第71回マカオGPの基礎知識/車両編:史上初のFRワールドカップを戦うパッケージと予想タイム

2024年11月5日(火)10時51分 AUTOSPORT web

 11月14〜17日にマカオ市街地のギア・サーキットで開催されるマカオGP。第71回目を迎える今年は、史上初めてFIAフォーミュラ・リージョナル・ワールドカップ(FRワールドカップ)がメインレースとして行われる。


 本稿では日本チーム、日本人ドライバーも参戦するFRワールドカップの参戦車両に関する基礎知識をお届けする。


* * * * * *


 フォーミュラ・リージョナル(FR)はFIA国際自動車連盟がジュニア・フォーミュラの改革を進めるなか、各国・各地域のFIA F4シリーズと、F1のサポートレースとして開催されているFIA F3の橋渡しをするカテゴリーとして2018年よりスタートした。2024年は日本、ヨーロッパ、アメリカ、中東、オセアニアでシリーズ戦が繰り広げられており、世界中で約92人のドライバーが参戦している。


 現在はイタリアのタトゥースがヨーロッパ選手権、中東選手権、オセアニア選手権に。フランスのリジェが北米選手権に、日本の童夢が日本選手権(FRJ)にシャシーを供給。エンジンは地域によりアルピーヌ、アルファロメオ、トヨタ、ホンダ。タイヤはピレリ、ハンコック、ジーティー、ダンロップが供給しており、同じFRといえど各シリーズはそれぞれのパッケージでシリーズを展開してきた。

2023年フォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ 第1戦イモラのスタート


 そんななか、2024年よりFIA F3に代わりFRがマカオGPのメインレースとして開催されることとなった。FRワールドカップもシリーズ戦同様にワンメイクで行われることとなり、シャシーはタトゥース社の『T-318』、エンジンはアルファロメオ(オートテクニカ・モトーリ)、タイヤはピレリへと統一されることになった。したがって、FRJを戦ってきたTOM’S、TGM Grand Prixは経験のある童夢製シャシーではなく、タトゥース製シャシーを新たに用意し、マカオGPに臨むことになった。


 下記の表組を見ていただくと分かるとおり、現行ではタトゥース、アルファロメオ、ピレリというFRワールドカップと完全に同じパッケージで行われているシリーズは存在しない。ただ、本パッケージは2021年シーズンまでフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ選手権(2022年からはアルピーヌが供給)で使用されていたこともあり、やはりヨーロッパ勢に利がありそうだ。


■2024年フォーミュラ・リージョナル採用パッケージ








































地域シャシーエンジンタイヤ
欧州タトゥースアルピーヌピレリ
中東タトゥースアルファロメオジーティー
オセアニアタトゥーストヨタピレリ
北米リジェホンダハンコック
日本童夢アルファロメオダンロップ


2024年フォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ エンツォ・デリニー(R-ace GP)

 昨年までのFIA F3によるワールドカップを見てきたレースファンにとって気になるのは、FRがギア・サーキットでどれほどのラップタイムで走るかという点だ。


 過去の予選タイムを見てみると、2023年にFIA F3マシン(ダラーラ製シャシー/メカクローム製3.4リッターV6自然吸気/380馬力)がフロント250/575-13、リア290/590-13というピレリタイヤを履いて2分5秒〜9秒だった。


 同じく2023年に行われたマカオF4レースでは、タトゥース製シャシーにアバルト製1368cc直列4気筒ターボ(180馬力)にフロント180/550-13、リヤ240/570-13のジーティー製タイヤを履いて2分24秒〜47秒(107%は2分38秒722)だ。


 当然走行当日のコンディションに左右されるとはいえ、FIA F3とFIA-F4の橋渡しをするFRマシン(270馬力)なだけに、2分14秒〜16秒あたりのタイムを刻むのではないだろうか。走行初日(11月14日/木曜日)から各車のラップタイムに注目しておきたいところだ。

2019年第66回マカオGP FIA F3マシンで2分4秒997のコースレコードを記録したユーリ・ビップス(ハイテックGP)


 なお、マカオGPのコースレコードはFIA F3規定で開催された2019年にユーリ・ビップス(ハイテックGP)が記録した2分4秒997となる。再び規定が大きく変わることがない限り、ビップスのタイムがギア・サーキットのコースレコードとして刻まれることになりそうだ。


 また、2003年にはマカオGP50回記念イベントとしてラルフ・ファーマンがジョーダン・フォードのF1マシン『EJ13』でデモランを行い、非競技イベントながら1分55秒714をマークしている。今後もし、最新F1マシンがギア・サーキットを走る機会が実現すれば、どれほどのタイムを記録するだろうか。


 ギア・サーキットのコースレコード、各カテゴリーのレコードラップ(決勝中のファステストラップ)、そしてフォーミュラ・リージョナル車両、タトゥースT318のスペックシートは下記のとおりだ。


■マカオGP/ギア・サーキットのコースレコード


2分4秒997(2019年/ユーリ・ビップス/ダラーラF3 2019)
非公式:1分55秒714(2003年/ラルフ・ファーマン/ジョーダンEJ13・フォード)


■参考:マカオGP決勝ファステストラップ記録/編集部調べ


FIA F3:2分6秒647(2023年/ルーク・ブラウニング/ダラーラF3 2019)
2輪車:2分23秒616(2010年/スチュワート・イーストン/カワサキ1000cc)
ギア・レース:2分27秒009(2014年/ロブ・ハフ/ラーダ・グランタ1.6T/WTCC)
マカオGTカップ:2分17秒182(2019年/アール・バンバー/ポルシェ911 GT3 R/FIA GT3

2003年第50回大会を記念し、ジョーダンのF1マシンがデモ走行。ラルフ・ファーマンの手で1分55秒714をマークした


■フォーミュラ・リージョナル車両/タトゥースT318概要
















































































































フロントトラック1575mm
リヤトラック1530mm
ホイールベース2900mm
全長4855mm/Max
全幅1850mm/Max
全高950mm (基準面から)
シャシーAl/Nomexハニカム複合カーボンファイバーサンドイッチ
ホモロゲーションFIA F3/2019 (Ann.J Art.273)
ボディワークカーボンファイバー
フロントサスペンションプッシュロッド/ツインダンパー/スプリング
リヤサスペンションプッシュロッド/ツインダンパー/スプリング
スプリングアイバッハ製 36mm
ダンパーコニ製
ブレーキブレンボ製
タイヤピレリ製フロント230/570-13/リア300/590-13
ホイールOZレーシング製
エンジンオートテクニカ・モトーリ(アルファロメオ製)
エキゾーストAros製
電気系マレリ製
ギヤボックス6レシオ/サデフSLR82
ギヤシフトマレリ製電動シャフトアクチュエータ
ステアリングホイールタトゥース&ネクストソリューション社製
バッテリーDEKA製
安全燃料タンクPREMIER社 FT-5
シートベルトサベルト製
消化器OMP製


※上記表はタトゥース社T318テクニカルマニュアルをもとに作成

タトゥースが開発したフォーミュラ・リージョナルマシン『T-318』
2023年フォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ王者に輝き、FIA F2を経て2025年のF1昇格を決めたアンドレア・キミ・アントネッリ(プレマ・レーシング)


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