【女子W杯】アメリカVSオランダ因縁対決で見えたチャンピオン交代の兆し

2023年7月28日(金)12時0分 FOOTBALL TRIBE

写真:Getty Images

7月20日に開幕した2023FIFA女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア&ニュージランド大会は、各グループステージ第2節の試合を終え、熾烈な順位争いが繰り広げられている(28日時点)。


中でも注目のグループEは、歴代最多優勝を誇るアメリカと、FIFAランク9位のオランダを含む。2019年に行われた前回の女子W杯フランス大会では、決勝戦でチャンピオンの座を争った因縁のコンビだ。その特別対決が27日に行われ、結果は1-1で引き分け。見えてきたのは、絶対王者アメリカのトップ交代の兆しだった。




オランダ女子代表 MFビクトリア・ペロバ 写真:Getty Images

リベンジを惜しくも逃したオランダ


前回の女子W杯フランス大会決勝戦。オランダはアメリカから1点も奪うことが出来ず、0-2という悔やまれる内容で敗退。その屈辱から4年後の今大会では、立場が逆転したと言えるほど、アメリカが押され気味の試合展開となった。


27日に行われたグループEの第2節。試合前半16分過ぎ、先制ゴールを決めたのはオランダだった。MFビクトリア・ペロバ(アーセナル・ウィメン)が送り出した速さのあるクロスから、MFジル・ロード(マンチェスターシティ・ウィメン)が鋭いミドルシュートで相手のゴールネットを激しく揺らした。アメリカが先制点を奪われることは近年の試合では珍しく、アメリカ代表のストライカーFWアレックス・モーガン(サンディエゴ・ウェーブ)も痛手の表情を見せていた。その動揺か、アメリカのプレー全体に荒削りな動きが目立つようになる。


アメリカは試合全般を通じてFWソフィア・スミス(ポートランド・ソーンズ)の巧みなボール捌きから、攻撃の糧となるモーガンへと繋ぐシーンが多く見受けられたが、相手ゴール前で分厚い「オレンジ色の壁」にぶつかりシュートを生み出すチャンスが今ひとつ作れない状況。焦りと苛立ちが募る中、ファウルの数も次第に目立つようになり、後半戦も中盤に差し掛かった頃には両国のキャプテン同士が言い争いをする場面もあった。


結局試合は一時中断となり、主審を担当していた山下良美審判員が必死に説得する姿も見られた。だが、ほどなくしてその苛立ちはアメリカチームを牽引する力へと変化。コーナーキックからキレのある弾丸ヘディングを決めたのは、同国キャプテンMFリンジー・ホラン(オリンピック・リヨン・フェミニン)。「私がやってやる!」と言わんばかりに燃え盛る闘志の炎がチーム全体を包み込み、後半戦も残り僅かという頃にようやくアメリカらしい動きが見え始めた。


しかし、試合結果は1-1の引き分け。王者アメリカにとってはわだかまりの残る結果となり、またオランダにとっても4年前のリベンジとはならず、引き続き悔しさが残る結果となった。


アメリカ女子代表 MFリンジー・ホラン 写真:Getty Images

王者アメリカはプレッシャーを活かせるか


今大会でアメリカの選手が着ている、白地に青の飛沫模様をあしらった爽やかなホームユニフォームには、首元内側に「91、99、15、19」と4種の数字が金色で刻まれている。これは女子W杯の第1回目(1991年)以降、アメリカが優勝した西暦の下二桁を示す数字だ。女子W杯において最多優勝国であるアメリカ。この成績は誇りであり、絶対的なものとして存在している。しかし、この強すぎる「優勝」へのプレッシャーが、アメリカの今後を左右する鍵となりそうだ。


27日のオランダ戦では、先制点を奪われた状況に焦りバランスを崩してしまった。もしかすると、どこかにチャンピオンの余裕があったのかもしれない。しかし、プレッシャーからの焦りがMFホランのヘディングシュートを生み出し、メンバーを鼓舞する結果になったとも言える。今回の試合では、そこに行き着くまでに時間を要してしまい、勝利することは叶わなかった。


王者ゆえの大きなプレッシャーを上手く味方にできるかが、アメリカの運命を左右するポイントになると言っても過言ではないだろう。




ジャマイカ女子代表 写真:Getty Images

ノックアウトステージは番狂わせの予感大


今W杯開幕から現在までに終了した試合の中で見どころだったのは、23日に行われたジャマイカ対フランス(グループF)だ。FIFAランク43位のジャマイカが5位のフランス相手に1点も取らせず0-0で引き分けに落とし込むというミラクルが起こった。


ひょっとすると今年のW杯は、全体的にFIFAランキングが大きく覆る内容となるのではないか。8月からは順次ノックアウトステージの試合がスタートする。それまでにいずれの代表チームも出来るだけ勝点を重ね、次の段階に進みたいことだろう。


われらが日本女子代表(なでしこジャパン)も、31日にスペイン(FIFAランク6位)との大勝負を控えている。スペインは26日のザンビア戦で5-0と圧勝。日本同様ザンビアに大きく点差をつけて勝利し、現時点での勝点は両国ともに6。かなりヒートアップする試合になりそうだ。なでしこの緻密な頭脳プレーに期待が高まる。

FOOTBALL TRIBE

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