神戸の適応力の高さに屈した湘南。今後突き詰めるべきは【J1試合分析】

2022年10月13日(木)19時39分 FOOTBALL TRIBE

茨田陽生(左)大迫勇也(右)写真:Getty Images

明治安田生命J1リーグの第27節(延期分)が10月12日に行われ、ヴィッセル神戸と湘南ベルマーレが対戦。後半21分に、神戸のMF汰木康也が蹴ったコーナーキックにFW大迫勇也が右足で合わせ、先制ゴールをゲット。その後も守備面で集中を切らさなかった神戸が1-0で湘南を下している。


破竹の5連勝でJ1リーグ残留に大きく前進した神戸。いかにして湘南の攻撃を受け止め、勝ち点3をもぎ取ったのか。まずはこの点について言及する。




J1第27節、神戸vs湘南のスターティングメンバー

的確だった守備隊形の使い分け


神戸の基本布陣は[4-1-2-3]。インサイドハーフの小林祐希が湘南のアンカー茨田陽生を捕捉し、武藤嘉紀と汰木の両ウイングFWが、相手の左右のセンターバック杉岡大暉と舘幸希に睨みを利かせる。特に武藤の出足は鋭く、湘南の左ウイングバック中野嘉大へのパスコースを塞ぎながら杉岡にアプローチしていた。


決勝ゴールはコーナーキックから生まれたが、神戸の最大の勝因は、守備隊形を的確に使い分けたことに尽きる。


湘南がセンターサークル近辺でボールを保持した際は、[4-4-1-1]([4-4-2])の守備隊形に移行。このときも小林祐希が茨田をマークしたほか、4バックでは埋めにくいセンターバックとサイドバックの間やハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)を、大﨑玲央と山口蛍が降りてカバーリング。ハイプレスのみならず、自陣への撤退守備の段取りも整備されていた。


神戸の自陣撤退守備

直近のリーグ戦でも逃げ切り策として用いた[3-4-2-1]([5-4-1])の布陣も、湘南相手に威力を発揮。後半アディショナルタイムにFW大橋祐紀にヘディングシュートを放たれたものの、この場面以外は湘南陣営のクロスを危なげなく跳ね返している。湘南にボールを保持される時間帯もあったなか、神戸が堅実な試合運びを見せた。




ヴィッセル神戸 FW大迫勇也 写真:Getty Images

今や神戸はオールマイティ型のチームに


今の神戸の強みは、一つひとつの試合における適応力の高さだろう。


この試合のスターティングメンバーに着目しても、しなやかなボールキープが持ち味の大迫と汰木に、フィジカルコンタクトや空中戦に長ける大﨑と菊池流帆。無尽蔵のスタミナを活かし、敵陣と自陣を行き来できる武藤、山口、酒井高徳など、選手の特長が様々。故に試合の性質に応じて、ボールポゼッション重視型と堅守速攻型のどちらにも振る舞える。


今回の湘南戦のように、ハイプレスと自陣撤退守備を臨機応変に使い分けることも可能。多様な個性を活かし、その時々で必要な戦い方を選べるオールマイティなチームは、対戦相手からすると捉えどころが無く、これが戦いにくさに繋がっているのかもしれない。あらゆる状況に対応可能なメンバー編成や布陣選択を行った、吉田孝行監督の手腕の賜物とも言えるだろう。


湘南ベルマーレ MF茨田陽生 写真:Getty Images

湘南が今後突き詰めるべきは


J1リーグ残留に向けて手痛い黒星を喫してしまった湘南だが、神戸を相手に手も足も出なかったわけではない。アンカーの茨田が相手の徹底マークに晒されながらも、良い攻撃を繰り出せていた。


神戸陣営のハイプレスに対し、湘南は自陣後方からのロングパスやサイドチェンジのパスに活路を見出す。前半7分47秒に、左センターバックの杉岡から右ウイングバックの古林将太へのロングパスが通ったほか、同10分30秒にもGK谷晃生から阿部浩之へのロングフィードが繋がり、右サイドからの攻撃に発展。同13分10秒には右センターバックの舘から左ウイングバックの中野、この直後にも杉岡から古林へのロングパスが繋がっている。相手の守備隊形を広げる有効な攻め手だっただけに、これをもう少し徹底しても良かった。


また、この試合では相手最終ラインと中盤の間に送り込まれる縦パスも効果的だった。


前半21分05秒以降の攻撃では、神戸の最終ラインと中盤の間に立っていたFWウェリントンに、茨田からの縦パスが通っている。ボールはウェリントンから右サイドの古林に渡り、同選手のクロスは逆サイドに流れるも、その後の2次攻撃から茨田が強烈なミドルシュートを放っている。相手を中央に密集させ、これにより生まれるサイドのスペースを突いた良いパスワークだった。


湘南が今後突き詰めるべきは、相手最終ラインと中盤の間にパスが通った直後に、サイド攻撃と見せかけて中央突破を仕掛けることだろう。


湘南ベルマーレ FWウェリントン 写真:Getty Images

ウェリントンへの縦パスが繋がった前述の場面では、相手のセンターバック小林友希と左サイドバックの酒井の間が一瞬開いている。ウェリントンの近くに立っていたタリクがここへ走り込み、パスを受けていればより大きなチャンスに繋がっただろう。J1残留に向け、中央突破の質も高めたいところだ。


「いつも練習でやっていますけど、相手の間を取ってそこに(パスを)差し込んでいくというのはやりたいサッカーでもありますし、そこはリスクと隣り合わせというか、勇気を持っていけるかどうかだと思っています。そこがなくなったらダメですし、自分たちがやりたいサッカーではなくなるので、精度というところはこだわりながら、勇気というのは持たないといけないと思います」


湘南のDF山本脩斗は神戸戦終了後のコメント(同クラブ公式ホームページより引用)で、今後も密集地帯への縦パスの質にこだわることを明かしている。今季のリーグ戦残り2試合に向け、どれほどパスワークの練度を高められるかに注目したい。

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