ヘイデン・パッドンやマッズ・オストベルグらを退け、地元マルティン・セスクが連覇/ERC第4戦

2023年6月22日(木)20時33分 AUTOSPORT web

 ここラトビアから“高速グラベルシリーズ3連戦”が始まる2023年ERCヨーロッパ・ラリー選手権は、6月16〜18日に第4戦『ラリー・リエパヤ』を開催。昨季の同大会で全ステージ制覇の偉業を達成したチームMRFタイヤの地元出身、マルティン・セスク(シュコダ・ファビアRSラリー2)が今季も完璧なラリー運びで大会連覇を達成。いくつかのステージこそ落としたものの、選手権首位ヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 Nラリー2)を抑え切っての優勝を果たすと同時に、前戦『第79回ラリー・ポーランド』に続く連勝とキャリア3勝目を飾っている。


 ホームヒーローかつ前年度覇者として凱旋したセスクは、金曜予選ステージから最速タイムで週末を開始し、幸先よく土曜スタート順選択の優先権も確保。しかし前戦での勝利から地元戦までの期間は「非常にストレスフルだった」と、その難しい胸中も明かした。


「ご存知のとおり、こうして地元に戻れて本当にうれしい。ラリー前はストレスフルだったが、今はこうして予選首位でここにいるし、素晴らしい気分さ」と続けた23歳のセスク。


「ここ数週間、僕は“ラジオ・サイレンス(無線封止/沈黙の時間の意)”に耽り、ラリーに向け簡単な準備をしてから静かに暮らし、みんなが話題にしている間は少し隠れようとしていた。すべてはこのラリーの後、結果について話したいと思っていたんだ」と前戦勝者、大会覇者ならではの苦労も経験した。


「いつだってメディアからの質問、トピックはひとつ(地元での勝利、連覇)だけ。僕はこの点についてはあまり期待せず控えめにしていたい。もちろん、すべてのラリーでそうしているように、僕らは最善を尽くして準備をしてきた。僕はERCの年間登録ドライバーであり、ここも全8戦のうちの1戦。全体像を見渡す必要があるんだ」


 こうした冷静沈着な思考能力は土曜からのレグ1でも遺憾なく発揮され、現地11時からスタートした27.56kmのトゥクムス1と2の連続ループステージでは、乾燥した路面による粉塵が発生し、ほぼ視界ゼロの状況に。


 さすがに地元出身のセスクも「一部のセクションで自分の行き先が見えなかった」と認めたにもかかわらず、ここで後続に16.4秒の差をつける最速タイムを記録。直後、視界の問題による安全上の理由から同ルートとなるSS2のキャンセルが決まったものの、SS3以降はブレイクの間に雨が降り始めSS4、SS5とセスクはさらに加速して順当にベストタイムを奪っていく。

「全開にできる感触を求め」た措置として、新型のRS Rally2から旧EVOに戻した王者エフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2 EVO)は9位に終わる
選手権首位ヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 N Rally2)は、今回も選手権を見据えた走りで着実な2位フィニッシュ
地元出身マルティン・セスク(シュコダ・ファビアRS Rally2)が、前戦勝利の手応えも得て初日から首位を快走する


■ボーナスの5点も獲得する完勝に「完璧だったね!」と自画自賛


 市街での最終SSSとなった2.54kmこそ出走順のアヤで最速の座を譲ったものの、2番手のパッドンと3番手のMRF陣営マッズ・オストベルグ(シトロエンC3ラリー2)ら、ふたりの世界選手権経験者に対して堂々28.3秒のリードを築いた。


「SS1はクレイジーだったね」と振り返ったセスク。「全距離の半分は、どこがステージなのか、どこがコーナーなのか全く分からないほど。道路脇の電柱を見て、その電柱を頼りに視界のない中を進んでいった。でも、いくつかの場所ではすでに(電柱は)破壊されており、完全に見えない場所もあった。僕のコドライバーも30m先のコーナーを読んでくれるが、こちらはただなんとなく、そのコーナーがどこにあるのかを感じようとしているだけだった(笑)」


 サービスが設定されたリエパヤ生まれの若者は、続く4SS構成のレグ2でもスピードを緩めることなくベストを連発。ミッドデイサービス時点でマージンを34.2秒に広げると、午後最初のSS9こそセーフティマージンを取り、フィンランド王者ミッコ・ヘイッキラ(シュコダ・ファビアRSラリー2)に最速を譲ったが、最終パワーステージではパッドンより0.001秒速くフライングフィニッシュを通過。ボーナスの5点も加算する強さで、地元大会連覇を達成してみせた。


「もう完璧だったね! 今週末はとても特別だった。明らかにチームMRFタイヤのおかげだし、地元のファンや周囲のみんなにも心から感謝している」と笑顔を見せたセスク。


 この連勝劇で、選手権でも30点差圏内に迫ってきた地元スペシャリストに対し、南半球NZ出身のパッドンも「できる限りのことをした。でもこのイベントでは、おそらく彼に勝つことはできなかっただろう」と完敗を宣言した。


「ホームグラウンドでマルティンに勝つのはかなり難しい。でもそれは最初から分かっていたこと。次の(ERC初開催)スウェーデンは、もう少し僕らの間で互角になると思うし、もう少し僕らの好みにも合うはずだ。あのイベントは誰にとっても初めてのことであり、我々は間違いなく良い戦いをするだろう」と続けた36歳のパッドン。


 そう今季のチャンピオン筆頭候補が語るとおり、続くERC第5戦はWRC世界ラリー選手権でおなじみ、本来なら雪と氷のカールスタッドを拠点とした初開催のグラベル”サマー”ラリーこと『ロイヤル・ラリー・オブ・スカンジナビア』が、7月6〜8日の週末に開催される。

「タイヤは問題ない。あとコンマ5ぐらいは行けそうだが、今はこれが限界」と、初日から好感触を得たマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 Rally2)は開幕戦以来の3位に
終盤にトラブルで順位を入れ替えたものの、ジョシュ・マッカリア(ヒョンデi20 N Rally2)とロバート・ヴィルヴェス(フォード・フィエスタRally2)が健闘の4位、5位
「全8戦すべてで一貫性を保つことに重点を置いていて、現時点ではそれほど心配していない」と2位のパッドン

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