋肉であり、その筋肉を上手に使えばゴルフが上達するとは考えられないでしょうか。

具体的に痛かったのは太モモ、お尻、下腹部で、特に太モモ内側の内転筋は激痛でした。ボクも桃子プロも情けない歩き方で、練習場にたどり着いたことを思い出します。近年、トレーニングの世界では体幹という言葉が盛んに使われています。筋肉の痛みから考えると、結果としてこの素振りは体幹と呼ばれる筋肉を鍛え、上手に使うトレーニングになっています。

そんな練習を50年前からやっていたのが荒川道場でした。時代遅れの精神論どころか、実に合理的で科学的な練習です。

ここでひと呼吸連続素振りの効果、効用を整理しておきましょう。まず体力がつくことは間違いありません。最近、ボクは「呼吸力で飛ばせ」と選手に教えていますが、いつも同じ呼吸で振るコツが身に付きます。この息は「氣」と言い換えてもいいでしょう。

次に脱力、特に上半身の力が上手に抜けるようになります。上半身に付いては「力みはブレーキ、脱力はアクセル」がボクの持論ですが、上半身が力んでいてはまず連続素振りはできません。「力むな」「脱力しろ」の言葉を何十回、何百回繰り返すより、ひと呼吸でなくてもいいので連続でクラブを振れば勝手に力みは取り除かれます。脱力はアクセルですから、当然ヘッドスピードも上がります。

同じ理由でスイングの『角』(かど)が取れます。角とは人それぞれの悪いクセです。角があると連続素振りはできません。そして角が取れればスイングプレーンが安定し、再現性もミート率も高くなります。まだまだ、その効果を挙げればキリがありません。

ボクたちチームはボールを打つのと同じくらい、いやそれ以上に素振りを練習に取り入れています。重いもの、軽いもの、長いもの、短いもの、速く、ゆっくり、右で、左で……。選手の課題に応じて、さまざまな素振りがあります。

ちなみに今季米ツアーに挑戦する(吉田)優利プロもさまざまな素振りを行い、ヘッドが下から入るクセを矯正できました。さあ、これを読み終えて素振りをするかしないかはあなた次第です。

■辻村明志
つじむら・はるゆき/上田桃子、吉田優利、渋野日向子らを指導し、プロを目指すアマチュアも教えるプロコーチ。荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。1975年福岡生まれ。元(はじめ)ビルコート所属

※『アルバトロス・ビュー』829号より抜粋し、加筆・修正しています

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