優勝争いの行方を左右?…1月開幕のアフリカネーションズ杯がプレミアリーグに与える影響
2023年12月21日(木)19時53分 サッカーキング
今シーズンのプレミアリーグの覇権争いを占うのはコートジボワールで開催される大会かもしれない。
かつてアーセナルを率いた名将アーセン・ヴェンゲル氏は「パスポートで選手を選ばない」と語ったことがあるが、今シーズンに限ってはパスポートがプレミアリーグに多大な影響を及ぼすだろう。というのも、1月から2月にかけて開かれる国際大会で貴重な主力選手を奪われるチームがあるのだ。
今冬はアフリカとアジアで大陸別選手権が開かれる。どちらもプレミアリーグに影響を与えそうだが、中でも1月13日にコートジボワールで開幕するアフリカネーションズカップには多くの“プレミアリーガー”が参戦予定だ。それではアフリカネーションズカップが今シーズンのプレミアリーグに与えるインパクトについて見ていこう。
[写真]=Getty Images
■影響がないのは2チームだけ
既にアフリカネーションズカップに出場する24チームは最大55名分の予備登録選手リストを提出しており、今月20日にアフリカサッカー連盟(CAF)の公式ホームページにて公表された。今大会は予備登録選手リストを提出した後、そこから本大会に出場する最終メンバー27名を選出する。各国代表はこの最終メンバーのリストを来年1月3日までに提出することとなっている。
予備登録リストを見てみると、プレミアリーグから実に「44名」もの選手が名を連ねている。最終メンバーのリストではないため、全員が選ばれるわけではないが、それにしても異様な人数だ。今回のアフリカネーションズカップは1月13日に開幕し、2月11日に決勝戦を迎える。その間にプレミアリーグは最大で4節(21〜24節)が行われるため、決勝や3位決定戦まで勝ち上がった選手は最大でリーグ戦4試合を欠場する可能性があるのだ。
もちろん、全く影響を受けないチームもある。マンチェスター・シティとニューカッスルの2チームについては、所属選手が1人も予備登録リストに名を連ねていないのだ。両チームにはそもそもアフリカ人選手が所属していないため、他のクラブが頭を悩ませるなか、何の影響を受けずにリーグ戦を戦うことができる。
一方、最も多くの選手が選ばれているのは、監督交代に踏み切ったばかりのノッティンガム・フォレストだ。主軸のコートジボワール代表DFウィリー・ボリーやナイジェリア代表DFオラ・アイナなどを筆頭に実に「6名」が選出されている。エースのナイジェリア代表FWタイウォ・アウォニイは選出外となったが、同選手の場合は負傷で3月までの戦線離脱が見込まれているため、そもそも試合に出られないのだ。
次に多いのはマンチェスター・ユナイテッドとウェストハムで、それぞれ4名ずつ。マンチェスター・ユナイテッドは今夏にインテルから加入したカメルーン代表GKアンドレ・オナナも予備登録に選ばれている。同選手は昨年のFIFAワールドカップカタール2022期間中にリゴベール・ソング監督との確執によりチームを離れ、一時は代表引退を表明。しかし、今年9月に“不屈のライオン”に復帰すると、今大会の予備登録にも名を連ねた。マンチェスター・ユナイテッドではそのほか、モロッコ代表MFソフィアン・アムラバト、チュニジア代表MFハンニバル・メイブリ、コートジボワール代表FWアマド・ディアロが選ばれている。
■一番影響を受けるのはリヴァプール?
人数で言うとノッティンガム・フォレストだが、やはり最も影響を受けるのはリヴァプールだろう。というのも、同クラブは“絶対的エース”であるエジプト代表FWモハメド・サラーを失うのだ。
サラーは今シーズンもリヴァプールのエースとして、ここまでプレミアリーグ全17試合に出場。全ての試合にスタメン出場しているのは、チーム内ではサラーとハンガリー代表MFドミニク・ソボスライの2人だけだ。前節マンチェスター・ユナイテッド戦では不発に終わったが、それでも今シーズンここまでリーグ戦11ゴールをマーク。マンチェスター・シティ所属のノルウェー代表FWアーリング・ハーランド(14ゴール)に次いで得点ランク2位に付けている。ゴール数ではハーランドを下回っているが、サラーの場合はリーグ最多タイとなる7アシストもマークしており、直接ゴールに絡んだ回数は18回で“ノルウェーの怪物”と並びリーグトップの数字だ。
サラーはチームの総得点(36ゴール)の実に約40パーセントに絡んでおり、まさに替えがきかない選手だ。前回アフリカネーションズカップが開催された2021−22シーズン、リヴァプールは1カ月ほど“絶対的エース”を失った。最終的に「1」ポイント差でマンチェスター・シティに競り負けて栄冠を逃したため、サラーの不在が響いた…と言いたいところだが、リヴァプールはサラー不在時のプレミアリーグを2戦全勝で終えている。当時はエース不在の影響をそれほど感じさせなかったが、今回はアフリカネーションカップ期間中に最大で4試合を戦わなくてはならない。さらにリヴァプールはこの期間、1月31日のチェルシー戦や2月3日アーセナル戦といったビッグゲームを控えているのだ。4シーズンぶりのリーグ制覇を目指すリヴァプールにとって、この期間のサラー不在は大きな痛手と言えるだろう。
■その他のチーム
20年ぶりのリーグ制覇を目指して首位を走るアーセナルは、ガーナ代表MFトーマス・パルティとエジプト代表MFモハメド・エルネニーの2選手を欠くこととなる。前者はコンディションさえ整えば貴重な戦力となるが、両選手とも今シーズンは怪我の影響でほとんど試合に出られていない。そのため、他の選手が故障しなければ、それほど大きな影響はないだろう。そもそもシーズン中に2人も中盤の選手を失うことは開幕前から分かっていたこと。だからこそ推定1億500万ポンド(約190億円)という大金を費やしイングランド代表MFデクラン・ライスを獲得したのだ。英国人史上最高額の男は新天地でも安定感あるパフォーマンスを披露しているため、それほど大きな影響はないかもしれない。
3位のアストン・ヴィラも候補に入っているのはブルキナファソ代表FWベルトラン・トラオレだけであり、ほとんど影響を受けない。そもそも同選手は構想外となっており、今シーズンのリーグ戦では2試合に途中出場しただけ。そのためアストン・ヴィラはアフリカネーションズカップを意識することなく冬を過ごすことができる。
トッテナムもアーセナルと同じく2人しか選出されていないが、彼らの場合はかなり影響を受けることになる。アンジェ・ポステコグルー監督が繰り広げる“アンジェ・ボール”の生命線とも呼べる中盤の2人、マリ代表MFイヴ・ビスマとセネガル代表MFパペ・マタル・サールを失う可能性が高いのだ。特に前者は攻守両面において軸となっており、不在ともなればチームに与える影響は計り知れない。しかも、1月14日には敵地『オールド・トラッフォード』でのマンチェスター・ユナイテッド戦というビッグゲームを控えているのだ。
加えて、トッテナムの場合はアフリカネーションズカップ以上の悩みの種を抱えている。それが絶対的エースの韓国代表FWソン・フンミンが出場予定となっているAFCアジアカップカタール2023だ。クラブは頼れる主将をできるだけチームに留まらせるべく、代表チームに合流する時期などを交渉中だという。いずれにせよ、トッテナムは怪我人も多い中で中盤の心臓部と絶対的エースを同時に欠くことになるのだ…。
6位ニューカッスルは誰も失わず、7位マンチェスター・ユナイテッドは前述の通り4名を欠くことになる。8位ウェストハムもコートジボワール代表FWマクスウェル・コルネ、モロッコ代表DFナイフ・アゲルド、アルジェリア代表FWサイード・ベンラーマ、ガーナ代表MFモハメド・クドゥスの合計4名を欠く可能性があり、大きなダメージを受けることになるだろう。
9位のブライトンはガーナ代表DFタリク・ランプティ、コートジボワール代表FWシモン・アディングラ、チュニジア代表MFサミー・シュシャヌの3名を失うが、彼らもトッテナムと同じくアジアカップの方が心配だ。日本代表MF三笘薫を失えば、片翼を欠いた状態で1カ月ほど戦うことになってしまう。
最後に、10位チェルシーからはセネガル代表FWニコラス・ジャクソンが予備登録に選ばれている。今夏に加入した22歳のストライカーはここまでリーグ戦16試合に出場し7ゴール1アシストをマークしており、不在による悪影響も少なからずあることが予想される。
果たして、アフリカネーションズカップは今シーズンのプレミアリーグにどんな影響を及ぼすのだろうか? 白熱するリーグ戦と共にコートジボワールで開かれる大会にも注目したい。
(記事/Footmedia)
かつてアーセナルを率いた名将アーセン・ヴェンゲル氏は「パスポートで選手を選ばない」と語ったことがあるが、今シーズンに限ってはパスポートがプレミアリーグに多大な影響を及ぼすだろう。というのも、1月から2月にかけて開かれる国際大会で貴重な主力選手を奪われるチームがあるのだ。
今冬はアフリカとアジアで大陸別選手権が開かれる。どちらもプレミアリーグに影響を与えそうだが、中でも1月13日にコートジボワールで開幕するアフリカネーションズカップには多くの“プレミアリーガー”が参戦予定だ。それではアフリカネーションズカップが今シーズンのプレミアリーグに与えるインパクトについて見ていこう。
[写真]=Getty Images
■影響がないのは2チームだけ
既にアフリカネーションズカップに出場する24チームは最大55名分の予備登録選手リストを提出しており、今月20日にアフリカサッカー連盟(CAF)の公式ホームページにて公表された。今大会は予備登録選手リストを提出した後、そこから本大会に出場する最終メンバー27名を選出する。各国代表はこの最終メンバーのリストを来年1月3日までに提出することとなっている。
予備登録リストを見てみると、プレミアリーグから実に「44名」もの選手が名を連ねている。最終メンバーのリストではないため、全員が選ばれるわけではないが、それにしても異様な人数だ。今回のアフリカネーションズカップは1月13日に開幕し、2月11日に決勝戦を迎える。その間にプレミアリーグは最大で4節(21〜24節)が行われるため、決勝や3位決定戦まで勝ち上がった選手は最大でリーグ戦4試合を欠場する可能性があるのだ。
もちろん、全く影響を受けないチームもある。マンチェスター・シティとニューカッスルの2チームについては、所属選手が1人も予備登録リストに名を連ねていないのだ。両チームにはそもそもアフリカ人選手が所属していないため、他のクラブが頭を悩ませるなか、何の影響を受けずにリーグ戦を戦うことができる。
一方、最も多くの選手が選ばれているのは、監督交代に踏み切ったばかりのノッティンガム・フォレストだ。主軸のコートジボワール代表DFウィリー・ボリーやナイジェリア代表DFオラ・アイナなどを筆頭に実に「6名」が選出されている。エースのナイジェリア代表FWタイウォ・アウォニイは選出外となったが、同選手の場合は負傷で3月までの戦線離脱が見込まれているため、そもそも試合に出られないのだ。
次に多いのはマンチェスター・ユナイテッドとウェストハムで、それぞれ4名ずつ。マンチェスター・ユナイテッドは今夏にインテルから加入したカメルーン代表GKアンドレ・オナナも予備登録に選ばれている。同選手は昨年のFIFAワールドカップカタール2022期間中にリゴベール・ソング監督との確執によりチームを離れ、一時は代表引退を表明。しかし、今年9月に“不屈のライオン”に復帰すると、今大会の予備登録にも名を連ねた。マンチェスター・ユナイテッドではそのほか、モロッコ代表MFソフィアン・アムラバト、チュニジア代表MFハンニバル・メイブリ、コートジボワール代表FWアマド・ディアロが選ばれている。
■一番影響を受けるのはリヴァプール?
人数で言うとノッティンガム・フォレストだが、やはり最も影響を受けるのはリヴァプールだろう。というのも、同クラブは“絶対的エース”であるエジプト代表FWモハメド・サラーを失うのだ。
サラーは今シーズンもリヴァプールのエースとして、ここまでプレミアリーグ全17試合に出場。全ての試合にスタメン出場しているのは、チーム内ではサラーとハンガリー代表MFドミニク・ソボスライの2人だけだ。前節マンチェスター・ユナイテッド戦では不発に終わったが、それでも今シーズンここまでリーグ戦11ゴールをマーク。マンチェスター・シティ所属のノルウェー代表FWアーリング・ハーランド(14ゴール)に次いで得点ランク2位に付けている。ゴール数ではハーランドを下回っているが、サラーの場合はリーグ最多タイとなる7アシストもマークしており、直接ゴールに絡んだ回数は18回で“ノルウェーの怪物”と並びリーグトップの数字だ。
サラーはチームの総得点(36ゴール)の実に約40パーセントに絡んでおり、まさに替えがきかない選手だ。前回アフリカネーションズカップが開催された2021−22シーズン、リヴァプールは1カ月ほど“絶対的エース”を失った。最終的に「1」ポイント差でマンチェスター・シティに競り負けて栄冠を逃したため、サラーの不在が響いた…と言いたいところだが、リヴァプールはサラー不在時のプレミアリーグを2戦全勝で終えている。当時はエース不在の影響をそれほど感じさせなかったが、今回はアフリカネーションカップ期間中に最大で4試合を戦わなくてはならない。さらにリヴァプールはこの期間、1月31日のチェルシー戦や2月3日アーセナル戦といったビッグゲームを控えているのだ。4シーズンぶりのリーグ制覇を目指すリヴァプールにとって、この期間のサラー不在は大きな痛手と言えるだろう。
■その他のチーム
20年ぶりのリーグ制覇を目指して首位を走るアーセナルは、ガーナ代表MFトーマス・パルティとエジプト代表MFモハメド・エルネニーの2選手を欠くこととなる。前者はコンディションさえ整えば貴重な戦力となるが、両選手とも今シーズンは怪我の影響でほとんど試合に出られていない。そのため、他の選手が故障しなければ、それほど大きな影響はないだろう。そもそもシーズン中に2人も中盤の選手を失うことは開幕前から分かっていたこと。だからこそ推定1億500万ポンド(約190億円)という大金を費やしイングランド代表MFデクラン・ライスを獲得したのだ。英国人史上最高額の男は新天地でも安定感あるパフォーマンスを披露しているため、それほど大きな影響はないかもしれない。
3位のアストン・ヴィラも候補に入っているのはブルキナファソ代表FWベルトラン・トラオレだけであり、ほとんど影響を受けない。そもそも同選手は構想外となっており、今シーズンのリーグ戦では2試合に途中出場しただけ。そのためアストン・ヴィラはアフリカネーションズカップを意識することなく冬を過ごすことができる。
トッテナムもアーセナルと同じく2人しか選出されていないが、彼らの場合はかなり影響を受けることになる。アンジェ・ポステコグルー監督が繰り広げる“アンジェ・ボール”の生命線とも呼べる中盤の2人、マリ代表MFイヴ・ビスマとセネガル代表MFパペ・マタル・サールを失う可能性が高いのだ。特に前者は攻守両面において軸となっており、不在ともなればチームに与える影響は計り知れない。しかも、1月14日には敵地『オールド・トラッフォード』でのマンチェスター・ユナイテッド戦というビッグゲームを控えているのだ。
加えて、トッテナムの場合はアフリカネーションズカップ以上の悩みの種を抱えている。それが絶対的エースの韓国代表FWソン・フンミンが出場予定となっているAFCアジアカップカタール2023だ。クラブは頼れる主将をできるだけチームに留まらせるべく、代表チームに合流する時期などを交渉中だという。いずれにせよ、トッテナムは怪我人も多い中で中盤の心臓部と絶対的エースを同時に欠くことになるのだ…。
6位ニューカッスルは誰も失わず、7位マンチェスター・ユナイテッドは前述の通り4名を欠くことになる。8位ウェストハムもコートジボワール代表FWマクスウェル・コルネ、モロッコ代表DFナイフ・アゲルド、アルジェリア代表FWサイード・ベンラーマ、ガーナ代表MFモハメド・クドゥスの合計4名を欠く可能性があり、大きなダメージを受けることになるだろう。
9位のブライトンはガーナ代表DFタリク・ランプティ、コートジボワール代表FWシモン・アディングラ、チュニジア代表MFサミー・シュシャヌの3名を失うが、彼らもトッテナムと同じくアジアカップの方が心配だ。日本代表MF三笘薫を失えば、片翼を欠いた状態で1カ月ほど戦うことになってしまう。
最後に、10位チェルシーからはセネガル代表FWニコラス・ジャクソンが予備登録に選ばれている。今夏に加入した22歳のストライカーはここまでリーグ戦16試合に出場し7ゴール1アシストをマークしており、不在による悪影響も少なからずあることが予想される。
果たして、アフリカネーションズカップは今シーズンのプレミアリーグにどんな影響を及ぼすのだろうか? 白熱するリーグ戦と共にコートジボワールで開かれる大会にも注目したい。
(記事/Footmedia)