ニュルの“ヒリヒリ感”に魅了されたグランツーリスモ生みの親に聞く、最新作の見どころ

2017年8月2日(水)19時51分 AUTOSPORT web

 日本では10月19日に発売されるプレイステーション4用ソフト『グランツーリスモSPORT』。シリーズプロデューサーとして開発を率いるポリフォニー・デジタル代表取締役の山内一典氏に、最新作の見どころや、長年参戦しているニュルブルクリンク24時間耐久レースの魅力を聞いた。


 グランツーリスモといえば、1997年にプレイステーション用ソフトとして初代が発売され、今年でシリーズ20周年を迎えるビッグタイトル。これまでの世界累計販売本数は7690万本にも及ぶ。


 このシリーズの1作目からシリーズに携わっている山内氏は、日本を代表するゲームクリエイターのひとり。しかし、モータースポーツファンにとっては、ニュル24時間に参戦するレーシングドライバー“山内一典”としてのイメージが強いかもしれない。


 2017年は「どうしても忙しくて」ニュル24時間に足を運べなかった山内氏だが、「現場に行きたかった、というよりもレースに出たかった」と、悔しさをにじませた。


「世の中に、あそこまで楽しいものはありません。あの独特のヒリヒリ感はニュルでしか味わえませんよ」

2014年のニュル24時間で山内一典氏がドライブした24号車ニッサンGT-RニスモGT3


「どのドライバーも命がけで走っていますから、他のチームも含めて友情みたいなものも生まれますし、パドック全体がひとつの家族のような状態になります」


「そして、いざレースになると“戦争”が始まるわけです。どのドライバーも命がけで戦っていますから、面白くないわけがありませんよね」


「時間があれば来年(は参戦したい)」と語った山内氏が、現在開発をリードしているのがシリーズ最新作のグランツーリスモSPORTだ。

『グランツーリスモSPORT』にはファン待望のポルシェも収録された


 このグランツーリスモSPORTはフルHDを超える4K画質やHDR(ハイダイナミックレンジ合成)への対応、車両モデリングデータの刷新、最新の挙動シミュレーションの採用などにより、従来作を凌駕する高画質、高品質を実現している。

グランツーリスモがFIAと協力して提供するのが『スポーツモード』だ


 またFIAと協力してオンライン・レーシングの未来形を提唱するのが『スポーツモード』。ドライビングテクニックだけでなく、プレイヤーのマナーも評価し、フェアな形のオンラインレースを提供するほか、リアルなモータースポーツライセンスと同等の価値を持つ『FIAグランツーリスモ・デジタル・ライセンス』の発行といった新たな取り組みも用意された。


 2013年に発売されたグランツーリスモ6以来となる最新作について、山内氏は「グランツーリスモSPORTは、20年間に及ぶグランツーリスモの歴史のなかで1番いい部分をすべてピックアップしてエッセンスを凝縮した」と語る。


「そしてFIAとともに始める“これからのモータースポーツの100年”のスタート地点でもあります」


「HDR技術や『スケープス』のような、新しいクルマの写真の世界などを含めて、これまで経験したことのないような要素が詰まっています」


「間違いなく、プレイした人の人生を変えるものになっていると思いますので、そこは期待してほしいですね」

『グランツーリスモSPORT』ではクルマのフレークサイズも忠実に再現


 150台以上のクルマを収録しているグランツーリスモSPORTだが、どのクルマのモデリングデータ制作もひとりのアーティストが全行程を担当。自動車メーカーが所有するCADデータを除けば、世界でもっとも高品質・高精度だというデータは、ボディのフレークのサイズも忠実に再現。1台あたり6カ月もの時間を費やして作り上げられる。


 また、サーキットのデータは上空からのレーザースキャンデータと、クルマにスキャナーを搭載して得た路面データを併用して精密に作成されているほか、サーキット周辺の木々といった植生についても、その種類ごとに葉っぱの光の反射率や透過率などを測定して忠実に再現しているという。


■ゲーム作りは「アポロ計画よりも大変」


 山内氏は「ビデオゲームは本当に複雑なシステム」だと語り、その難しさを「アポロ計画よりも大変」と表現した。


「グランツーリスモは、どのピースも作るのが大変。どの部分も才能とエネルギーがつぎ込まれています。同時に大変なのはクルマやコース、エンジニアが作り出すシステムなどをキレイにインテグレートし、全体を調和させるのが大変な作業です」


「ビデオゲームに投入されている技術に“枯れた”ものはほとんどなく、生まれたてのテクノロジーや、自分たちで作り上げたものばかりなんです」


「そのため、毎タイトル同じことは起きません。毎回、新しいチャレンジになります。同じことを2度やるのであれば、1度目の経験を活かして2度目は最適化を図れますし、3度目はもっと効率的にできるようになります」


「しかし、ビデオゲームの制作は毎回ゼロから、制作体制や制作手法から全部やり直すことが多いんです。そういった面でもアポロ計画に似ていますね」

『グランツーリスモSPORT』は10月19日に日本発売される


 ひとりのクルマ乗りとして、そしてニュルの魅力に取りつかれたレーシングドライバーとして、グランツーリスモを生み出した山内氏。そんなゲームクリエイターが世に送り出すグランツーリスモSPORTは、ゲーム好きだけでなく、モータースポーツファンやクルマ好きの心を掴むことは間違いない。



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