2020年86/BRZレース第5戦SUGO:実質の開幕戦は川合孝汰がスーパ-GTに続くデビューウィンを飾る
2020年7月29日(水)14時13分 AUTOSPORT web
新型コロナウイルスの影響で他のカテゴリー同様、大幅なスケジュール変更を強いられたGAZOO Racing 86/BRZ Raceも、7月25、26日、ついにスポーツランドSUGOで熱戦の火ぶたがきられた。
プロフェッショナルシリーズを制したのは、スーパーGT GT300で衝撃のデビューウィンを飾ったばかりの川合孝汰(埼玉トヨペットGB 86)。そしてクラブマンシリーズのEXPERTクラスは松井宏太(ネッツ青森アップルRC86DL)が、OPENクラスは西澤嗣哲(C-ENGテック MS 86)が優勝した。
レースウィークのSUGOは濃い霧に散々苦しめられ、天候が目まぐるしく変化し、タイムスケジュールもその都度、変更された。本来であれば3クラスとも2ヒートでの戦いが予定されていたが、クラブマンシリーズのEXPERTクラスは1ヒートにあらためられたほどだ。
金曜日に行われたプロフェッショナルシリーズの専有走行はドライコンディションで行われ、谷口信輝(KTMS 86)がトップタイムを記録し、連覇に向けて幸先の良いスタートを切るかに思われた。
しかし、土曜日の予選は天候が一転。わずかに霧が出ているセミウェットの状態に変化した。予選アタックは後半勝負が有利なのは明らかだが、それでもドライバーたちは「何か」を予感していたのだろう。服部尚貴(OTG DL 86)や佐々木雅弘(小倉クラッチREVO 86 BS)らは計測開始と同時にコースインしていく。
その「何か」は開始5分後に発生した。最終コーナーでクラッシュがあり、赤旗が提示されてしまったのだ。その時点で計測が許されたのはわずか12人。トップタイムを記したのは服部だった。
「赤旗を最初に見たのは2コーナー。タイミングも味方してくれた」
これに続いたのは佐々木が2番手タイムを記録。3分遅れで走り始めた2019年王者の谷口はタイミングが合わず、タイム計測に間に合わなかった。その後、予選は再開されたものの、弱い雨が降り始めたこともあり、序盤でタイムを出した服部、佐々木、そして久保凛太郎(CG ROBOT BRZ BS)のトップ3で決まりかと思われた。
しかし、その予想を覆し、服部と佐々木の間に割って入ったドライバーがいる。今回が86/BRZレースデビューとなる川合だ。
「赤旗の前にも出ていましたが、タイヤを温める前だったんです。僕のアタックのときは谷口さんたちプロの方が走っていて、最終コーナーでついていきました。そしたらいいタイムが出ましたね。単独だったら怪しかったです」
一方、お手本を見せてしまった格好の谷口は7番手に留まった。
同日に行われたヒート1で再びコースはドライコンディションに変わる。予選の順位どおり服部、川合、佐々木、久保の4人が後続を引き離してトップを競い合っていたが、均衡を打ち破ったのは川合だった。
7周目の1コーナーで服部をかわしてトップに浮上。服部はその後、4番手に後退してしまった。トップに立った川合は後方で激しくバトルを繰り広げる佐々木と久保を0.8秒差で抑えきり、トップで通過。ヒート2にはポールポジションから臨むことになった。一方、7番手からスタートしたディフェンディングチャンピオンの谷口は5番手までポジションをあげた。
7月19日、日曜日のヒート2は再び悪天候となり、霧の影響で周回数が3周減り、セーフティカーでのスタートとなった。あまりの天候の悪さにある程度の周回をこなしたところで赤旗終了の可能性もあったが、少しずつではあったが、わずかに視界が回復したこともあり、残り4周でバトル再開となる。
前日のヒート1でポールポジションを獲得し、トップからリスタートを決めた川合だったが、後続を振り切るまでには至らず、翌周の馬の背コーナーでは佐々木に並ばれてしまう場面も見られた。しかし、今度は川合を抜ききれなかった佐々木に服部が急接近。2台のタイヤの違いによるスピード差は明らかで、ファイナルラップで佐々木は服部にかわされてしまう。
佐々木と服部の激しい2番手争いにも助けられた川合はスーパーGTに続き2週連続でデビューウィンを達成した。
「きつかった。ギリギリでした。4周だったから良かったという感じです。うれしいですが、まだまだもっと頑張りたいですね。甘いところがいくつもあったので、そのあたりをしっかりまとめて、もっと強いレースができたらと思います」と、変に浮かれることもなく、しっかりレースを振り返っていた。
川合の後方は服部、佐々木、久保の順に続き、あと一歩というところまで迫ったものの久保を抜ききれなかった谷口は、5位で開幕戦を終えた。
クラブマンシリーズのEXPERTクラスは、予選の序盤でトップタイムを記録した松井を鶴賀義幸(栃木トヨタBS ED/T2F86)が最後の最後に逆転し、ポールポジションを獲得。レースはプロフェッショナルシリーズ同様、セーフティカー先導でのスタートとなったが、こちらは1周のみでバトルがスタートした。
リスタートを完璧に決めた鶴賀は序盤で2番手松井を1秒以上引き離す。しかし、周回数を重ねていくうちにその差はみるみる縮まり、松井が後方まで迫ってきた。そして、6周目に馬の背コーナーで松井が逆転に成功。
「まず3コーナーで狙ったんですが、1回で仕留めきれなくて。でも、接触もなく、いいバトルができました」
その後もしっかり逃げ切って、SUGOでの2年連続優勝を飾ることとなった。3位表彰台は呉良亮(86RACER’S IDI 86)が獲得している。
クラブマンシリーズのOPENクラスは咲川めり(Gensrations 86)が、初のポールポジションを獲得。しかし、ヒート1ではスタートで出遅れ、予選2番手の西澤の先行を許してしまう。咲川はなんとか西澤に食らいつき、2台は後続を大きく引き離していったが、スタートでトップに立った西澤がそのままチェッカーを受けた。
ヒート2はこちらも他の2シリーズ同様、霧の影響により3周減のセーフティカースタートとなった。ヒート1でのふたりの決着がヒート2でつけられるものと思われていたが、天候の回復が見込めず、4周目に赤旗が掲示され、そのまま終了となってしまったため期待したバトルを目にすることは叶わなかった。
「少し消化不良ですけど、勝ちは勝ちなんでうれしいです。これが初優勝ですし、ヒート1のスタートがすべてでしたね」と西澤。3位表彰台は木下智裕(Kinofit MAX 86)が獲得した。