ホンダ田辺TDインタビュー:共通パーツで莫大な開発費が減少へ。2021年新規約はパワーユニットのコスト削減に効果あり?

2019年11月2日(土)18時37分 AUTOSPORT web

 2021年の新レギュレーションが10月31日に発表。シーズン最大開催数が25戦に拡大されスタッフの負担が予想される。今後の状況を見据えたホンダの対応、そして2021年からはパワーユニット(PU/エンジン)の規則について田辺豊治テクニカルディレクターに聞いた。


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──2021年の新レギュレーションでは、最大年間25戦開催、その代わりに1GP4日間だったのが3日間に短縮されます。ホンダとしてはそれらの対応は、すでに決まっていますか?
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):
これからの検討課題ですが、チームがどう戦うかとも絡んでくる。なのでチーム側の運営方法と、スリ合わせる必要がありますね。


 単純に人員を増やすとか、どうするかはまだ未定です。サーキットを出る時間も今までよりずっと早くなるとか、他にもいろいろ変更点がありますし。


 最大25レースとなると、やはり増員方向かもしれません。ただ絶対数を増やすというより、スキルのある人を充実させて、交代制にするというイメージでしょうね。


 25戦全部行くのは、心身ともにキツイですからね。キーになる人材は仕方がないですが、あとは交替しながらやり繰りして行く。人数を増やすというより、層を厚くする必要があるでしょう。

2019年F1第19戦アメリカGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)


──レース数が増えることによって、パワーユニットの年間基数制限も変わりますか?
田辺TD:
2020年は22レースですよね。それに関しては、今年と変わらずで年間3基です。2021年以降、23とか24、25レースになった場合も、すでに合意はできています。


──パワーユニットは、現行より5kg重くなり、さまざまな共通パーツを使うとのことです。それに対してホンダの評価は?
田辺TD:
これもメーカー4社とFIAが協議を続けてきた中で、全員が合意して決まったことです。


──それによって、本当にメーカー側のコストは減るんでしょうか。
田辺TD:
いろんな議論があります。メーカーによって、スタンスも違う。ただコスト削減の方向にあることは確かです。例えていうなら今まで200円かかっていたのが、半額の100円にはならないにしても、198円とかにはなるでしょう。


──莫大な削減ではないのでは?
田辺TD:
莫大には下がらないですが、今後は莫大な開発を継続しないで済む。材料費も含めてですね。そういう考えです。


──現行規約が概ねそのまま続くことが、一番のコスト削減になっているのではないですか?
田辺TD:
それは、やりよう次第ですね。規約が変わらないから、何も開発しないとは限らない。その中で大きなステップアップしようと思ったら、当然お金はかかりますから。


2019年F1第19戦アメリカGP ホンダ田辺豊治F1テクニカルディレクター

──ダイナモの制限もあります。これもコスト削減に効果的ですか?
田辺TD:
テスト時間の削減で、使用台数も減る。するとコスト削減には、直結しますね。燃料費や人件費、電気代も減ります。


──たとえていうと、200円がどれくらいに?
田辺TD:
170円くらいでしょうか。


■無制限の開発に歯止めを狙う2021年の新規約


──それは、けっこう大きいですね。
田辺TD:
さきほどの1円、2円に比べれば、確かにそうです。無制限の開発に歯止めを掛けるという、象徴的な意味合いのある規制だと思います。


 ただ単気筒の開発は制限されてませんし、CFD(数値流体力学解析)などのシミュレーション系も制限はない。ですがホンダとしては今後、テスト効率をさらに上げて行くとか、賢いやり方を進めて行くつもりです。開発スタイルを変えるということですね。


 昔のように、とりあえず作って、とにかく回すというところからは、すでにかなり変わってきている。その流れを、さらに加速させるということですね。


 机上できちんと評価して、モノを厳選して、単気筒テストを効率良く、賢く行って、V6で最終確認というようなやり方にしていく。ベンチでの確認手法にしても、今以上に精度を上げる必要はありますね。


──これまで行われてきた年間基数制限は、実際のところどれほど効果があったんでしょう?
田辺TD:
どうでしょうね。というのもわれわれが参入した時には、すでに基数制限が導入されてましたから。徐々に絞られて行った時期を知っていたら、もう少ししっかりお話しできたと思うんですが。


 パワーユニットは長く使おうとすると、どうしてもお金がかかる部分がある。たとえば同じ重さのパーツで、同じ機能で、なおかつ長持ちさせようとしたら、より高価な材料を使うしかない。


 その損益分岐点というか、クロスオーバーをどこでさせるかの見極めも難しい。パーツによっても違いますけど、年間3基と言われてたのを2基にすることになった。そのために材料を替えたら、テストも重ねないと行けなかったりして、結果的に高く付きかねない。2基の方が、よほどお金がかかるということになりかねない。基数制限を厳しくすればいい、というものではないと思いますね。


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