化石燃料ゼロのカーボンニュートラル・フューエル合同テストが開催。現状は最高速で3〜5km/h減のパフォーマンス

2022年11月7日(月)18時15分 AUTOSPORT web

 スーパーGTで初となる、化石燃料ゼロのカーボンニュートラル・フューエル(CNF/バイオマス由来の非化石燃料)を使用した合同テストが11月7日、シーズン最終戦が終わった翌日のモビリティリゾートもてぎで開催され、GT500車両13台、GT300車両9台の22台が参加して快晴のもと行われた。CNFは来季から全戦で導入が予定されているだけに、早くも2023年の戦いに火蓋が切られたかたちとなった。


 スーパーGTでは、2030年までにシリーズ全体のCO2排出量半減を目指した環境対応ロードマップ『SUPER GT Green Project 2030』を発表し、シリーズ全体のカーボンニュートラル(CN)化を推進。2023年からの全車両でのCNF導入に向けて、ドイツのハルターマン・カーレス社製『ETSレーシング・フューエル』というCNF燃料が使用されることが明らかになっている。

2023年のスーパーGTで導入される予定のドイツのハルターマン・カーレス社製『ETSレーシング・フューエル』 ドラム缶200リットルがチームごとに供給された


 午前2時間、午後2時間、合わせて4時間のセッションとなった今回のテストはCNFが1チームにつきドラム缶1缶分の200リットル分が供給され、同時に通常のハイオクガソリンの使用も可能なため、両方の燃料を交互に使用して比較するチーム、または午前と午後のセッションで使い分けるなど、チームによってさまざまなかたちでCNFが使用される状況となった。


 また、今回のテストで使用できるタイヤは、第8戦もてぎ戦からの持ち越しタイヤが4セット、そして今回のテスト用に1セット追加の5セットで走行。実際は第8戦でニュータイヤはほぼ使い切っているため、細かなタイヤテストは難しい状況となった。


 午前のセッション終盤には、衆議院委員議員の山本左近氏を始めとした自由民主党モータースポーツ振興議員連盟の方々が10名ほどサーキットに来場。山本左近氏の先導のもと、トムス、ニスモ、ARTAのピットを訪問し、スーパーGTマシン、そしてドライバーやスタッフの声に耳を傾け、その後、GTアソシエイション坂東正明代表から今回のとえい話し合いが行われた。

衆議院委員議員の山本左近氏が先導する形で、トムス、ニスモ、ARTAのピットを視察した自由民主党モータースポーツ振興議員連盟の先生たち


 また、走りはじめではホンダ陣営のエンジン音にバラツキが見られれたが、「実走テストでの適応に最初、少し手間取りましたが、修正して他社と同レベルに走れるようになりました」とHRC佐伯昌浩GTプロジェクトリーダーが話すように、GT500クラスではホンダをはじめ、トヨタ、ニッサンともに大きな問題はなく走行を重ねることができたようだ。23号車MOTUL AUTECH Zのロニー・クインタレッリも、「言われなければ分からないくらい、違和感はありませんでした。すごいなと思いました」とCNFの印象を話した。


 GT300クラスについても、「言われても違いがわからないくらいで、パワーをロスしている印象もありませんでした」と、61号車SUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人が話すように走りはじめから問題なく走行し、午前にCNFを使い切って午後のセッションは走らずに走行を終えるチームも見られた。


 今回のテストのおもな目的は、各メーカーでの実走での確認とともに、GT500とGT300車両のタイム差が相対的にどのように変わるのかの確認も重要な項目となっていた。もともとCNFはハイオクに比べて発熱性が低く、パフォーマンスが若干落ちることは予想されていたが、その確認もひとまず無事にできたようだ。


 実際、今回のテストではCNFとハイオクガソリンでの走行が入り交じって走行したため、リザルト表の順位があまり意味を持たないが、関係者によるとGT500車両で最高速で3〜5km/h、ラップタイムで1秒程度、CNFはハイオクガソリンとの比較で遅れていたようだ。ここから開幕まで、エンジンマッピングの最適化や改良などで、ハイオクガソリンのパフォーマンスにどこまで近づけるかが、来季の勝負どころのひとつになる。


 そしてもちろん、初めて使用する新燃料だけに、すべてがいいことばかりというわけではない。今回のテストで唯一課題が挙げられるとするならば、排気ガスの臭いのキツさか。


 CNFはパフォーマンス的、エンジンの技術的には大きな問題はないことは明らかになったが、ドライバーからは走行中に前のクルマからコクピットに入った排気ガスを気にする声、メカニックからはガレージ内で充満する臭いに体調不良を心配する声が聞こえた。実際、ピットロードやガレージ裏で取材をしている時でも、言葉では表現しづらいが、ガソリンとは異なる強い臭いが漂ってきていた。


 CNFの排気ガスの強烈な臭いはもしかしたら今後、機会を重ねていくと慣れてくるのかもしれないが、スーパーGTが先駆者としてCNFの開発を進め、今後、一般車に使用する展開を考えると、環境への安全性の検査とともに人体への影響についてもしっかりとした検査が必要になるかもしれない。


■スーパーGT CN燃料テスト 参加車両/11月7日モビリティリゾートもてぎ
【GT500クラス】
#3 CRAFTSPORTS MOTUL Z
#17 Astemo NSX-GT
#16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT
#23 MOTUL AUTECH Z
#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra
#14 ENEOS X PRIME GR Supra
#19 WedsSport ADVAN GR Supra
#38 ZENT GR Supra
#64 Modulo NSX-GT
#37 KeePer TOM’S GR Supra
#36 au TOM’S GR Supra
#100 STANLEY NSX-GT
#8 ARTA NSX-GT


【GT300クラス】
#7 Studie BMW M4
#20 SHADE RACING GR86 GT
#2 muta Racing GR86 GT
#52 SAITAMA TOYOPET GB GR Supra GT
#61 SUBARU BRZ R&D SPORT
#60 Syntium LMcorsa GR Supra GT
#30 apr GR86 GT
#11 GAINER TANAX GT-R 午後出走せず
#25 HOPPY Schatz GR Supra 出走せず
#65 LEON PYRAMID AMG 午後出走せず

CNFはこれまでの通常燃料に比べて若干、重量も重くなるというが、車両のバランスへの影響は大きくはないという
レースを熟知した山本左近衆議院委員議員が、かつて在籍したトムスチームを訪問
各チーム、200リットルのCNFが供給され、ハイオクガソリンとの比較が行われた
スーパーGTもてぎCNFテスト ハルターマン・カーレス社製ETSレーシング・フューエル
スーパーGTもてぎCNFテスト STANLEY NSX-GT
スーパーGTもてぎCNFテスト ENEOS X PRIME GR Supra
スーパーGTもてぎCNFテスト ハルターマン・カーレス社製ETSレーシング・フューエル
スーパーGTもてぎCNFテスト 埼玉トヨペットGB GR Supra GT
スーパーGTもてぎCNFテスト MOTUL AUTECH Z
スーパーGTもてぎCNFテスト ARTA NSX-GT
スーパーGTもてぎCNFテスト CRAFTSPORTS MOTUL Z
スーパーGTもてぎCNFテスト GAINER TANAX GT-R
スーパーGTもてぎCNFテストの午後の走行の様子
スーパーGTもてぎCNFテスト SUBARU BRZ R&D SPORT
スーパーGTもてぎCNFテスト 車両を修復しテストに臨んだapr GR86 GT
スーパーGTもてぎCNFテスト Studie BMW M4

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