「良い意味で“クレイジー”」「F1に近いクルマ」「岩佐との差を感じた」【SF Mix Voices ルーキーテスト】

2023年12月9日(土)13時9分 AUTOSPORT web

 12月6〜8日にわたって鈴鹿サーキットで開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権の2023年合同/ルーキーテスト。ルーキー(SF決勝出走が4戦未満のドライバー)のみが出走可能なテスト3日目には、12名のドライバーが参加した。


 ここではテスト3日目を終えたルーキードライバーたちが一堂に会したミックスゾーンから、彼らの声をお届けする。


■イゴール・オオムラ・フラガ(TCS NAKAJIMA RACING)


 2023年はSFライツとスーパーGT GT300クラスに参戦したオオムラ・フラガは、2022年12月に鈴鹿で実施された合同/ルーキーテストにTEAM IMPULから初参加して以来、約1年ぶりに国内トップフォーミュラのステアリングを握った。


 2日間計4セッションの走行を終え、「一年ぶりに乗っても、2022年と同じインパクトをまた感じましたね。すごく速いな! と思いました」とフラガは笑顔でスーパーフォーミュラの感触を口にした。


「(今回のテストから)ダンパーなどの仕様も変わったので、チームとしてはロングをやるというよりも、特性をつかむとか、スピードに繋げられるものを多めにテストしていたので、昨日(7日)の午前中(セッション3)は慣熟走行みたいな感じで、あまりクルマ自体は触っていませんでした。午後(セッション4)は一周だけアタックして、そこからセットアップを変える、というかたちでテストをしていましたね」


 搭乗初日となった7日のセッション3は18番手、セッション4は17番手タイムとなったオオムラ・フラガ。SF決勝経験が4戦未満のルーキーのみが参加できる8日は、午前午後ともに2番手タイムをマークするも悔しさは残ったようだ。


「最後の方は結構いいところには来ることができたと思っています。ただ、アタックラップをまとめることがなかなか難しかったので正直、あと0.2〜0.3秒くらいは削れたのじゃないかなという感覚があったので、そこはまとめきれず、悔しいところは残っていますね」


 なお、オオムラ・フラガは2022年の合同/ルーキーテストでTEAM IMPULのSF19をドライブ。今回はTCS NAKAJIMA RACINGのSF23に乗った。クイック&ライトというコンセプトは引き継ぎつつ、空力面で大きな変化を遂げたSF23とSF19のフィーリングの違いを尋ねると「結構ありました」と口にする。


「もちろん、2022年とはチームも違うので一概には言えません。ただ、SF23の方がダウンフォースを失うか、失わないかという領域が非常にピーキーです。低速域やトラクションがもっとほしいといって車高などを変えると、逆にエアロ(のバランス)が崩れちゃってぜんぜん駄目になったりと、すごく敏感ですね。クルマの姿勢を一定にコントロールしつつ、どうやってメカニカルもゲインできるかというところのバランスがすごく難しいクルマだと感じました」


 SFライツ参戦初年度をシリーズ4位で終えたオオムラ・フラガ。SFではeモータースポーツアンバサダーも務めているが、「いずれはSFレギュラーシートで乗りたい」と、ひとりのドライバーとしての思いを口にした。


「そのために、これからも努力を続けます」

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト イゴール・オオムラ・フラガ(TCS NAKAJIMA RACING)


■ノーラン・シーゲル(B-Max Racing Team)


 インディNXTでランキング3位を獲得したシーゲル。今回はB-Max Racing Teamから参戦を果たした。


「僕にとっては初めての日本で、クルマもコースも初体験だった。僕が今まで経験してきたなかで、一番速いクルマだったし、ものすごく良い経験になった」とシーゲル。


 午前のセッションで1分38秒571を記録し8番手につけ、午後はさらなるタイム更新が期待されたが、不運にもマシントラブルに見舞われてしまい、最後のアタックに参加できず。それでも有意義な一日だったと、シーゲルは笑顔を見せていた。


「最後にニュータイヤでアタックをしようと思ったら、ギヤボックストラブルに見舞われてしまって、走ることができなかった。だけど、一日を通していろいろなことを学べたし、良いテストになった。この経験は、自分の今後に必ず活きると思う」


「B-Max Racing Teamのメンバーと仕事をするのはもちろん初めてだった。僕は日本語を話せないから、コミュニケーションの部分はチャレンジングなところもあったけど、みんな優しくて、ともに良い仕事ができた。充実した一日を過ごすことができた」

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト ノーラン・シーゲル(B-Max Racing Team)


■オリバー・ラスムッセン(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)


 前日までITOCHU ENEX TEAM IMPULの19号車は、FIA F2王者のテオ・プルシェールがドライブしていたが、FIA表彰式に出席しなければいけない関係で、3日目はラスムッセンが走行した。


 彼にとっては初めてのマシンとコースではあったが、午前のセッションで1分37秒795と、SF初経験のドライバーでは最速タイムを記録した。午後も28周を走り、大きなミスもなく、一日のテストを終えた。


「一日を通してパフォーマンスはしっかりと出せたと思う。午後のセッションもいろいろなことを試して、そこでベストな方向に持っていくことはできなかったけど、一日を通してフォーミュラカーに乗って速さを引き出せるということは証明できたのかなと思う。それができて嬉しい。とにかく素晴らしい経験ができたことが、嬉しい。ITOCHU ENEX TEAM IMPULの星野(一義)さん、一樹さんに感謝したい」とラスムッセン。


 スーパーフォーミュラのマシンにも気に入った様子で、「最初に走り出したときは、クルマの速さに驚いたし、とにかく楽しかった。僕もいろいろなクルマを経験してきたけど、これだけ大きな経験を得られたのは初めてだ。将来、このシリーズに参戦するかどうかわからないけど、またいつか日本に来て、このクルマをもっと走らせたい」と、次のチャンスに向けた意欲も垣間見えた。

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト オリバー・ラスムッセン(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)


■デビッド・ビダーレス(VANTELIN TEAM TOM’S)


 VANTELIN TEAM TOM’Sから3日目のテストにエントリーしたビダーレス。すでに全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権で鈴鹿サーキットを経験していることもあり、最初はマシンへの習熟に集中していた様子だが、思いのほか合わせこむことができていたようだ。


「僕にとっては大きなステップだったなと感じた。新しく学ぶことばかりで、新鮮だった。タイヤのグリップが高くて、ターボエンジンをコントロールするという、自分にとっても新しいチャレンジがあったけど、それを違和感なく乗れたのは大きい」


 そう語るビダーレスは、午後のセッションでトップから0.297秒差の5番手につけてセッションを終えた。


「3日間走っていたドライバーたちと遜色ないタイムを出すことができた。でも、まだマージンを持って走っている感じなので、願わくは……もうちょっと乗りたいなというのが本音だ。だけど、素晴らしい経験になった」と、どこかやり残したことがある様子。来季のSF参戦の可能性については不透明ではあるものの「将来的に、また別のチャンスがくればいいなと思っている」と前向きなコメントをしていた。

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト デビッド・ビダーレス(VANTELIN TEAM TOM’S)


■ラスムス・リンド(TGM Grand Prix)


 TGM Grand Prixの55号車を、2日目と3日目にドライブしたリンド。他のルーキードライバーとは異なり、走行チャンスが2日間あったこともあり、「最初はクルマとコースに慣れることに集中した。事前にシミュレーションをしてきたとはいえ、実際に乗ると異なる部分もあるから、そこに合わせこむ作業を中心にやった」と振り返った。


 ただ、ルーキーテスト日にはトラブルの影響で思うように走れない時間もあり、スーパーフォーミュラの難しさを感じた一日になったようだ。


「今日(ルーキーテスト日)に関しては、最初こそ悪くなかったけど、みんながニュータイヤを履くタイミングで、エンジン関係の小さなトラブルがあって、アタックラップができなかった。その分、午後に2回アタックをしたけど、難しかったね」とリンド。


 それでも、2日間の経験は自身の今後に活きるだろうと語る。


「ここまでダウンフォースのあるクルマに乗ったのは人生で初めてだったし、F1に近いクルマというのが理解できた気がする。間違いなく、素晴らしい経験になった。来季以降のことについては、まだどうなるかわからないけど、将来的にどこかのタイミングで挑戦したいなと思う」

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト ラスムス・リンド(TGM Grand Prix)


■ベン・バーニコート(VANTELIN TEAM TOM’S)


 VANTELIN TEAM TOM’Sの36号車をドライブしたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権でGTDプロクラス王者のバーニコートは、午前のセッションから1分37秒台を記録するなど、初走行とは思えないパフォーマンスを披露。午後のセッションでは1分37秒482でトップタイムを記録した。


「最初の5周は言葉にできないくらい凄かった。今までスーパーフォーミュラは映像をチェックして、シミュレーターでも練習してきたが、実際に鈴鹿を走ると、特にセクター1は良い意味で“クレイジー”だった。首や身体にかかるGフォースがすごくて、これは予想以上だった。この素晴らい機会を用意してくれたTGR、トムスチーム、レクサスレーシングUSAに心から感謝したい」とバーニコート。今までにない経験ができたようで、スーパーフォーミュラの凄さを満面の笑みで語っていた。


 さまざまな初体験の中で、タイヤのパフォーマンスを引き出すという部分では、難しさを感じた様子。「タイヤもすごくグリップが高くて、GT3カーがここを走ると25秒〜30秒くらい遅いので、僕にとっては非常に大きなステップだった。少しずつ速さを出していったけど、性能を引き出すのが難しかった」と語るも、「これだけのマシンをドライブできたという経験は、今後の自分の走りにつながると思う」と、彼にとって実りのある一日になった様子だった。

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト ベン・バーニコート(VANTELIN TEAM TOM’S)


■大草りき(TCS NAKAJIMA RACING)


 2023年の最終大会となった第8・9戦鈴鹿に大湯都史樹の代役として、TGM Grand Prixから急きょスポット参戦を果たした大草りき。SFでは2レースの実戦経験はあるものの、“テスト”への参加は初めて。今回はTCS NAKAJIMA RACINGのSF23を走らせた。


 しかし、走り始めとなった午前のセッション5序盤、ターン2立ち上がりで大草はクラッシュを喫してしまい。貴重な走行機会を失うかたちとなってしまう。


「風向きも、クルマもとても良くて、悪くないタイムが出せそうだと楽しみにしながら走っていたのですが、(2回目のアタックに)行こうと思ったら(縁石に)引っ掛けちゃって……」と大草はクラッシュ時の状況を説明する。


「テスト序盤にしてはいけないことですので、改めて反省しなければいけないと思いました。あの瞬間は『これはいける』という自信があって、その瞬間は少し注意を怠ってしまったと感じています。ピットに戻ったら『若さが出たね』と言われました。チームの皆さんには本当に申し訳ないです」


 3日間の合同/ルーキーテストの間、初日と2日目は見学をしつつ、SFレギュラー参戦経験者の大津弘樹、佐藤蓮のデータを参考に準備し、3日目の実走に臨んだという大草。「午前(セッション5)と午後(セッション6)で風向きが逆になったのですが、風向きひとつでクルマのキャラクターがあんなに変わるのかと思いました。その部分はスポット参戦した最終戦では発見できなかったので、改めて風の影響の大きさ、凄さを感じました」と、テストでの学びも口にした。


 さらに今回のテストでは岩佐歩夢、木村偉織、小出峻というSRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール/現HRSホンダレーシングスクール鈴鹿)時代の同期4名がテストに参加。「SRS時代の同期全員が同じ日に同じ国内トップフォーミュラマシンに乗れるということはなかなかないですよね(笑)」と笑顔を見せる大草だが、F1テストも経験した同期との差を実感したとも語る。


「海外であれだけ乗った岩佐君がやはり速くて、すごく差を感じましたね。でも差が見えたということは、目標を可視化できたことでもあると思います。来シーズンはどうなるかはわからないですけど、今日見えた差は今後しっかりと埋めていきたいなと思います」


「最終戦のスポット参戦と今回のテストでの経験は、自分のレース人生においても大きなターニングポイントになるような気もしています。これが良い方向に動いてくれることを祈い、今後も頑張ります」

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト 大草りき(TCS NAKAJIMA RACING)

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