U-22日本代表大岩監督が挙げた課題。アルゼンチンに快勝も慢心なし【試合】

2023年11月20日(月)14時0分 FOOTBALL TRIBE

鈴木唯人(左)大岩剛監督(中)木村誠二(右)写真:Getty Images

パリ2024オリンピック(パリ五輪)の出場権獲得を目指す22歳以下のU-22日本代表は11月18日、U-22アルゼンチン代表と対戦。最終スコア5-2で勝利した。


ここではIAIスタジアム日本平(静岡県)にて行われた今回の国際親善試合を振り返るとともに、U-22日本代表を率いる大岩剛監督の会見コメントを紹介。そのうえで同代表の戦いぶりを論評する。




U-22日本代表 vs U-22アルゼンチン代表、先発メンバー

U-22日本vsU-22アルゼンチン:試合展開


両軍ともに[4-1-2-3]の基本布陣を採用。ロングボールを蹴り合う時間帯もあったが、基本的には互いに最終ラインの隊形変化を駆使しながらパスを回し、相手のハイプレスを掻い潜ろうとしていた。


試合序盤の均衡を破ったのはU-22日本代表だった。前半18分、MF松木玖生(FC東京)の縦パスを受けたMF佐藤恵允(ブレーメン/ドイツ)が、ペナルティアーク付近で右足を振り抜く。このミドルシュートが相手ゴールに突き刺さった。


日本代表は幸先良く先制したものの、前半22分に佐藤恵允がハーフウェイライン近辺より繰り出したバックパスからピンチに陥ってしまう。自陣でボールを回収できなかった同代表はU-22アルゼンチン代表の速攻を浴び、最終ラインの背後を突かれると、FWパブロ・ソラリに同点ゴールを奪われた。


後半2分、日本代表は敵陣でボールを失い、またもアルゼンチン代表の速攻を浴びると、DFバングーナガンデ佳史扶(FC東京)が自陣ペナルティエリア手前でソラリを倒してしまう。このファウルによって与えられた直接フリーキックを、アルゼンチン代表FWチアゴ・アルマダに物にされた。




U-22日本代表 MF鈴木唯人 写真:Getty Images

鈴木唯人がかつての本拠地で躍動


日本代表に漂った嫌なムードを払拭したのは、背番号10のMF鈴木唯人(ブレンビー/デンマーク)だった。


後半21分、DF半田陸(ガンバ大阪)の横パスを受けた鈴木が敵陣ペナルティアーク付近からミドルシュートを放ち、同点ゴールをゲット。同30分にも日本代表が敵陣でのボール奪取から速攻を仕掛け、左サイドを駆け上がったMF松村優太(鹿島アントラーズ)がクロスを上げる。この直後の半田のラストパスを鈴木が相手ゴールに押し込み、自軍に勝ち越し点をもたらした。


IAIスタジアム日本平を本拠地とする清水エスパルスでプレーし、その後欧州に渡った鈴木。かつてのホームスタジアムで最高のパフォーマンスを披露した。


勝ち越しに成功した日本代表は、その後ハイプレスからの速攻で試合を掌握。後半36分には敵陣でのボール奪取から松村がミドルシュートを突き刺し、試合の趨勢が決まる。同43分にも途中出場のFW福田師王(ボルシアMG/ドイツ)がMF藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン/ベルギー)からのロングパスを結実させ、駄目を押した。


U22日本代表 大岩剛監督 写真:Getty Images

大岩監督「スコアは別」


試合後の記者会見に臨んだ大岩監督のコメントからは、強豪アルゼンチンを下したことによる慢心は窺えず。試合の総括や質疑応答において、自軍の課題と向き合う姿勢を強調していた。


「スコアは別として(自分たちが)できていることと流れをつかめなかったところ、色々なことがあった90分間でした。そのなかで我々のスタイルを出して戦えたのは収穫のひとつだと思います」


ー試合後のフラッシュインタビューで「まだまだやるべきことがある」と仰っていましたが、具体的にはどういった点でしょうか。


「我々の課題である、ビルドアップ(自陣後方からのパス回し)のところですね。自分たちが優位にボールを保持しているにも関わらず、判断ミスやプレーのチョイスミスでボールを失うことがありました。個人的な問題とチームの構造的な課題を、もう少し整理してあげないといけないかなと感じました」


ー守備への切り替えの速さや、敵陣でのボール奪取が得点に繋がったと思います。この点(守備面)について評価できる部分を教えてください。


「前線からの守備は我々の生命線です。(プレスの)積極性と、状況をしっかり判断しながらポジションをとる。この2つを選手たちに要求しています。今日は相手の技術的なところで(技術でアルゼンチンと渡り合う)自信がなくて守備に行けなかったのか、(周りの状況が)見えていなくて行けなかったのか。我々の守備の流動性や連動性に私は自信を持っていますので、もっとやれるんじゃないかと思っています。ただ、前線からの守備だけでは試合が成り立たないので、もっとうまく選手たちに伝えていきたいですね」




アルゼンチン代表は攻撃時、右SBのシモンが内側に立ち位置を移していた

相手サイドバックへの守備が曖昧に


大岩監督が述べた通り、この日のU-22日本代表は攻守両面において詰めが甘い時間帯があった。


日本代表は守備時に[4-4-2]に近い隊形を敷き、最前線の鈴木とFW小田裕太郎(ハーツ/スコットランド)を起点にハイプレスを仕掛けていたが、アルゼンチン代表のMFサンティアゴ・シモンを捕捉しきれていない場面がちらほら。アルゼンチン代表は自陣後方からのパス回しの際、右サイドバックとして起用されたシモンがタッチライン際から内側へポジションを移し、パスコースを確保しようとしていた。


シモンに対する日本代表の守備が特にうまくいかなかったのが、前半19分。ここでも右サイドバックのシモンがタッチライン際から内側へ移動し、最前線の鈴木と左サイドハーフの佐藤恵允の間から顔を出していたが、ここに誰がプレスをかけるのかが曖昧に。その後、アルゼンチン代表DFマルコ・ディチェーザレ(センターバック)から自陣に降りてきた右ウイングFWのソラリ、シモンの順でパスが繋がってしまった。


この直後のアルゼンチン代表のロングパスを、GK藤田和輝(栃木SC)が処理したため事なきを得たものの、相手のラストパスの精度が高ければピンチに陥っていただろう。相手最終ラインの隊形変化やポジションチェンジへの素早い対応は、U-22日本代表が突き詰めるべき課題のひとつだ。




U22日本代表 DF木村誠二 写真:Getty Images

攻撃時の配置が悪い場面も


この日の日本代表は、半田とバングーナガンデの両サイドバックのどちらかが攻め上がり、同時に最終ラインの残り3人で3バックを形成しながら自陣からパスを回す形にトライ。松木と藤田譲瑠チマも適宜最終ライン付近でボールを捌き、自軍のパスワークを活性化させていた。


様々な攻撃配置を試したなかで、日本代表は前半30分にパスミスからピンチを招いている。GK藤田からパスを回そうとしたこの場面では、4バックが自陣後方で横に開きすぎてしまい、サイドバックがタッチライン際に立つ形に。これによりDF木村誠二(FC東京)の横パスをタッチライン際で受けたバングーナガンデが、対面の相手FWソラリのプレスを浴びてしまった。


これと同時に、左サイドハーフの佐藤もシモンに捕捉されていたため、日本代表は自陣でボールロスト。この直後にアルゼンチン代表にチャンスを作られた。


4バック(最終ライン)が自陣後方で横に広がった状態でビルドアップした場合、サイドバックの傍にはタッチラインがあるため、左右どちらかのパスコースが消えてしまう。また、サイドバックが相手のサイドハーフやウイングFWのプレスをもろに浴びる立ち位置をとることになるため、ボールを失う確率も上がる。大岩監督が言及した「チームの構造的な課題」とは、まさにこれだろう。来年4月に始まるパリ五輪アジア最終予選(AFC U-23アジアカップ)に向け、攻撃配置の改良も急務だ。

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