A代表デビュー戦と同じ相手 丸4年経ち、飛躍した姿を見せたい久保建英

2023年6月15日(木)8時0分 サッカーキング

久保建英 [写真]=Getty Images

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 FIFAワールドカップ2026に向け、3月から本格始動した新生・日本代表。ウルグアイ、コロンビアとの初陣2連戦を未勝利で終えたからこそ、今回の6月シリーズは白星がノルマだ。12日に対戦するエルサルバドルは、FIFAランキング75位と日本より下に位置するだけに、やはり内容ある勝利が必須となる。

 そのエルサルバドル戦に特別な因縁のある選手がいる。2019年6月に宮城で行われた同国とのゲーム記念すべき国際Aマッチデビューを飾った久保建英である。

「あの時は交代で呼ばれて、すごく嬉しかったのを覚えています。でも隣を見たら、中島(翔哉)選手が僕よりも嬉しそうな顔をしていたので、『代表ってすごい場所なんだ』と思いました。今はある種、当たり前になってきている中で、その嬉しさや楽しさを忘れず、代表の価値を僕たちが挙げていければいいかなと思います」と22歳になったアタッカーは初心を忘れず、ピッチで堂々と躍動する構えだ。

 初キャップからの4年間は、正直言って、順風満帆とは言い切れないものがあった。

 18歳だった当時は金田喜稔の持つ19歳119日という最年少得点記録更新も確実視されていた。本人も「いつまでも言われ続けるのもあれなんで、早いうちに決められればそれで終わりなのかな」と自信をのぞかせていた。しかし所属クラブはマジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェと毎年のように変わり、不安定な立場が続いた。

 コロナ禍もマイナスに作用し、結局、21歳になった直後の2022年6月10日のガーナ戦まで代表初ゴールがズレ込むことになった。あの久保が代表1点目を記録するまでに3年もかかるとは、一体誰が想像しただろう。本人も苦しみ抜いたに違いない。

 代表での序列もなかなか上がらなかった。FIFAワールドカップカタール2022アジア最終予選序盤戦にはレギュラー定着のビッグチャンスがあったものの、予期せぬ負傷でつかみきれず、一時はワールドカップも当落選上まで追い込まれた。

 その苦境を2022年夏に赴いたレアル・ソシエダで覆し、メンバーに滑り込み。ドイツ戦のスタメンに名乗りを挙げたが、久保に課せられたのは守備のタスク中心。持ち前の高度な技術や創造性は影を潜めた。本人もスペイン戦後には「交代は予想してなかったので、個人的には物凄く悔しい。次は前半から結果を出すしかない」と語気を強めたが、肝心なクロアチア戦を体調不良で欠場。初めての大舞台で不遇を味わうことになった。

 大いなる屈辱をバネに、3月の新生ジャパン初陣を迎えた久保。だが、負の連鎖はとどまらなかった。このタイミングでコロナの陰性確認が取れずに練習を欠席。最終的にコロンビア戦の後半途中からピッチに立ったものの、またも“代表に縁がない”形で終えることになった。

 今回の6月シリーズはそういったネガティブムードを一掃し、絶対的主力として新たなスタートを切る必要がある。そうなれるだけの実績を今シーズンの久保はクラブチームでしっかりと積み重ねてきた。レアル・ソシエダでは9ゴールをマーク。少年時代を過ごしたバルセロナ、古巣のレアル・マドリードといった強豪を次々と撃破し、念願だったUEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得という成功を収めたのだ。

「日本人の22歳で自分の力でチャンピオンズリーグに出られる選手は一握り。日本代表という観点で見てもすごくいいシーズンだったのかなと思います。自分自身、得点パターンが増えたのがよかったと思いますし、相手が警戒するようになった結果、自分の得意な形で持ち込めるようにもなった。(バルサやレアル相手でも)『勝てる相手』だと思ってやったので、そういうところも変わったと思います」と久保はかつてないほど自信に満ち溢れている様子だ。

 となれば、日本代表でも「真の主力」になれるはず。今回は4−3−3と4−3−2−1を併用しながら戦う見通しで、彼は右FWとトップ下の両方をこなすことになる。右なら得意のドリブルからフィニッシュに持ち込むことが可能だし、トップ下ならよりゴールに突き進める。

 周囲の陣取るであろう上田綺世や三笘薫、堂安律らとは東京五輪で共闘しているため、思い切ってプレーできるはず。「味方のよさを引き出しつつ、自らがも輝く」という関係を構築できれば理想的。レアル・ソシエダでダビド・シルバと見せている好連携を頭に描きながら、代表でもいい仲間たちと息の合ったホットラインを形成できれば、自ずとゴールもついてくるだろう。

 久保はここまで国際Aマッチ22試合出場1ゴール。彼のスケール感や潜在能力を考えれば、やはり今の数字は少なすぎる。
「まだ1点なので、ここから追いつけ追い越せで、最後に結果を残せれば万々歳かなと。1点取れればどんどん行けると思うので、とりあえずエルサルバドル戦に向けて準備していきたいです」

 本人も目を輝かせたが、初キャップの相手に大きく成長した姿を見せつけられれば、ここからの代表キャリアも希望に満ちたものになる。

 22歳、久保建英の日本代表初戦を大きな期待を抱きつつ見守りたい。

取材・文=元川悦子

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