EVプロトタイプの『フォルクスワーゲンID.R』、中国でのアタックに向けた新カラーを披露

2019年8月21日(水)10時52分 AUTOSPORT web

 PPIHCパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム参戦後は、電動車両のレコードブレイカーとして、世界各地で挑戦を続けている『フォルクスワーゲンID.R.』が、今度は中国での初アタックに挑戦。世界的景勝地である”天門山”でのタイムアタックに向け、新たにレッドをまとった新カラースキームを披露した。


 フルEVプロトタイプとして誕生した『フォルクスワーゲンID.R.』は、パイクスピーク参戦以降、ドイツ・ニュルブルクリンクの”グリーンヘル”ことノルドシュライフェや、イギリスで開催される世界的モータースポーツイベント、グッドウッド・フェステバル・オブ・スピードのヒルクライムコースなど、この15カ月で5つの場所で主要EVレコードを樹立してきた。


 その電動タイムアタッカーが次のターゲットとしたのは、中国湖南省に位置する景勝地、天山門に整備されたワインディングロードで、タイトなヘアピンを含む99のコーナーに挑むことになる。


「この先駆的なフル・エレクトリック・プロトタイプのID.R.は、今後フォルクスワーゲンが展開していく電動モビリティ、『ID.』ブランドのアンバサダー的存在でもある。2020年の中国市場導入に先駆けて、華々しいタイムアタックレコード樹立を期待している」と語るのは、フォルクスワーゲン・チャイナのCEOであるDr.ステファン・ウォーレンシュタイン。


「この9月の記録挑戦に向け、我々はこの『フォルクスワーゲンID.R.』に鮮烈なカラーリングを施す案を思いついた。完成したマシンを見ても、壮大な”チャイナ・チャレンジ”にふさわしいイメージになったと満足しているよ」


「これまでID.R.が記録してきた素晴らしいタイムアタックの数々により、フォルクスワーゲンのeモビリティに対する情熱と、さまざまな条件下での技術的可能性を証明できた。このID.R.が、中国の道を走る最初の”ID.ファミリー”ということになるだろう」

パイクスピーク、ニュル北コース、グッドウッドなど、多くのEVレコードを塗り替えてきた
約8年もの歳月をかけ、2006年に完成した中国湖南省の『Big Gate Road(天門山大門道路)』
この地でのタイムアタックは初の試みとなり、完走できればオーバーオールでの”最速記録”となる


 フォルクスワーゲン・モータースポーツは、すでに本拠地のドイツ・ハノーヴァーから同社初の試みとなる”鉄路”でマシンを輸送。ポーランド、ベラルーシ、ロシア、カザフスタンを経由し、はるか1万1000kmもの道のりを経て、シルクロードに沿って中国へと入国した。


 そして9月2日には、天門山に2006年に整備された『Big Gate Road(天門山大門道路)』でのタイムアタックに挑戦。8年の建設期間を経て建設された天空のワインディングは、全長11km、99のタイトコーナーからなり、131.5mもの高さを持つ天然の要害”Heaven’s Gate(天国の門)”をくぐり抜けながら、断崖絶壁を駆け抜ける。


 地元住民が敬意を込めて「空飛ぶドラゴン」と呼ぶそのワインディングで、ID.R.のステアリングを握るロマン・デュマは、「天門山とそのビッグゲートロードは、世界でも屈指の美しさと難易度を持つ峠だろうね」と、公道タイムアタックに向けた意気込みを語った。


「見事な自然の光景と、人間の手による道路建設技術が完璧に融合している。道幅は最小限で、コース脇にはわずかなブロックが点在するだけだ。レーシングスピードでこのワインディングを攻めるのは、ドライバーにとって本物の挑戦になるだろう。最大限の敬意を持って挑みたい」と続けたデュマ。


 荒れたサーフェスながら全舗装となる行程は、ターン88付近で道幅が5〜6mとコース最小幅に狭まり、ここがひとつの難所に。フォルクスワーゲン・モータースポーツによれば、このボトルネック部では約25km/h程度まで速度を落とす必要があるという。そのコーナー脱出後には500kW (680PS)の『フォルクスワーゲンID.R.』は、ストレート最長区間で約230km/hに達するだろう、とのシミュレーション結果を明かしている。

ドイツ・ハノーヴァーの本拠地を出発した『フォルクスワーゲンID.R.』は、同社初の試みとなる”鉄路”でマシンを輸送

ポーランド、ベラルーシ、ロシア、カザフスタンを経由して、はるか1万1000kmもの道のりを経て、シルクロードに沿って中国へと入国した
一貫して『フォルクスワーゲンID.R.』のステアリングを握ってきた、ワークスドライバーのロマン・デュマ


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