横浜FMを救った角田涼太朗。GS突破に繋がった好プレー【ACL2023/24】

2023年12月15日(金)18時30分 FOOTBALL TRIBE

横浜F・マリノス DF角田涼太朗 写真:Getty Images

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2023/24のグループステージ最終節が12月13日に行われ、横浜F・マリノスが山東泰山(中国)に3-0で勝利した。


最終節終了時点で、グループGの横浜FM、山東泰山、仁川ユナイテッド(韓国)の3チームが勝ち点12で並ぶ接戦に。この3チーム間の直接対決の成績が最も良かった横浜FMが、グループG首位フィニッシュならびにACLノックアウトステージへの進出を決めた。


グループステージ突破のためには2点差以上をつけての勝利、もしくは1点差でも4ゴール以上挙げての勝利が最終節で必要だった横浜FM。この複雑かつ困難な状況を乗り越えた要因は何か。この試合で得点に繋がるパスを連発した横浜FMのDF角田涼太朗と、2023年限りで同クラブを離れるケヴィン・マスカット監督の試合後コメントを紹介しながら、この点について論評する。




仁川ユナイテッドVS横浜F・マリノス 写真:Getty Images

ACLグループGは大接戦に


グループG第5節終了時点の順位は、以下の通り。JリーグやFIFAワールドカップなどと同じく、ACLグループステージでは勝利チームに勝ち点3、引き分けの場合は両チームに勝ち点1が与えられる(敗戦時は勝ち点なし)。



  • 1位:山東泰山:勝ち点12 

  • 2位:仁川ユナイテッド:勝ち点9

  • 3位:横浜F・マリノス:勝ち点9

  • 4位:カヤFC:勝ち点0


各グループの首位チーム、及びグループFからJ(アジア東地区)の2位チームのうち、成績上位の3つがノックアウトステージ進出という大会規定のため、カヤFCを除くグループGの残り3チームにその可能性があった。


この時点で横浜FMの勝ち点は、仁川と同じく9。最終節で仁川がグループG全敗中のカヤに勝利し、勝ち点を12にまで伸ばす公算が大きかったため、大前提として横浜FMは山東泰山に勝つ必要があった。




山東泰山の選手たち 写真:Getty Images

なぜ2点差以上の勝利が必要だったのか


ACLグループステージでは同じ勝ち点で複数のチームが並んだ場合、当該チーム同士の直接対決の成績で順位が決まる。今回のケースでは、横浜FM、山東泰山、仁川が勝ち点12で並ぶ可能性が高く、この3チーム間の対戦結果が重要だった。


仁川は横浜FMに4-2と2-1で連勝を収めたものの、山東泰山には0-2と1-3で連敗。山東泰山は仁川に連勝したが、本拠地での横浜FM戦では0-1の黒星を喫した。


横浜FMは仁川に連敗したものの、敵地での山東泰山戦では白星を飾っている。これらの結果により、グループG第5節終了時点における当該3チーム直接対決の成績(勝ち点、得点数−失点数で算出される得失点差)は以下の通りとなった。



  • 1位:山東泰山:勝ち点6(得失点差:+3)

  • 2位:仁川:勝ち点6(得失点差:−1)

  • 3位:横浜FM:勝ち点3(得失点差:−2)


仁川のグループG最終節の相手はカヤ。従って、仁川が最終節で大勝を収めても、上記の同クラブの勝ち点や得失点差は変動しない。仁川vsカヤと同時に開催される、横浜FMvs山東泰山の勝敗やスコアが、当該3チームの命運を左右することになった。


これらの事情により、横浜FMは山東泰山との最終節で2点差以上での勝利を収め、得失点差をプラスマイナス0以上にすることが必要に。これで仁川の得失点差(−1)を上回り、グループG2位以内フィニッシュが確定するからだ。


1-0、2-1、3-2では不十分だった横浜FM


当該チーム同士の直接対決の勝ち点と得失点差が並んだ場合、この3チーム間の対戦で挙げたゴール数(総得点)の多いチームが、ACLグループステージでは成績上位と見なされる。


第5節終了時点で仁川の総得点は7、山東泰山は5、横浜FMは4。山東泰山に1点差で勝った場合、横浜FMは得失点差で仁川と並ぶが、1-0や2-1の2ゴール以下では総得点で仁川を下回ってしまう。これに加え仁川がカヤに勝利し、グループステージ全体の勝ち点を12にまで伸ばせば、横浜FMの敗退が決まる状況だった。


横浜FMvs山東泰山が3-2で前者の勝利、加えて仁川がカヤに勝利で終わると、横浜FMと仁川の勝ち点(6)や得失点差(−1)、及び総得点(7ゴール)が同じになる。この場合は大会規定上、横浜FMに連勝している仁川に軍配が上がる。ゆえに横浜FMが最終節での1点差勝利でノックアウトステージ進出を決めるには、4-3や5-4など4ゴール以上が必要だった。




横浜F・マリノスvs山東泰山、先発メンバー

山東泰山は[5-4-1]の布陣で対抗


最終節引き分けでもグループステージ首位フィニッシュが確定、敗れても3点差以内であればグループG3位転落を回避できる山東泰山は、キックオフ直後から[5-4-1]の守備隊形をセット。特に5バックと4人の中盤の間を狭め、横浜FMのパスワークを封じにかかった。


基本布陣[4-2-1-3]の横浜FMのセンターFWアンデルソン・ロペスが中盤へ降りてパスワークに参加した際は、山東泰山のシー・クー、ジャジソン、ジョン・ジョンの3DF(3センターバック)が最終ラインから飛び出して対応。攻撃の起点を潰しにかかった。


横浜F・マリノス DF角田涼太朗 写真:Getty Images

横浜FMの攻撃を司った角田


この日横浜FMの攻撃を司ったのは、センターバックとして先発したDF角田涼太朗。前半13分に敵陣までボールを運ぶと、センターサークル付近から最前線へロングパスを供給。これがFWエウベルに繋がった。


エウベルがオフサイドの反則をとられ、チャンスが潰えてしまったが、角田のロングパスによって山東泰山は最終ラインの背後を突かれている。中盤へ降りようとしたA・ロペスに釣られ、5バック(最終ライン)から飛び出したジョン・ジョンの背後を突くという、角田のアイディアは秀逸だった。


角田が先制ゴールと2点目の起点に


2点差以上での勝利が必要だった横浜FMに、貴重な先制ゴールが生まれたのは前半アディショナルタイム。このゴールの起点となったのも角田だった。


この場面では味方MFナム・テヒのバックパスを受けた角田が、すかさずセンターサークルへ浮き球を繰り出す。このボールが味方FWヤン・マテウスに繋がり、直後の同選手のスルーパスにエウベルが反応して山東泰山の最終ラインの背後へ抜け出すと、GKワン・ダーレイとの1対1を制している。角田の配球力が活きた得点シーンだった。


後半12分にも角田が敵陣までボールを運び、山東泰山のMFリャオ・リーションの背後に立っていた味方MF喜田拓也に正確な縦パスを送る。喜田のパスを受けたマテウスが敵陣ペナルティエリア右隅へ侵入し、ゴール前へクロスを送ると、これにA・ロペスが合わせて追加点を挙げた。




横浜F・マリノス DF角田涼太朗 写真:Getty Images

「どこかが空いてくるのは分かっていた」


横浜FMの2点目は相手MFリャオの死角に立った喜田も然ることながら、リャオに向かってドリブルを仕掛け、同選手に喜田をマークし続けるべきかどうかの迷いを生じさせた角田によってもたらされたものとも言える。角田は試合後の囲み取材で謙遜していたが、横浜FMをACLノックアウトステージへ導くビッグプレーだった。


「ボールを動かしながら(動かしていれば)、どこかが空いてくるというのは分かっていました。そこをちゃんと見れていたのは良かったです。前の選手(前線)のセッションクオリティーが高いなかで、(自分が)起点さえ作れれば(ゴールが生まれる)と信頼しています。そこ(空いたところ)に喜田選手が動いてくれましたし、自分は見えたところにパスを出しただけでした」


グループステージ突破へ必要な2点のリードを確保した横浜FMは、後半19分に自陣から速攻を仕掛ける。エウベルのスルーパスに反応したマテウスが、相手GKの頭上を越えるループシュートを放ち、横浜FMに貴重な3点目をもたらしている。その後は山東泰山の攻撃を防ぎ、最終スコア3-0でグループG首位通過を確定させた。




ケヴィン・マスカット監督(右)写真:Getty Images

マスカット監督が角田に出した指示


正確なパスのみならず、果敢なボール運びで横浜FMの攻撃の起点となった角田。特に山東泰山の中盤の選手に向かうようなボール運びが効果的で、これにより相手MFを釣り出し、相手の5バックと4人の中盤の間を広げようとする意図が窺えた。


2023年限りでの退任が決まっている横浜FMのケヴィン・マスカット監督も、試合後の会見(質疑応答)で角田とDFエドゥアルドによるボール運びについて言及している。やはり、彼らにドリブルでボールを運ぶよう指示していたようだ。


ー[5-4-1]の布陣で山東泰山に構えられたなかで、横浜FMの2センターバック(角田とエドゥアルド)のボール運びによって、相手の守備組織が崩れていたように見えました。これについて、監督の率直なご感想をお願いします。


「今日はほとんどの場面において、敵陣でボールを保持していました。そのなかで、(角田とエドゥアルドの)2センターバックにはただボールを前方向に蹴るのではなく、相手のプレッシャーが無いのであれば、ボールを持っていこう(ドリブルでボールを運ぼう)という話をしていました」


「相手があれだけ引いていた(自陣に下がっていた)ので、(横浜FMの2センターバックと相手の1トップによる)2対1の状況も生まれていました。そこで数的優位を作れているなら、そこを使いながら(パスワークで)崩せるのではないか。この部分を角田とエドゥアルドには言いました」


「特に前半、角田とエドゥアルド(の立ち位置)が横に開きすぎていました。そうなってしまうと、自分たちの中盤の選手が相手の中盤の選手に付かれてしまうので、2人にはもう少し閉じるよう(タッチライン方向へ開かないよう)指示を出しました。(修正後は)前方向にボールを持っていけるようになりましたね」


角田「監督には全てを教えてもらった」


2021年の夏に、横浜FMに赴任したマスカット監督。彼にとってのラストゲームで躍動したのは、同年7月に同クラブとプロ契約を結んだ角田だった。


「監督とは、自分が入る(入団する)タイミングで一緒になりました。(角田が)プロになってからの初めての監督で、本当に全てを教えてもらいました。試合に出れない時期もありましたけど、それでも今年は信頼して起用してくれました」


「要求の高い監督でしたけど、それをクリアしたいという思いが、自分をここまで成長させてくれました。(監督には)本当に感謝しています」


角田自身も、試合後の囲み取材でマスカット監督への感謝の言葉を口にしている。同監督にとっても、忘れられない試合になったことだろう。

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