豪州SC第5戦ダーウィン・トリプルクラウン:アントン・デ・パスカーレが71戦目で悲願の初優勝

2020年8月19日(水)17時36分 AUTOSPORT web

 オーストラリア大陸を代表する人気ツーリングカー選手権、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの第5戦ダーウィン・トリプルクラウンが、当初予定より1週間遅れの8月15〜16日に開催され、土曜レース1では2018年のシリーズデビュー以来、実に71戦目にしてアントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)が初勝利を獲得。日曜はVASC連覇中のスコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJR Team Penske)と、7冠王者のジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)が勝利を分け合った。


 7月はシドニー・モータースポーツパークでの史上初同一サーキット連戦を実施したVASCだが、第5戦(第2戦F1併催ラウンドは会期中キャンセルのため、実質第4戦)の開催地ヒドゥン・バレー・レースウェイを有するノーザンテリトリー州(NT州)は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症対策の一環として第2波の再感染が広がるブリスベンやシドニー・エリアを“ホットスポット”に指定したことにより、州境封鎖やレース関係者の検疫、隔離措置などの影響で当初カレンダーより1週遅れてのレースウイークを迎えた。


 さらにこの週末を前に、スーパーカーの運営組織はスケジュールの再調整もアナウンスし、予選シュートアウトから2ヒートでの最多得点を競う伝統の“トリプルクラウン”を経た翌週8月22〜23日にも、このヒドゥン・バレーでスーパースプリント・フォーマットの第6戦を実施することを決定。


 さらに8月29〜30日の第7戦タウンスビル・スーパースプリント戦も、明けた9月5〜6日の週末に同じリードパーク市街地サーキットでバック・トゥ・バック戦が組み込まれるなど、検疫で足止めを喰い長期のロード戦を強いられているチームメンバーやクルーには厳しい日程が待ち受ける。


 そんななか、ようやく迎えた土曜の予選では2020年も選手権首位でシリーズを牽引する王者マクラフランが予選トップ15シュートアウトを制し、今季5度目のポールポジションを獲得。レッドブル・レーシング・オーストラリア(RBRA)のエース、ウインカップは予選で暫定ポールを獲得していたものの、0.1329秒差のフロントロウ2番手から逆転を期す展開となった。


 現地時間土曜の午後15時30分にスタートが切られたレース1は、アウト側レコードラインの蹴り出しを活かした2番手ウインカップが、Shell V-Powerカラーのマスタングを仕留めて先頭で1コーナーへ。さらに4番手にいた2014年王者マーク・ウインターボトム(ホールデン・コモドアZB/Team 18)も続き、ホールデン勢がワン・ツー体制を構築。マクラフラン、ファビアン・クルサードのDJR Team Penskeの2台が追う展開となる。

土曜は予選から好調さを披露したTeam18のマーク・ウインターボトム。R1では僚友スコット・パイに次ぐ4位に入った
右フロントには生々しいタイヤ痕を残しながら、首位を守り抜いたアントン・デ・パスカーレが悲願の瞬間を迎えた
「裁定には驚きだが、スチュワードの決定は最大限尊重する」と、不満を漏らしたジェイミー・ウインカップ


■ソフトタイヤの選択が初勝利を呼び込む


 レース距離110kmのスプリント戦で早めに仕掛けた2番手ウインターボトムは、かつてのライバルでもある7冠王者のテールに迫ると、3周目にはダンロップのソフトコンパウンドの発動も活かして早めのオーバーテイクに成功。首位に浮上し、独走体勢に持ち込むべくスパートを開始する。


 しかしウインターボトムの野望は続く5周目に打ち砕かれ、中団のクラッシュでシーズン再開後初となるセーフティカー(SC)導入が決定。これで各陣営ともピットへとなだれ込み、先頭集団も後半のロングスティントに向けたフレッシュラバーへと交換していく。


 ここでハードコンパウンドを選択したウインカップ、マクラフラン、そしてウインターボトムらに対し、ソフトを選択する勝負に出たのが予選6番手のパスカーレと、2010年チャンピオンで8番グリッドスタートだったジェームス・コートニー(フォード・マスタング/Tickford Racing)の2台で、リスタート直後にはパスカーレが堂々の首位浮上に成功。コートニーもマクラフランやウインカップを仕留め、すぐさま2番手に上がってくる。


 さらに追い討ちを掛けるように、ピットアウト時にパスカーレと交錯したウインカップには「アンセーフリリース」のペナルティで15秒が加算、SC明けリスタートではコントロールライン手前で前走コートニーの前に出たマクラフランに対し、同じく15秒のペナルティが課されることに。


 これで楽になったソフト装着の2台は、この日2度目のSCリスタートも無難にこなし残り10周のマッチレースを展開。パスカーレが第3戦シドニーから9年ぶりフォード陣営に電撃復帰したコートニーを抑え切り、悲願のVASC初優勝を手にした。


「ピットボックスではタイトな瞬間もあり、マシンにはダメージが残ってまっすぐ走らなかったからヒヤヒヤしていた。でも勝てる戦略だったし、それを遂行することだけに集中した。価値ある初勝利になったよ」と喜びを語ったパスカーレ。


 最後の表彰台となる3位には終盤の逆転劇でスコット・パイ(ホールデン・コモドアZB/Team 18)が入り、4位のウインターボトムと並んでTeam 18が上位フィニッシュを達成。5位にはクリス・ピザー(ホールデン・コモドアZB/Team Sydney)が続き、コートニーの抜けた新興チームが最上位リザルトを獲得している。


 明けた日曜のレース2、レース3に向けては、ともにマクラフランが今季6回目、7回目のポールを獲得する“週末予選ハットトリック”を決めると、2度のセーフティカーにも動じずウインカップ、クルサードを従えてレース2を完勝。そして最終ヒートのレース3は、一転ウインカップが後輪2本交換で見事なタイヤマネジメントを披露しマクラフランを逆転。今季2勝目、キャリア通算120勝目を飾り、3位には僚友の“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)が入っている。

急遽、フォードのシートを得た2位ジェームス・コートニー(左)は、COVID-19で活動休止となったウィル・デイビソンを思い、感極まる場面も
R3でもスコット・マクラフランを相手に再び際どいリリースを見せたジェイミー・ウインカップ陣営だが、こちらはお咎めなしの裁定に
土曜はトラブル続きだったSVGは、夜通しの修復作業が実りR3で表彰台までカムバック


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