ハイレベルな痛み分け…大注目の“ノースロンドン・ダービー”を振り返る

2023年9月25日(月)16時1分 サッカーキング

ドローに終わったノースロンドン・ダービー [写真]=Getty Images

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 24日に行われたプレミアリーグ第6節、大注目のノースロンドン・ダービーは互いに一歩も譲らなかった。

 今季ここまで好調を維持する両チームの上位決戦は期待通りの好ゲームに。FWブカヨ・サカのシュートがDFクリスティアン・ロメロのオウンゴールを誘発してホームのアーセナルが先手を奪うも、トッテナムも負けじとMFジェームズ・マディソンが華麗なターンで左サイドをえぐってFWソン・フンミンのゴールをお膳立て。後半に入るとサカのPKでアーセナルが勝ち越すも、その98秒後に再びマディソン&ソン・フンミンのコンビでトッテナムが追いつき、2−2のドローに終わった。

 それでは見ごたえ十分だった白熱のノースロンドン・ダービーを詳しく振り返ろう。

[写真]=Getty Images

■実力拮抗



 昨シーズン、両チームには明らかな差があった。アーセナルが王者マンチェスター・シティと熾烈な優勝争いを演じて2位に入るなか、トッテナムはアントニオ・コンテ監督を解任するなど不振に喘いで8位でフィニッシュ。両チームの勝ち点差は実に「24ポイント」もあった。さらに直接対決でもアーセナルが2013−14シーズン以来となるシーズンダブルを達成し、完全に宿敵を見下ろしていたのだ。

 だが、トッテナムは今オフにアンジェ・ポステコグルー監督を招いて完全に生まれ変わることに。コンテ監督時には劣勢の試合で完全にカウンターに徹したスパーズだが、今回は敵地でのノースロンドン・ダービーでも最終ラインから丁寧なビルドアップを貫いた。「私は成功を収めるために、このサッカーをしている。見ていて楽しいサッカーを目指しているわけではなく、勝てるサッカーだと思ってやっている。どんなチームが相手でも自分たちのサッカーを信じないといけない」と、試合前に監督が宣言していた通り、トッテナムは“アンジェ・ボール”を貫いたのだ。

 前半、スパーズは27回も自陣でボールを失い、自陣ゴール前でエディ・エンケティアとガブリエウ・ジェズスに決定機をプレゼントしたが、それでも最後まで勇敢にプレーを続けて互角の戦いを演じ切った。結局、試合は「2−2」のドローで終了。シュート数も「13対13」のイーブン。スポーツ情報サイト『The Athletic』によると、第4審判から後半アディショナルタイム「10分」の発表があると、ホームサポーターだけでなくトッテナムのサポーターからも歓声が沸くほど、最後まで互いに勝利を信じて止まなかった。

■ケイン不在のダービー



 今回の試合は、9年ぶりにハリー・ケインが不在のノースロンドン・ダービーだった。今夏トッテナムからバイエルンへ移籍したイングランド代表キャプテンは、2015年2月に初めてノースロンドン・ダービーのピッチに立つと、以降は19試合連続でダービーに出場し続けた。そしてノースロンドン・ダービーにおける歴代最多ゴールとなる14ゴールを叩き出したのである。

 そんなストライカーがノースロンドンを去ったのだから、アーセナルからすれば天敵がいなくなったようなもの。試合が始まるとサポーターは「お前らがクソだからハリー・ケインは去った!」とチャントを送ってスパーズを揶揄したが、その野次を黙らせたのが新加入のMFジェームズ・マディソンと今季から腕章を巻く韓国代表FWソン・フンミンだ。2度もリードを奪われながら、その度に彼らの見事な連係で同点に追いついたのだ。

 ソン・フンミンは抜群の決定力で2ゴール。スパーズの選手がアーセナルとのアウェイでのリーグ戦で2得点するのは30年ぶりのことだという。スパーズは今節も複数得点をマーク。これでポステコグルー監督はプレミア史上4人目となる就任から6戦連続での複数ゴールを達成した監督となった。

■選手のレーティング



 シーズン序盤の大一番で高評価を得た選手もいれば「悪夢」と評される選手もいた。アウェイで堂々たるパフォーマンスを発揮したスパーズの選手たちは全体的に高い評価を得て、イギリス紙『イブニング・スタンダード』はこの試合最高の「9点」をFWソン・フンミンとMFマディソンに付けた。同紙は「昨季とは違う。2本の確実なフィニッシュで、すでに昨季のリーグ戦10点の半分を稼いでいる」とソン・フンミンを称え、マディソンについても「自陣深くでジェズスにボールを奪われたシーンは危なかったが、ファイナルサードで違いを生んだ」と綴った。

 アーセナルの最高点はFWブカヨ・サカの「8点」だった。「DFデスティニー・ウドジェを苦しめた。ロメロに当たったシュートで先制点をもたらすと、後半にはPKも沈めた」として、攻撃の起点となっていたウィンガーを絶賛。さらにDFウィリアン・サリバにも「トッテナムが裏に抜け出しかけたところを何度か見事なタックルで阻止」として「8点」を付けた。

 トッテナムで最低評価となったのはアルゼンチン代表DFクリスティアン・ロメロだ。前半にサカのシュートを触ってオウンゴールを喫すると、後半にはゴール前のハンドでPKを献上。1試合のうちにOGとPKを献上するのはプレミア史上11人目。トッテナムの選手としては初めてのことだった。それでも、失点シーン以外は好プレーを続けたこともあり、イギリス紙も「不用意に足を出してオウンゴールもPK献上は不運。難しい場面でも最後尾からパスをつなげ続けた」として及第点の「6点」を付けた。

 一方、アーセナルで低い評価を得たのはケガのMFデクラン・ライスに代わって後半から投入されたMFジョルジーニョだ。トッテナムの2点目につながる決定的なミスを犯した選手に対し、イギリス紙も「マディソンにボールを奪われる悪夢の瞬間。相手に圧倒される苦しい45分間に」として「4点」を付けた。それから見せ場を作れなかったFWエンケティア、後半から登場しながらインパクトを与えられなかったMFカイ・ハフェルツには「5点」が付けられた。

■どちらも負けたドローゲーム?



 勝者も敗者もいないドローゲームだが、選手の状態次第では“どちらも敗れたノースロンドン・ダービー”として記憶されるかもしれない。というのも、両チームとも主軸を失う可能性があるのだ。

 アーセナルは新戦力のイングランド代表MFデクラン・ライスがケガのためハーフタイムに交代。「ライスは腰に違和感があり、前半のうちに私たちに訴えていた。ハーフタイムに様子を見たがプレーを続けられなかった。彼のような選手が自ら交代を申し出るのはおかしいので検査する」とミケル・アルテタ監督は明かしており、アーセナルサポーターは不安で眠れない数日を過ごすことになる。

 ライスは前節まで「走行距離」「タックル+インターセプト」「ボール運び」の全てにおいてチーム最多の数字を誇っており、この試合でも圧倒的な存在感を発揮した。前半、アーセナルのハイプレスをトッテナムがかいくぐったと思った瞬間、ライスが現れて敵選手を潰したのだ。広範囲をカバーできる彼の走力は替えがきかず、ライスが退いた後半はトッテナムが中盤を支配し始めた。

 対するトッテナムも大きな痛手を負ったかもしれない。新戦力のウェールズ代表FWブレナン・ジョンソンが60分過ぎにハムストリングを押さえて交代したのだ。前半の決定機こそ決めきれなかったジョンソンだが、それでも自慢のスピードと足技を披露して新天地での初スタメンにしては上々の出来だった。今季のスパーズはFWソン・フンミンを前線の中央に固定するため、サイドもこなせるジョンソンのような万能型フォワードは貴重なので、彼が長期離脱にならないことを願うばかりだ。

 そして、何より心配なのはMFマディソンである。ソン・フンミンの2得点をどちらもアシストしたマディソンは、これでプレミアリーグのアウェイゲームは最近22試合で21点(10ゴール11アシスト)に直接関与したことになる。だが、後半途中にMFジョルジーニョとの接触で右ひざを痛めてピッチにうずくまると、10分ほどプレーを続けてから交代した。何も問題なければよいのだが、マディソンはレスターに所属していた昨季も右ひざを痛めている。昨年ワールドカップでは代表メンバーに選ばれるも直前のひざのケガで1度も試合に出られず、カタールの滞在先のホテルで「なぜ今なんだ…」と葛藤したことを明かしている。



 大したケガでなければよいが、試合後にはマディソンのひざが変な角度で曲がった画像がネット上に出回っており、スパーズファンも不安な数日を送ることになりそうだ。

 果たしてノースロンドンの両雄は、好調を維持して優勝争いに絡めるのだろうか? 成長を続けるアーセナルと新生トッテナムに今後も注目したい。

(記事/Footmedia)

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