アビスパ福岡、守備への揺るぎない自信。紺野・小田・監督インタビュー

2023年5月26日(金)18時30分 FOOTBALL TRIBE

紺野和也(左)小田逸稀(右)写真:椎葉洋平/長谷部茂利監督(中)写真:Getty Images

5月24日のJリーグYBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)にて、アルビレックス新潟に2-1で勝利し、グループリーグ突破へと大きく近づいたアビスパ福岡。


開始早々に失点を許すも後半の2得点で逆転勝利を挙げた一戦から一夜明け、MF紺野和也、DF小田逸稀、長谷部茂利監督の3人がオンライン取材に応じた。




アビスパ福岡 MF紺野和也 写真:椎葉洋平

「笑顔にすることができて本当に良かった」


MF紺野和也


新潟戦では後半開始から出場。高精度のクロスにポスト直撃のミドルシュートを放つなど、試合の流れを変えた紺野和也。今季FC東京から加わり、早くも観る者を魅了している。


ールヴァン杯、アルビレックス新潟戦は後半開始から出場しました。どのようなことを考えて試合に入りましたか?


紺野:前半はチームとして上手くいかない時間帯が多くて、なかなかチャンスを作れませんでした。後半どこかしらのタイミングで出るだろうと思っていたので、「勢いをつけよう」とか「逆転しよう」という気持ちで試合に入りました。


ー特に意識していた部分を教えてください。


紺野:前半は相手にボールを持たれて攻撃回数が少なかったので、自分のところでタメを作り攻撃回数を増やすこと。それから、相手(新潟)はポゼッションが上手いチームだったので、守備のところでスイッチを入れて奪う回数を増やしたいなと思い、そこを意識しながら入りました。


ー後半は前線からのプレスなど、アビスパ福岡のやりたいことが数多く出ていたように思いますが。


紺野:そうですね、後半はメンバーも変わってフレッシュな選手が入り、前半よりプレスに行けるようになりました。そこから奪ってショートカウンターだったり、後半は自分たちがボールを持つ時間というのも前半から比べたらかなり増えたので、そういう意味では途中から入って流れを変えることができたかなと思います。


ー新潟のスタジアムの雰囲気は凄いものがありますが、あの中でプレーするのはいかがでしたか?


紺野:リーグ戦のとき(第8節:試合終盤に3失点して2-3の逆転負け)、特に後半は相手がイケイケムードになっていて応援もすごかったですし、そこでちょっと圧倒されてしまった部分もありました。昨日の試合では、チーム全員でリーグ戦の借りを返そうと臨みましたし、相手の応援の凄さは分かっていたので、あまり気にせずプレーできました。


アビスパ福岡のサポーター 写真:Getty Images

ー数では負けていましたが、平日のナイトゲームにも関わらずアビスパのサポーターも来てくれていましたね。


紺野:本当に感謝しています。平日のナイターでアウェイに来てくれるのは本当にありがたいことなので、勝って笑顔にすることができて本当に良かったなと思います。


ー今季はアウェイで未勝利が続いていました。昨日の勝利が1つのきっかけになるのではないでしょうか。


紺野:そうですね、アウェイで勝てていないというのは選手も意識していましたし、まず1つ壁を越えられたなというのはあります。リーグ戦でもっと上に行くためには、アウェイでの勝ち点が絶対に必要になってくるので、ホームとアウェイ両方でしっかり勝ち点を積み重ねられるように、またいい準備をしてやっていくしかないかなと思います。


ールヴァン杯では次戦(6月18日:柏レイソル戦)、引き分け以上でグループリーグ突破となります。何か特別な意識はありますか?


紺野:引き分け以上とかいうのは気にせず、しっかり勝ちにいくのが大事だと思いますし、勝てば文句なしで首位突破できます。引き分けとか得失点とかは気にせず、勝ちにいくことだけを考えてやるべきだなと思っています。


ー次節は中3日でJ1第15節:横浜F・マリノス戦があります。マリノスにはどのようなイメージを抱いていますか?


紺野:特に攻撃のクオリティがすごく高いので、しっかり守備から入ることが一番大事で、そこからどう良い攻撃に繋げていくかがカギになってくるかなと思います。あとは(ディフェンス)ラインが少し高いなというイメージがあるので、自分たちの前線の選手が裏を狙っていくところもイメージしています。


ー今季、リーグ戦でもルヴァン杯でも、中位以下のチームには互角以上で戦えています。ただ、上位チームには互角で戦えている時間もあるけれど最終的に勝てていません。アビスパが次のステップに行くために欠かせない部分ですが、壁を乗り越えるにはどのようなことが必要でしょうか。


紺野:(リーグ戦の)広島戦も新潟戦もそうでしたけれど、前半45分は良い戦いができています。その時間を1分でも、少しずつ伸ばしていくということが、これからアビスパが強くなりもっと上位にいくために必要なことだと思っています。自分たちができる100%のことを、毎試合毎試合全力で戦って、粘り強くやり続けることで良い時間帯が少しずつ増えていくと考えています。我慢する時間帯が多いこともありますが、そこで焦らず、やるべきことをやり続けるのが1番良いのかなと思います。


ーシュートがクロスバーやポストに弾かれるシーンが多くあります。その事象はどのように捉えていますか?


紺野:それは自分でも感じています。ボール1個分(の差)というところは多少運もあるかもしれないんですけど、狙いすぎず「しっかり枠内に入れる」ということも大事かなと思います。そこは上手くちょうど良いところに打てるように練習からやったり、キーパーの特徴というのを捉えたりしながら、隅を狙いすぎずに、でも良いコースにというのはやっていかないといけないと考えています。


ー次節の相手、横浜F・マリノスには大学時代の先輩でもあるDF永戸勝也選手がいます。ポジション的に対峙することが多くなると思いますが、対処法と、大学時代の思い出を教えてください。


紺野:大学の思い出としては、よくご飯とかに連れて行ってもらいました。卒業してプロになってからもちょこちょこ連絡を取り合ったりとか、オフにご飯や買い物に連れて行ってもらったりしてくれる優しい先輩で本当に良い人です。私服のズボンなどを買ってもらいました。ピッチの中でいうと、特に攻撃面に特徴がありますし、左足のキックの質がかなり高いので、そこは警戒しないといけません。昨年もマッチアップしていて、ドリブルのところでは勝てるという印象があるので、そこはどんどん仕掛けて、勝也くんが嫌がるプレーをしていきたいなと思います。


アビスパ福岡 DF小田逸稀 写真:椎葉洋平

「ストロングポイントを活かせるチーム」


DF小田逸稀


間違いなく、新潟戦のヒーローだった小田。後半26分から途中出場すると、クロスでFW鶴野怜樹のゴールをアシストし、さらに後半41分にはFW佐藤凌我のクロスに得意のヘッドで合わせ決勝点を奪取した。


ー昨日(新潟戦)の1ゴール1アシストを振り返ってください。


小田:(FW鶴野怜樹、同点ゴール)アシストのシーンはこっち側(左サイド)にボールが転がってきて、時間帯によっては取りに行かない場面だったかもしれないんですけど、負けている状況だったし、点を取りに行けと言われていたので、リスクを背負ってボールを拾いに行きました。先に触れたので、あとは抜けなくてもコーナーキックを取れればいいかなと縦に仕掛けて、中を見ずに目の前の相手に当てないようにクロスを上げたら、(鶴野が)そこに入ってきてくれたという感じです。ゴールシーンは、凌我があそこでボールを持った時になんとなくあそこにボールが上がってくるかなと思っていたら、狙い通りのところに来たので、あとは強いシュートを枠に入れるだけでした。


ー東福岡高校時代の同級生でもある佐藤凌我選手は、アシストはあるものの、ゴールを奪えていません。仲間として同級生として、どのように支えているのでしょうか。


小田:本人(佐藤)も気にしているとは思うんですが、僕は同級生として1番長く一緒にいて分かっているので、あえてめちゃくちゃいじっています。『お前はまだ0ゴールなのに俺はもう2点も取っているぞ』と言ってみたり、シュートの仕方を教えてあげたり、そういう感じです(笑)


ー少し前に、自分は得点があまり取れないのかなと話していました。今はどのように考えていますか?


小田:あの時は(第8節:アルビレックス新潟戦)、やっと1点取れた時だったと思うんですけど、シーズンも中盤に差し掛かってきたこのタイミングでの2ゴール1アシストというのは自分が思っていたところにはまだ足りません。FC東京戦(第11節)もシュートを打つ場面がありましたし、もっと点を取れたかなと思うので、もっと落ち着いてシュートを打てるように日頃から練習したいなと思います。


ー小田選手のヘディングが注目を浴びていますが、そのジャンプ力はトレーニングで得たのですか?それとも気が付いたらあったのでしょうか。


小田:小学生の頃から、コーナーキックから頭だけでハットトリックしたりしてましたし、昔から低いボールでも頭で行くような、FW岡崎慎司さん(現シント=トロイデン所属)のようなプレースタイルでした。それにプラスで(東福岡)高校時代にもゴールキーパーにボールを蹴ってもらってヘディングの練習をいっぱいしていたので、感覚と練習の成果かなと思います。


横浜F・マリノス FW西村拓真 写真:Getty Images

ー次節の相手、横浜F・マリノスは攻撃的なチームです。守備におけるポイントを教えてください。


小田:誰とマッチアップするかで変わると思うんですけど、ボールを持ってリズムを出すのが好きな選手だったらできるだけ最初からボールを持たせない、受けられないようなポジショニングをとっていく。スピードのある選手だったらサイドをケアしつつ、という感じになると思うんですけど、こっち側(担当のサイド)はまずやらせないようにしたいです。


ー「このような守り方をしたい」というものがあれば、教えてください。


小田:新潟戦が終わったばかりなので、まだ全然考えていないのですが、でも、アビスパ側から主導権を持ってFWから守備のコースを限定していければいいかなと思います。チームとして前からの守備に自信がありますし、それを剥がされたとしても、11人で守れる自信があるので、マリノス戦は(失点)0で抑えられると思いますし、抑えたいなと思います。


ールヴァン杯の新潟戦で、今季アウェイ初勝利を挙げたことは、気持ちの面でプラスになったりするのでしょうか。


小田:アウェイで勝てていなかったというのは、僕はあんまり気にしていません。チーム全体としては昨日勝ったというので、気持ちはだいぶ前向きにやっていけるんじゃないかなと思います。


一現時点でのリーグ戦12試合出場は、J1でのキャリアハイです。活躍の要因として、自分で成長や進化を感じる部分はありますか?


小田:まず、チーム全体として僕のストロングポイントをすごく理解してくれていて、それを活かそうとしてくれるのでやりやすい、というのがあります。あと(チーム戦術の)大前提としてボールを失わないゾーンが決められていて、前線に収められる選手がいるので、困ったらそこを目掛けて蹴っていいというのがあって、余裕を持ってプレーできているのかなと思います。


アビスパ福岡 長谷部茂利監督 写真:Getty Images

「チーム全体での対応が効果的」


長谷部茂利監督


ルヴァン杯には、U-21選手の先発出場義務がある。条件を満たすDF森山公弥が長期離脱中のアビスパ福岡は、2種登録選手の出場が続いており、新潟戦ではMF西村活輝(博多高等学校3年)が2節続けての先発出場となった。


ー新潟戦での西村活輝選手のプレー評価と、2種登録選手の出場が続くことで未来へ繋がるものがあれば教えてください。


長谷部監督:昨日は相手の左サイドからの攻撃が良かった中で、立ち上がりには少し外された場面もありましたけど、その後対応できるようになりました。何回か攻撃でもボールを受けてという形があり、得点までは至らなかったんですが、間でボールを受けてまた出してというのもあったので、まずまずの出来だったんじゃないかなと思います。前節(ルヴァン杯グループD第4節:鹿島アントラーズ戦)の方が良かったんじゃないかなと思いますけどね。あとはペナルティエリアの外ぐらいから1つシュートを打ったので、ああいうシュートを枠内に決められるようになると、もちろん評価も上がるし、彼の自信にもなると思います。それ以外にも課題はたくさんあるんですけど、まずは分かりやすいところで「ああいうのが課題だよ」という話をしました。まずまず頑張ってくれたと思います。


クラブにとっては現役高校生だけではなく、1度でも1年でも3年でも所属してくれた選手が、またアビスパでプレーする。活輝は高3、一翔(FW前田一翔)は高2で、そういう選手がトップの選手に混じって、練習だけでなく公式戦に出るというのには本当に意義があります。そこで皆さんに名前を覚えてもらって、そこで刺激も受けて、U-18のチームに帰る。ずっとトップチームで練習しているわけではなく、また他のユース選手も練習参加したりしています。そういう意味では「トップって厳しいけどやったら評価されるし、自分の未来が開けていくんだな、俺もそうなりたい」と思ってくれたらいいし、そこに行くために「ジュニアユースやユースで(アビスパに)入りたい」となっていくんじゃないかなと思います。


ー次節は横浜F・マリノス戦です。これまでの印象として、前半善戦して後半離されるのは個の能力が非常に高い相手の時だと感じますが、前半と後半の違いについて対策があれば教えてください。


長谷部監督:難しいんですけれど、個人に対して個人で対応するのももちろん大事ですし、チーム全体で対応していく、防いでいくというのは、特に個人の攻撃能力が高い相手に対して効果的だと思います。ただ、時間が経つにつれて相手も様子を見て慣れてくる。スペースも時間も与えられるようになってくるので、そうならないようにすることが大事ですが、アビスパは自分たちの力をコントロールして、例えば「前半8割、後半10割で」などとできるチームではありません。これまでも抑えきって0失点でというゲームがあるので、それを目指して行くことは変わりません。ただ、昨日のルヴァン杯のように開始数分で失点してしまうとか、同じようなことを何回も繰り返しているので、もう1回そこの意識を持って、みんなが声をかけ合い、意識を持つだけでだいぶ違うんですよね。昨日は入りは悪くなかったんですけれど、そういうこと(声かけ)がなかったまま失点してしまいました。


各チームには良い選手が1人だけでなく複数います。それをどういう風にしていくかという意味では、相手の「誰々に対して」ではなくて、自分たちの姿勢や意識をいつもそういう(高い)ところに持って行かないといけないなと思います。


ー今季の横浜F・マリノスの印象を聞かせください。


長谷部監督:怪我人も少し返ってきて、力のあるチームですね。特に、攻撃力は1番後ろのGKから11人全員にあるので、自分たちがどんな風に対処していくかが大事だと思います。攻撃力が高く、決して守備力も低いわけではないチャンピオンチームです。それに対して、自分たちは少しずつ攻撃部分を高めているんですが、それがどこまで通用するかチャレンジしたいと、選手たちに話していきたいなと思います。




リーグ戦ではJ1第14節を終えて9位、ルヴァン杯ではグループ首位に立つアビスパ福岡。相次いだ怪我人は少しずつ戦列に復帰しており、さらなる上位を目指して前進を続けている。

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