世界最高の量と質、頼もしい新戦力…“優勝候補最右翼”マンCが悲願の欧州制覇へ

2019年9月10日(火)14時0分 サッカーキング

[写真]=Getty Images

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 イングランドは、完全に制圧したと言っていい。プレミアリーグ連覇、そして昨季はリーグの他にFAカップ、リーグカップを制して、史上初となる国内3冠を達成した。マンチェスター・Cは今や、イングランドの絶対王者である。今シーズンは、もちろん達成すればクラブ史上初となるプレミア3連覇も大きな目標ではあるが、より重要なターゲットはチャンピオンズリーグ(CL)制覇になる。

 英国の大手ブックメーカー『ウィリアム・ヒル』のオッズを見れば、シティは今季のCL王者の最右翼。優勝オッズ(9月8日時点)は「4.0倍」で、バルセロナ(6.0倍)や前回王者リヴァプール、ユヴェントス、レアル・マドリード(いずれも8.0倍)などを抑えて堂々のトップだ。

開幕から絶好調な2人の司令塔

 機は熟した。2016年夏にペップ・グアルディオラがクラブにやってきてから、今季が4シーズン目となる。ポゼッションとプレッシングで相手チームを制圧するスタイルは熟成の域に入っており、美しくデザインされた崩しのバリエーションは質、量ともに世界最高峰だ。ケヴィン・デ・ブライネとベルナルド・シルヴァによる右サイドの流れるようなコンビネーションで相手守備陣を切り裂き、左のラヒーム・スターリング、中央のセルヒオ・アグエロで仕留める形はまさに芸術。とりわけ昨季はケガで満足のいくシーズンを送れなかったデ・ブライネが今季はプレシーズンから絶好調で、開幕後もエンジン全開のプレーを見せており、シティの攻撃を昨季よりさらに華やかなものにしている。

 また戦況に応じて巧みに攻撃のテンポを操り、相手の嫌なところにポジションを取ってボールを受け、針の穴を通すようなスルーパスを放つダビド・シルバの職人技もいまだ健在。シティでのラストシーズンを明言しているD・シルバにとって、今季は集大成のシーズンであり、このチームでの欧州制覇を誰よりも願っているに違いない。D・シルバ、デ・ブライネという当代屈指の司令塔にしてチャンスメーカーの2人は、ペップ流ポジショナルプレーの要だ。彼らがフルコンディションでピッチに立っている限り、シティのゴールチャンスは決して枯れないだろう。そして、スターリング、アグエロという一流のフィニッシャーは確実にそれをゴールという数字に変換し続ける。それがたとえ、欧州最高峰のCLの舞台だったとしても。

唯一の不安はセンターバックだが…

 充実のアタック陣の顔ぶれはそのままに、この夏は中盤の底に頼もしい新戦力も迎えた。アトレティコ・マドリードからクラブ史上最高額の移籍金で獲得したスペイン代表MFロドリは、アンカーの位置で長らく「代役不在」と言われてきたフェルナンジーニョの後継者であり、まさに必要な箇所を的確に埋める“ピンポイント補強”だった。そのロドリは加入早々、シティのテンポのいいパスワークに順応し、ビルドアップの局面で存在感を示しており、さらに恵まれた体躯や長い手足を生かし、それだけに頼らない“読み”とポジショニングで守るディフェンスでもチームに貢献している。彼の加入で、もとよりシティの強みだった中盤はさらに強化され、より盤石になった。

 唯一、不安があるセクションを挙げるとすればキャプテンだったヴァンサン・コンパニが退団し、後釜にハリー・マグワイア(レスター→マンチェスター・U)を獲り逃がした上に、8月31日のブライトン戦でアイメリク・ラポルテが負傷離脱したセンターバックか。ラポルテは守備だけでなく左足から繰り出す縦パスで攻撃にも貢献するチームのキーマンで、膝を痛めて手術を受けたことによる長期の離脱はたしかに痛い。

 ただ、仮に彼がシーズン前半戦を“全休”するとしても、この夏の補強によって彼の穴を埋められる態勢は整っている。前述のロドリ獲得によってフェルナンジーニョをCBで起用することもできるし、また右サイドバックにユヴェントスからジョアン・カンセロを獲得できたため、カイル・ウォーカーを中央に回すこともできる。決勝ラウンドのいわゆるビッグマッチになれば守備に一抹の不安が残るかもしれないが、組み分けに恵まれたグループステージ(シャフタール、ディナモ・ザグレブ、アタランタと同グループ)をまず勝ち抜くだけなら、彼らの起用で十分にカバーできるはずである。

問われるのは“ここ一番”での勝負強さ

 グループステージで対戦するシャフタール、D・ザグレブ、アタランタはいずれも各国の好チームではあるものの、今のシティの実力を考えれば彼らを脅かす存在では決してなく、首位通過は固いと見ていい。シティにとってCLの“本番”は、ビッグクラブとホーム&アウェイの一発勝負で戦う決勝ラウンドに入ってからになる。昨季は、ベスト8でトッテナムと同国対決を戦い、4−4のアウェイゴール差で敗れた。特に第2戦の熾烈な撃ち合い(4−3)が印象深いが、第1戦(0−1)で鋭さを欠き、ゴールを奪えなかったことが痛かった。

 その前の2017−18シーズンは、こちらもベスト8でリヴァプールとの同国対決で、ゲーゲンプレッシングの真っ向勝負を挑んできたレッズにアンフィールドで0−3と破れ、2試合トータル1−5で完敗。2016−17シーズンはラウンド16でダークホースだったモナコと対戦し、初戦に5−3で勝って先手を奪いながら、第2戦を1−3で落としてアウェイゴール差で敗退する失態を犯した。

 それ以前はペップが来る前になるが、2008年夏の“アラブ革命”で財力を手に入れ、2011−12シーズンにCL初出場を果たして以降、最高成績は2015−16シーズンの準決勝進出(レアル・マドリードに2試合トータル0−1で敗北)で、決勝の舞台にさえ届いていない。

 チーム力は折り紙つき。あとは、“ここ一番”での勝負強さと、ビッグクラブとの接戦を勝ち切るしたたかさが必要になってくる。ペップ政権4年目を迎えたチームは、その命題を克服し、下馬評通りに欧州王座へとたどり着けるか。クラブが目論む真の黄金時代突入に向け、ビッグイヤーは絶対に必要なタイトル。今季こそ、彼らは欧州の頂点でトロフィーを掲げられるだろうか。

文=寺沢薫

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