【コラム】カルチョの威信をかけて…“本気の”アッズリーニが6度目の欧州制覇に挑む

2019年6月15日(土)18時8分 サッカーキング

U-21欧州選手権に臨むイタリア代表 [写真]=Getty Images

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 イタリアは本気だ。イタリアとサンマリノで開催される第22回U−21欧州選手権が16日に開幕。2020年の東京五輪予選を兼ねた大会で、2週間にわたり、若者たちの熱い戦いが繰り広げられる。イタリアがU−21欧州選手権を開催するのは初。1990年のワールドカップ以降、イタリアの複数の都市で開催される初めてのビッグイベントでもあるから力を入れないわけにはいかない。もう一つ、本気になる理由がある。2018年ワールドカップ本大会出場を逃し、サッカー大国としての誇りを踏み潰されたからだ。カルチョの国は、復権を目指し、威信をかけてこのタイトルを狙う。それは、6日に発表された招集メンバーを見れば一目瞭然だ。

 A代表にも名を連ねるフェデリコ・キエーザ(フィオレンティーナ)、モイーズ・キーン(ユヴェントス)、ニコロ・ザニオーロ(ローマ)、ニコロ・バレッラ(カリアリ)、ロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)、ジャンルカ・マンチーニ(アタランタ)らを呼び寄せた。このアッズリーニ(イタリア代表のアンダー世代の愛称)であれば、頂点に立つことができると胸を躍らせずにはいられないだろう。

 ワールドカップで4度の優勝を誇るイタリアは、U−21欧州選手権においては5度の優勝を成し遂げた最強国である。パオロ・マルディーニの亡き父、チェーザレが指揮したチームは1992年大会から3連覇を達成。2000年大会では、3ゴールで得点王とMVPに輝いたアンドレ・ピルロを擁して王座奪還。その4年後には、アルベルト・ジラルディーノが4ゴールをマークして、こちらも得点王とMVPを獲得。イタリアを5度目の優勝に導いた。しかし、この大会以降、イタリアは優勝から遠ざかる。2013年には9年ぶりに決勝に駒を進めたが、アルバロ・モラタ、イスコ、ティアゴ・アルカンタラらが大活躍したスペインの前に2−4で敗れた。2017年の前回大会は、グループリーグで、最終的に優勝することとなるドイツを倒し首位突破したものの、準決勝でサウール・ニゲスにハットトリックを許し、スペインに1−3と敗れて涙を呑んだ。

 今大会は、開催国イタリアのほか、スペイン、ポーランド、ベルギー、ドイツ、デンマーク、オーストリア、セルビア、クロアチア、イングランド、フランス、ルーマニアの12カ国が出場する。ワールドカップ常連のサッカー強国が揃う厳しい大会だ。しかも、欧州に与えられた五輪出場枠はわずか「4」。3つに分けられたリーグの首位と最も成績の良い2位が、準決勝に進出すると同時に五輪出場権を得る(五輪出場資格のないイングランドがベスト4に進出した場合、五輪出場枠を争うプレーオフが行われる)。

 グループAに所属するイタリアは、大会初戦で優勝候補の一角スペインと対戦する。カルロス・ソレール(バレンシア)、ミケル・オヤルサバル(レアル・ソシエダ)、ファビアン・ルイス(ナポリ)といったいずれもA代表を経験し、市場価値は5000万ユーロ(約61億円)を上回るとも言われるプレーヤーを抱える。予選では北アイルランドに敗れ、不覚を取ったが、10試合で31得点を叩き出した凄まじい攻撃力を武器とする。

 19日の第2戦目はポーランドを迎える。予選はデンマークに次ぐ2位で終えたが、ポルトガルとのプレーオフを制して勝ち上がってきた。警戒すべき選手は、デュッセルドルフでプレーするストライカー、ダヴィド・コフナツキだろう。この代表の主将を務め、今年1月まで1年半、保有権を持つサンプドリアでプレーしており、イタリアを熟知している。

 そして、22日の最終戦はベルギー。スウェーデン、トルコといった難敵と戦った予選を無敗で突破した。トップ下を務めるヤリ・ヴェルスハーレン(アンデルレヒト)は18歳ながら、すでに今シーズンのトップリーグで21試合に出場している。近年、有望な選手を数多く輩出してきたが、このヴェルスハーレンも近く移籍市場で関心を集めることとなる選手だ。

 イタリアはこの3チームに3勝しなければならないだろう。最悪でも2勝1分けの成績でグループリーグで終えることが必要だ。2位となれば、ほかの2つのリーグの成績を見なければならず、他力本願となる。スペインとの初戦から、決勝トーナメントのような戦いが始まる。

 2013年からU−21を指揮するルイージ・ディ・ビアージョ監督のチームは、5月29日から6月8日まで、ローマにあるラツィオのトレーニングセンターで一次キャンプを行った。そして、26人の選手を絞りこんだ上に、A代表組を招き入れ、23人のメンバーを選択。冒頭に綴ったA代表組に加え、U−20ワールドカップでイタリア代表の主将を務めたアンドレア・ピナモンティ(フロジノーネ)もメンバーに入った。A代表組とピナモンティを除くメンバーで10日から二次キャンプをスタート。今度はボローニャのトレーニングセンターに移動し、16日のスペイン戦に向けて、最終調整を行っているところだ。

 このチームの中心メンバーとして17試合に出場してきたマヌエル・ロカテッリは「この2年間の集大成として、ケーキの上にサクランボを乗せて仕上げたい。ホームでプレーできることはアドバンテージだ。熱狂的な声援を得られるからね」とホームでの戦いが有利に働くと強調する。12日には、ユーロ予選を終えたA代表組6人に加え、準決勝で敗退したU−20組のピナモンティが合流。ここに23人の招集メンバー全員が揃うこととなった。初戦のスペイン戦までは時間がないが、A代表組が出場することも考えられる。しかし、ネームバリューにこだわらず、コンディションを見極める必要があるだろう。システムは「4−3−3」が有力視される。ズデネク・ゼーマンの影響を強く受けた指揮官は、攻撃的サッカーを標榜。両サイドバックが上下動を繰り返す、アグレッシブなサッカーが見られるはずだ。

 イタリアサッカー連盟のガブリエーレ・グラヴィーナ会長は「優勝すること、五輪出場権を得ることが目標。五輪に初めて女子のチームと一緒に出場できるようなことになれば、それは素晴らしい夢だ」と意気込む。そして、ディ・ビアージョ監督は「目標は、15年ぶりの優勝だ。グループも大会形式も難しいが、我々の目標は欧州制覇。誰もが私に優勝を要求している。私の追い求めるものも、まさに優勝だ」と目標を明確に語った。

 16日のスペイン戦のチケットは、最も高額な席が8ユーロ(約980円)とあって、すでに完売に近づいている。初戦は3万6462人の収容能力を持つボローニャのレナート・デッラーラ。イタリアの矜持を取り戻す戦いが始まる。

文=佐藤徳和/Norikazu Sato

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