F1 Topic:モナコで見せたリカルドの“神ドライブ”に対するエンジニアたちの評価

2018年5月29日(火)15時17分 AUTOSPORT web

 MGU-Kが機能停止するというトラブルにトラブルに見舞われたとき、コクピットの中でダニエル・リカルドは「目を閉じて泣き出したい気持ちになっていた」ことを明かした。
 
 その表現が決して大げさではないことは、レース後のクリスチャン・ホーナー代表の言葉が物語っている。
「トラブルをエンジン部門のスタッフから聞かされたとき、われわれの信頼性に関するエンジニアが『今後のレースでペナルティを受けるリスクを考慮し、コンポーネントを温存するためにリタイアする選択肢もある』と言ってきた。そのスタッフによれば、『MGU-Kから大量の金属片を摂取しそうになっているのでエンジンを止めるべき』と言う。でも、私はエイドリアン(・ニューウェイ)とも相談し、彼も完全に私に同意してくれた。それはレースを続けること。止まったら止まった時だ、と」


 MGU-KのトラブルがICE(エンジン)にも影響を及ぼしかねないことは、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターも認めている。
「トラブルの状況にもよりますが、MGU-Kが電気的な問題で動かなくなったのなら、そんなにダメージはないと思いますが、もしハードウェア的に何かが壊れたのなら、金属片が飛散するので、ICEにもダメージが広がるでしょう」


 つまり、リカルドはMGU-Kのトラブルで、運動回生エネルギーシステムによるパワーを25%失っていただけでなく、いつエンジンが壊れても不思議ではない状況の中でレースを戦っていたわけである。


 あるエンジニアは「そんなことはにわかには信じられないが、もしかするとレッドブルはMGU-Kに問題が起きたときの対応法を構築しているのかもしれない」と、今回のリカルドの優勝が単なる運ではない可能性を示唆していた。


 さらに別のエンジニアは、そのような状況でフェラーリのベッテルを抑えきった走りに感嘆していた。
「MGU-Kが動かなくなったということは、MGU-Kによる発電が使えなくなっただけでなく、MGU-Hによって作られたエネルギーも、MGU-Kを介して使用することができなくなったことを意味するので、デプロイがまったく効かない状態だったと考えられる。そうなるとドライビングはかなり難しくなるのに、トップを譲らなかったのはすごい」


 実際、トラブルが発生した28周目前後のラップタイムを見ても、トラブルがあったとは思えないほど安定したタイムを刻んでいる。


 別のあるエンジニアは、リカルドが「1速から6速までしか、ギヤを使わなかった」というコメントに注目した。


「もしエンジンを労わるのであれば、6速で引っ張るのではなく、7速に入れたほうが回転数が上がらないので、エンジンには優しくなる。それでも、6速で引っ張ったのは、6速で回転数ほ高い状態でキープしたほうが、モナコではラップタイムを維持できたからではないだろうか」


 いずれにしても、リカルドの優勝は、ホーナーが賞賛したように、91年のブラジルGPのアイルトン・セナ(レース終盤、6速ホールドで優勝)や94年のスペインGPのミハエル・シューマッハ(レース後半、5速ホールドで優勝)と並んで、語り継がれる「神ドライブ」となることだろう。


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