ミランのハイプレスを打破。劣勢になりかけたチェルシーを救ったのは【CL試合分析】

2022年10月12日(水)21時19分 FOOTBALL TRIBE

フィカヨ・トモリ(左)ジョルジーニョ(右)写真:Getty Images

2022/23シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ・グループステージ第4節が10月12日(日本時間)に行われ、ミランとチェルシーが対戦。


前半21分に、チェルシーのMFジョルジーニョがPKを成功させると、同34分にはMFメイソン・マウントのスルーパスを受けたFWピエール・エメリク・オーバメヤンがペナルティエリア内でシュートを放ち、追加点をゲット。同クラブが2-0でミランを下している。


今節の勝利により、グループEの首位に躍り出たチェルシー(勝ち点:7)。いかにしてミランの守備を掻い潜り、試合の主導権を手繰り寄せたのか。両軍のハイレベルな攻防を振り返りながら分析する。




ミランvsチェルシーのスターティングメンバー

ハイプレスでチェルシーに襲いかかったミラン


キックオフ直後から、基本布陣[3-4-2-1]のチェルシーに対しミランが[4-1-2-3]の守備隊形でハイプレスをかける展開に。


ミランは10月9日(日本時間)のユベントス戦と同じく、相手のパスワークのキーマンをマンツーマン守備で捕捉。右インサイドハーフのサンドロ・トナーリがチェルシーの2ボランチの一角ジョルジーニョを、左インサイドハーフのラデ・クルニッチが同じくボランチのマテオ・コバチッチを追跡した。


チェルシーの右センターバック、トレボ・チャロバーには左ウイングFWのラファエル・レオンが、左センターバックのカリドゥ・クリバリには右ウイングFWのブラヒム・ディアス、3バックの中央を務めたチアゴ・シウバにはセンターFWのオリビエ・ジルーがチェイシングする構えを見せ続ける。ミランの緻密なハイプレスにより、チェルシーの面々は自陣に釘付けになりかけた。


ミランのマンツーマン守備

チェルシー陣営は自陣で無理にショートパスを繋がず、GKケパ・アリサバラガへのバックパスを多用。前半7分08秒にはこのスペイン人GKがクリバリからのパスを受け、右サイドへロングフィード。このボールに右ウイングバックのリース・ジェイムズがヘディングで反応し、同サイドからの速攻になりかけたほか、同7分36秒にもクリバリからジェイムズへのサイドチェンジのパスが繋がる。この直後にジェイムズとマウントが互いのパス交換で右サイドを攻略し、前者が最前線のオーバメヤンへロングパスを送った。ケパ、クリバリ、ジェイムズの好プレーによりミランのハイプレス攻略の糸口を掴んだチェルシーが、徐々に試合を掌握していく。この3人が、劣勢になりかけたチェルシーを救ったと言って差し支えないだろう。


ミラン DFフィカヨ・トモリ 写真:Getty Images

ターニングポイントとなったチェルシーのPK獲得シーン


試合の潮目が決定的に変わったのが、前半16分40秒以降のチェルシーの攻撃。センターサークルのやや後方でラヒーム・スターリングからのパスを受けたコバチッチが、ミランの最終ラインと中盤の間に巧みに立ったベン・チルウェルに縦パスを送る。その後ジョルジーニョから右サイドのジェイムズにパスが繋がると、同選手がミランの最終ラインの背後にスルーパスを出し、これにマウントが反応。背後を突かれたミランのDFフィカヨ・トモリがペナルティエリア内でマウントを倒したことで、チェルシーにPKが与えられた。


トモリのホールディングの反則が決定的な得点機会の阻止と判断され、同選手にはレッドカードが提示されることに。PKを物にされたミランはビハインドを負っただけでなく、10人での戦いを余儀なくされた。


チェルシー MFジョルジーニョ 写真:Getty Images

ミランの最終ラインと中盤が間延びしたのを見逃さなかったチルウェルとコバチッチに、右サイドへ素早くボールを送ったジョルジーニョ。そしてトモリの背後を突く正確なパスを繰り出したジェイムズや、そこへ懸命に走ったマウントによって得られた前述のPK。練度の高いチェルシーのパスワークが実を結んだ瞬間だった。




トモリ退場後のミランの隊形([4-4-1])

凶と出たミランの賭け


トモリの一発退場を受け、ミランのステファノ・ピオリ監督はクルニッチを右サイドバックに移し、基本布陣を[4-4-1]に変更。左サイドハーフのレオンが時折ジルーの隣に上がり、[4-3-2]の隊形でハイプレスを試みる場面もあったが、この賭けは凶と出た。


レオンが前線に上がることで生まれた左サイドのスペースをジェイムズらに突かれ続けたほか、前半32分50秒以降には[4-3-2]の3セントラルMFが右サイドに寄ってプレスをかけたものの、ボールを奪いきれず。マウントの浮き球によって密集を掻い潜られると、最終的にはセンターバックのマッテオ・ガッビアと左サイドバックのテオ・エルナンデスの間を突かれ、オーバメヤンにゴールを奪われている。[4-3-2]の泣きどころである、3セントラルMFの横のスペースを使われてしまった。


トモリ退場後のミランの隊形([4-3-2])

トモリの退場によりゲームプランが狂い、悔やまれる一戦となったミランだが、悲観する必要はないだろう。試合序盤に仕掛けたハイプレスが概ね機能していたほか、前半26分10秒以降の攻撃では、自陣ペナルティアーク内でイスマエル・ベナセルが左サイドのエルナンデスにパス。その後エルナンデスが敵陣までボールを運ぶと、ディアスの右サイドからのクロスにジルーが反応し、惜しいヘディングシュートを放っている。10人になった後も、質の高い攻撃を随所に繰り出していた。


現在、勝ち点4でグループEの3位に沈んでいるものの、第5節と6節で連勝を収めれば決勝ラウンド進出が確定する。今節披露した獰猛なハイプレスと練度の高いビルドアップを、ディナモ・ザグレブやザルツブルク相手にも披露できるか。“ロッソネロ”(赤と黒。ミランの愛称)が残り2節で貫くべきことは明確だ。

FOOTBALL TRIBE

「チェルシー」をもっと詳しく

「チェルシー」のニュース

「チェルシー」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ