独自規定の電動ツーリングカー選手権を目指すSTCC、生産遅延を経て2024年まで導入延期へ

2023年8月25日(金)14時18分 AUTOSPORT web

 今季2023年より完全電動化を表明していたSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権は、初年度のグリッドに並ぶ全12台の新開発BEVレースカーの生産に遅れが続いていることを受け、次世代車両による新シーズン開幕を2024年まで延期する苦渋の決断を下した。


 各種EVコンポーネントの「製造遅延」によりカレンダー改訂を実施し、初年度は9月開幕の全3戦“短期集中決戦”に改めていたSTCCだが、その後もバッテリーシステムに関連するサプライチェーンの問題により納入が進んでいないことなどから、2023年“短縮版”シーズンそのものの開催も見直しを迫られることとなった。


 その次世代車両は、STCCの強豪PWRレーシングが運営する研究開発部門『EPWR』社が開発する電動パワートレイン“Kit(キット)”を組み込む計画で、最高出力550PS想定のモーターにより0〜100km/hは3秒以下、最高速も300km/hをマークする。


 全車リヤ駆動のキットには、800Vの高電圧を利用する45kWhのリチウムイオンバッテリーの搭載が予定され、サプライヤーには元WRCドライバーのマンフレッド・ストール率いる技術企業STARD(ストール・アドバンスド・リサーチ・アンド・デベロップメント)が指名されていた。


 参戦チームと車種バラエティもすでに発表されており、初年度は限定的ながらエクシオン・レーシングによる『BMW i4』を筆頭に、新興チーム・オートラウンジ・レーシングはフォルクスワーゲンの電動ブランドから『ID.3』を、同じくブリンク・モータースポーツはTCR時代のアウディから『テスラ・モデル3』へとスイッチ。


 そしてPWRレーシングは“セアト・ディーラー・チーム”として戦ってきた歴史も踏まえ、引き続きクプラブランドを代表して新型EV『クプラ・ボーン』の3台体制で挑むことが決まっている。


 これらのバッテリー、モーター、サスペンションなどはすべての車種でワンメイクとされ、これがコストを抑えて接戦を生み出すための基本方針とされていたが、シリーズ肝煎りで導入を目指した新型BEV車両はまだシェイクダウンを実施できる状況になく、その導入を2024年に延期すると同時に「この秋にも(完成第1号となる)新しい電動レースカーをお披露目する」計画が持ち上がっている。

初年度のグリッドに並ぶ全12台の新開発BEVレースカーの生産に遅れが続いていることを受けての措置となった


■STCCのベルンCEOが現状を説明「たゆまぬ努力を続ける」


 今回の決定に際し、STCCの最高経営責任者(CEO)を務めるミュッケ・ベルンは「残念ながら新型電動STCC車両の納期遅れが続いているため、レースシーズンの焦点を2024年に移し、代わりに2023年秋にも新車を披露することにした」と現状を説明した。


「2023年シーズンを予定どおり実施できなかったことについて、関係者全員と我々を応援してくださる方々にお詫びするほかない。これは先進的で画期的なプロジェクトだが、残念ながら部品の納期が遅れる可能性をつねに抱えているんだ」と語ったベルンCEO。


「我々は2024年に向けたゆまぬ努力を続けており、この画期的なベンチャーへのコミットメントを失うことはなく、マインドはむしろその逆だ。我々はEPWRとともに非常に強力なコンセプトを掲げてはいるが、残念ながら遅れをなくすことはできない」


「新しいレースカーの製造はまだ充分に進んではいないが、大きな進歩を遂げており、ファン、パートナー、そしてファンにまったく新しい世代のトップレベルの電動レースをお披露目できるようになるまで、そう長くは掛からないはずだ」


「我々としても、このオフシーズンと2024年の双方に向けて、可能な限り最善の解決策を見つけるべく、チーム、パートナー、ドライバー、主催者、スウェーデン・モータースポーツ連盟と緊密に協力し続ける」


 そう名前の挙がったスウェーデン・モータースポーツ連盟のアンナ・ノルドクヴィスト事務局長も「私たちはSTCCとEPWRによる、気候変動に配慮したトップレベルのレースへの投資を100%支持しており、遅延が引き起こした困難な状況のなか、最善の方法で彼らをサポートするために懸命に取り組んでいます」と続けた。


「私たちは2024年のセットアップに関してSTCCと良好な対話を行っており、他の注目度の高いスウェーデン国内の選手権と合わせて、魅力的で長期的な視野のカレンダーを策定するという希望を持っています」


「スウェーデンのトップレベルのレースに長期的かつ明確な進むべき道を見い出すことがこれまで以上に重要であり、STCCはその重要な部分を占めていることに変わりはありません」


 こうして来季スケジュールを最終決定する作業が進められるなか、プロトタイプとなる『PWR0002』は、今後のクヌットストープやマントープパークで開催されるイベントに登場する予定となっている。

「この画期的なベンチャーへのコミットメントを失うことはなく、マインドはむしろその逆だ」とSTCCの最高経営責任者(CEO)を務めるミュッケ・ベルン(右)

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