Dレンジで走れてタイムはMTと同じ。ORC ROOKIE GR Yaris DAT conceptがS耐もてぎに登場

2023年8月31日(木)19時27分 AUTOSPORT web

 9月2〜3日に、栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催されるENEOSスーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE第5戦『もてぎスーパー耐久 5Hours Race』は、8月31日に特別スポーツ走行がスタートしたが、ST-Qクラスに参戦するORC ROOKIE Racingは、この第5戦に向けて画期的なレーシングカーを投入してきた。『ORC ROOKIE GR Yaris DAT concept』という車名をもつ32号車GRヤリスは、車名内にもある『DAT(ダイレクト・オートマチック・トランスミッション』というATミッションを搭載している。初日の走行を終えドライバーに聞くと、驚くべきインプレッションを教えてくれた。


 ORC ROOKIE Racingは、スーパー耐久でTOYOTA GAZOO Racingとともに『もっといいクルマづくり』をコンセプトとし、開発車両が参加できるST-Qクラスを活用し、これまでさまざまな挑戦を続けてきた。特に意欲的な挑戦の舞台とされているのがMORIZO/佐々木雅弘/石浦宏明/小倉康宏という4人で参戦している32号車で、今季は液体水素を使用したORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptを投入。第2戦富士24時間では、事前に予定されていたポンプ交換をのぞけばトラブルなく完走し、第4戦オートポリスでも劇的な進化をみせた。


 ただ、液体水素のGRORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは第3戦には参加しなかったように、期間を設けて開発が進められている。今回の第5戦には液体水素車両は登場しなかったが、代わって意欲的なメカニズムを搭載したGRヤリスを投入してきた。


 これまでもチームはGRヤリスを走らせてきたが、今回投入されたORC ROOKIE GR Yaris DAT conceptは第3戦までとカラーリングも異なるとおり違う車両で、車名のとおり『DAT』を搭載している。TGRラリーチャレンジ等でテストが繰り返されてきたもので、開発に2年をかけてきたという。これまでスーパー耐久に登場してきたGRヤリスはもちろんMTだったが、この車両は通常のオートマ車と同じシフトノブ、そしてステアリング裏にはパドルシフトがつく。


 事前にテストも行ってきたドライバー兼32号車監督を務める石浦によれば、「走っているときにはDレンジに入れて、そのままです。でも例えばもてぎであれば、1コーナーにフルブレーキングして入っていくと、ブリッピングをしてシフトダウンしながら入っていく音がすると思います」という。


 このDATは、サーキットやドライバーによっても異なるシフトアップ/ダウンのタイミングの“最大公約数”をDATがプログラムで実行してくれるのだという。ドライバーがするのは、ステアリング操作とアクセル、ブレーキのみ。ドライビングに集中することができ、かつシフトアップ時に「計算上、いちばん最適な回転数のタイミングでアップしてくれるので、逆にロスがない」のだとか。


「ドライバーの意図を汲んだロジックを各サーキットなどで作ってきています。はじめのうちは、ここでシフトアップしてくれないと……とか、ここでアップしないでくれたら、など不満もありましたが、今はなんの不満もありません」と石浦監督。


 この日は佐々木からMORIZO、小倉と3人がステアリングを握ったが、ずっとDレンジで走っていたのだという。ラップタイムについては、MT時と「変わらない」ということも驚きだ。もちろん、コンディション変化などがあったりと変速を自ら行いたい場合、市販車同様シフトレバーを横に倒すとパドルシフトで走ることもできる。


 また、この日もてぎをドライブした佐々木によれば「マニュアルと比べて、速いか遅いかと言われると変わりません。僕はマニュアルミッションが得意なのでロスはありませんが、ただジェントルマンドライバーはクラッチを切って、アクセルを戻して……とやると、どうしてもシフトアップにラグがありますよね」という。


「でも、このDATはいちばん良いところでシフトアップをしてくれて、ラグもなくなり、動力が切れることもないので、プロが乗ってもアマチュアが乗ってもストレートスピードが変わらなくなるんです。MORIZO選手や小倉選手と僕たちのタイム差が、もっと詰まりました」


 そして佐々木も石浦も指摘するのは「足の不自由な方や、年齢を重ねた方でも、このGRヤリスのパワーで物足りない状況なくモータースポーツやスポーツドライブを楽しんでいただけると思います」ということだ。たしかにクラッチ操作をしない……というだけで、サーキットやラリーを楽しむためのハードルはかなり下がるだろう。


 今回投入されるORC ROOKIE GR Yaris DAT conceptで培われたものが、今後市販化に繋がるのかはまだ分からない。また技術面などの詳細は週末にもアナウンスされるはずだ。ただ、ドライバーたちのインプレッションだけでも、非常に楽しみな参戦であることはうかがい知れるだろう。ぜひ第5戦もてぎでは、そのエキゾーストノートから知ることができるシフトタイミングを、ST-2クラスのGRヤリスと聞き比べてみたいところだ。

2023スーパー耐久第5戦もてぎ ORC ROOKIE GR Yaris DAT conceptのステアリング
2023スーパー耐久第5戦もてぎ KTMS GR YARISのステアリング
2023スーパー耐久第5戦もてぎ ORC ROOKIE GR Yaris DAT concept
2023スーパー耐久第5戦もてぎ ORC ROOKIE GR Yaris DAT concept

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