【悼む】清川栄治さん死去 優しげでおとなしそうに見えても、芯の強さは人一倍だった

2024年5月14日(火)5時45分 スポーツニッポン

 きちょうめんで義理堅く、人情味あふれる男だった。現役時代は汚れたユニホームでもきちんと折り畳んで部屋の前に出すものだから、業者が洗濯物ではないと勘違いして持って帰らなかったことがあったようだ。ウソみたいなエピソード。彼の人柄をよく表している。

 指導者としても気配りにあふれていた。広島で一歩を踏み出した当時は、まだスパルタ教育がまかり通った時代。傷心の敗戦投手には温かい言葉で背中を押した。思えば、今や当たり前となったコーチングスキルをいち早く身に付けていた。

 優しげでおとなしそうに見えても、向こう気の強さ、芯の強さは人一倍だった。入団した直後、雑誌記者だった私は「おまえの体と力じゃプロは無理だ…と周囲は大反対。母だけが後押ししてくれた」と聞いた。それでも投手王国を生き抜き、中継ぎのスペシャリストになった。俳優の高倉健を意識し、スポーツ刈りにしたことも。

 「現在、体調不良でお休みしています。復帰までもうしばらく時間を要すると思いますので大変残念ですが、今回は辛抱しておきます。またの機会を楽しみにしておきます」

 今年2月26日にあった、彼らしい丁寧な返信。3月中旬、オープン戦の取材で上京する際に「久々に一杯どう?」と誘った。美食家で、折に触れて酒席を共にしてきた。「しばらく時間を要する…」が気になっていた。

 それが…。にこやかな笑顔が目に浮かぶ。寂しくてたまらない。(特別編集委員・江尾 卓也)

スポーツニッポン

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