湘南、悪夢の5連敗。疑惑の判定だけではない広島戦の敗因【J1リーグ2023】

2023年5月29日(月)14時0分 FOOTBALL TRIBE

写真:Getty Images

2023明治安田生命J1リーグ第15節の計9試合が5月27日と28日に行われ、湘南ベルマーレは27日、敵地エディオンスタジアム広島でサンフレッチェ広島と対戦。最終スコア0-1で敗れた。


直近のリーグ戦8試合勝ちなしと、混迷を極めている湘南。同クラブの喫緊の課題は何か。ここでは広島戦を振り返りながら、この点について言及する。




サンフレッチェ広島vs湘南ベルマーレ、先発メンバー

広島vs湘南:試合展開


前半13分に湘南が自陣でボールを失うと、同クラブのDF舘幸希と広島のFWナッシム・ベン・カリファが交錯。舘のスライディングタックルが著しく不正なプレーと判断され、松尾一主審よりレッドカードが提示された。


舘を失った湘南は[4-3-2]の守備隊形を敷き、ホームチームの攻撃を跳ね返し続けたが、後半31分に広島のMF松本泰志のシュートがDF杉岡大暉の腕に当たる。自陣ペナルティエリア内にいた杉岡のハンドの反則により、広島にPKが与えられた。


途中出場の広島FWドウグラス・ヴィエイラがPKを物にし、ホームチームが先制。これが決勝ゴールとなり、湘南はリーグ戦5連敗を喫している。




湘南ベルマーレ DF舘幸希 写真:Getty Images

舘の退場でゲームプラン崩壊


[3-1-4-2]の基本布陣でこの試合に臨んだ湘南は、広島の3バック(基本布陣[3-4-2-1])に対してハイプレスを敢行。試合序盤はこの守備の強度や練度はまずまずだったが、舘の退場で湘南のゲームプランが崩壊した。


舘の退場シーンは、同クラブMF茨田陽生の緩慢な横パスにより引き起こされたもの。この場面ではFW町野修斗とMF小野瀬康介が広島のMF川村拓夢(ボランチ)の両隣に立っており、味方からのパスを捌ける状態だった。


茨田は町野や小野瀬への縦パスではなく、相手のハイプレスの起点となり得る舘への横パスを選択。このチョイスが災いし、前述の舘の退場に至った。


スライディングを仕掛けた舘の足裏は、ベン・カリファに当たっておらず。当たったのは舘のスライディングの残り足(折りたたんでいる足)だったが、松尾主審から提示されたのはまさかのレッドカードだった。




湘南ベルマーレ DF石原広教 写真:Getty Images

「ひとつのミスが結果に繋がってしまう」


「ひとつのミスが退場の場面に繋がってしまったので、そのワンプレーをもっと大事にしたいです。最近はそういうミスが多く、それが結果に繋がってしまうと思いますし、そこはみんなが見直さないといけないところだと思います」(湘南公式ホームページより引用。一部加筆・補正・省略)


舘の退場に繋がった自陣でのボールロストを反省したのは、湘南のDF石原広教。松尾主審の厳しい判定には疑問符が付くが、同選手が述べた通り、これとは別に湘南は自陣でのプレー選択を改善する必要があるだろう。


湘南は[4-3-2]に布陣変更

概ね機能した[4-3-2]の守備


舘の退場で数的不利に陥った湘南は、基本布陣を[4-3-2]に変更。町野とFW若月大和の2トップが、広島の3バックから2ボランチ(川村と松本)へのパスコースを遮断した。


広島の両ウイングバック(柏好文と茶島雄介の両MF)のサイド突破やクロスは、ある程度許容。4バックと3人のMFで自陣ペナルティエリア手前を堅める湘南の作戦は概ね機能し、広島に中央突破のためのスペースを与えなかった。


「相手の3バックのサイドの選手がシンプルに(パスを)入れてくるなかで、相手の狙いはハッキリしていました。そこに対して1枚(1トップ)よりも2枚(2トップ)にして、(相手に)自由度を与えたくなかったというのがありましたね。中盤はいつもやっている形(3人)で、後ろが1枚少ない形(舘の退場で5バックから4バック)にしました。もちろん、ボールホルダーにいつものような強さで奪いに行くことはできないとはわかっていましたけれども、なるべく中央を締めたかったというのと、外からのクロス対応として相手の狙いもそこにあったので、そこをどう考えるかというなかで選択をしました」(湘南公式ホームページより引用。一部加筆・補正・省略)


湘南の山口智監督の試合後コメントからも、数的不利に陥った後の同クラブの守備プランが窺える。指揮官として、この試合における最善は尽くしたと言えるだろう。




湘南ベルマーレ DF畑大雅 写真:Getty Images

未だに改善されない湘南の攻撃配置


山口監督が応急処置として採用した[4-3-2]は守備面で効果を発揮したものの、攻撃面での機能性は詰めきれなかった。


問題が生じたのは、湘南がGKソン・ボムグンや最終ラインからパスを繋ごうとした場面。[4-3-2]の両サイドバック、石原とDF畑大雅がこの状況で自陣後方やセンターバックとほぼ横並びの位置に張りすぎてしまい、広島陣営のハイプレスをもろに浴びるケースが多かった。


石原が独力で相手のハイプレスを掻い潜る場面があったものの、チーム全体で配置を整え、安全かつ確実にボールを運べていたとは言い難い。町野と若月の2トップを目がけたロングパスも、広島の3バックの手前やその背後を単純に狙ったものが多く、相手としては対策が容易だった。前がかりになりがちな相手のウイングバックの背後を、より徹底して狙うなどの工夫が必要だっただろう。


4バックシステムで臨んだ際に隊形変化が乏しく、自陣後方からのパスワーク(ビルドアップ)が個人技頼みになりがちなのも、かねてからの湘南の弱点。2センターバック間に中盤の選手が降りる、もしくはセンターバックとサイドバックの間に中盤の選手が立ち、サイドと中央両方のパスルートを確保する。これらの配置を整え、安全にパスを回す時間帯を増やすことが、現17位の湘南の浮上には欠かせないだろう。

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