レクサスとの提携が有力視されるASP、WEC参戦が実現ならGTWCヨーロッパの活動を一時休止か

2023年9月20日(水)12時40分 AUTOSPORT web

 先週末スペインのバレンシア・サーキットで行われた第8戦バレンシアで、2023年シーズン6勝目をマークしたアコーディスASPチームは、来季のWEC世界耐久選手権への参戦が実現した場合、ファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCヨーロッパ)での活動を一時休止する可能性がある。


 チーム代表のジェローム・ポリカンはSportscar365に対し、LMGT3へのコミットという目標が達成された場合、フランスのGTチームはWECプログラムの最初のシーズンのために、少なくとも1年は並行参戦を行わない意向であることを明かした。


 ASPは2011年の初年度からSROシリーズのグリッドで存在感を示し、エンデュランス・カップとスプリント・カップの両方で多数のタイトルを獲得している強豪チームのひとつだ。同チームは昨季2022年、ジュール・グーノンとラファエル・マルチェッロ、ダニエル・ジュンカデラを擁してスパ24時間レースを制し、勢いそのままに耐久シリーズでチャンピオンシップを獲得。また、GTWCヨーロッパのオーバーオールでもマルチェッロが王者となり、チームチャンピオンも獲得している。


 そんなアコーディスASPは既報のとおり、WECの新クラスとして2024年に登場するLMGT3で世界選手権にデビューすることを目指し、合意に向けてプッシュしている最中だ。ポリカンは以前、複数のGT3メーカーと交渉していることを明かしており、レクサスがその最有力候補であるとみられている。


 先週末のバレンシアで、ポリカンはLMGT3の契約は間近だが最終決定ではないことを示唆し、次のように付け加えた。「来シーズンのWECに参加していなければ、間違いなくがっかりするだろう」


 彼は、チームが可能性として挙がるWEC参戦と並行して、現在行っているGTWCヨーロッパのプログラムを継続する可能性は極めて低いと述べた。


「GT2は続けることができる。私にとってGT2はアマチュア選手権と言えるし、WECに参戦してもすべてを止めるわけではないからだ」


「我々はプライベートチームだし、顧客もいる。『よし、F1に入ったから、あとは全部忘れよう』とはならないんだ。だが、(WEC参戦)初年度はGT3でGTワールドチャレンジを戦うのは難しいだろう。それが私の意見だ」


 理由を尋ねられたポリカンはWECへのコミットにともなう要求の高さを挙げた。


「確実にプログラムを行うためにはメーカーのサポートが必要だ。プライベートチームとして、この種の選手権では(ロジスティクスの負担が)はるかに高くなるためだ」


「クルマを走らせることは、多かれ少なかれ同じだ。6時間や24時間レースだからね。しかし、ロジスティクスの面ではこれまでと大きく異なる。ミニ・フォーミュラ1のようなものだから人員が必要だし、組織的でなければならない」


「また、より高度なチャンピオンシップにステップアップする場合、たとえレースを知っていたとしても、初年度はつねに難しいものだ。だから、集中することと、(できるだけ)ミスをしないことを優先したいと考えている」


「WECに挑戦しながらGT4とGT2を続けて、またいつか(GT3で)GTワールドチャレンジに戻ってくる。私にとっては、このやり方が理にかなっている。でもWECが簡単だとは言えない。そうではないんだ」

2023年シーズンの8ラウンドを追えた時点で、スプリント・カップ4勝、エンデュランス・カップで2勝、都合6勝を挙げているアコーディスASPの88号車メルセデスAMG GT3エボ


■シルバーのままなら継続起用を検討


 ポリカンは、ASPがGT3プログラムをGTWCヨーロッパからWECに切り替えた場合に、ティムール・ボグスラブスキーの継続起用を検討していることを明らかにした。


 現在アコーディスASPチームで、スプリント・カップとエンデュランス・カップの両方でランキングリーダーとなっているボグスラフスキー。彼は2019年からフランスのチームに加わり、近年はマルチェッロとともにGT3プログラムの中核を担ってきた。


 ポリカンは、このロシア人ドライバーがFIA国際自動車連盟から現在与えられている“シルバー・グレーディング”を維持するのであれば、WECへの参戦を「確実に検討する」と述べた。


「私にとっては、彼がシルバーのままでいてくれれば、WECで非常に良い戦力になるだろう」


「なぜなら、彼のパフォーマンスとそれをマネジメントする方法を見れば、彼がGTで最高のシルバードライバーのひとりであることが分かるためだ。今や彼はGTワールドチャレンジで大成功を収めている」


「だから、もしWECに行くなら、彼をラインナップに加えたいと考えているが、可能性としては五分五分だろう」


「というのも、私は彼がGTワールドチャレンジのシートを探していることも知っているからだ。先程も言ったように、このふたつを両立させるのが難しいのは明らかだ。とくに最初のシーズンではね」


「もしWECに行くチャンスがあるなら、まず我々がやらねばならないことは1月の初めにコンテナを持って準備し、カタールに行くことだ」

スプリントカップ4勝目をマークしたラファエル・マルチェッロ/ティムール・ボグスラフスキー組(アコーディスASPチーム) 2023年GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ第8戦バレンシア

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