就活を成功に導く鍵、「大学のキャリアセンター」の新たな取り組みを解説

2025年1月4日(土)9時24分 マイナビニュース


ベネッセホールディングスとパーソルキャリアの合弁会社・ベネッセ i-キャリアが運営するシンクタンク「まなぶとはたらくをつなぐ研究所」は12月20日、「大学キャリアセンター 最新動向に関する記者説明会」を開催した。
同研究所では、全国の大学キャリアセンターにおける学生のキャリア支援に関する調査を2024年8月26日〜9月13日にかけてインターネットによるアンケート方式で実施。
「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(「三省合意」)に基づくインターンシップの見直しや"早期化"など、近年、大学新卒者の就職活動における環境が変化する中で、大学におけるキャリアセンターの支援内容や新たなキャリア支援の取り組みを把握することを目的としたもので、全国の大学の就職・キャリア支援担当部署815大学に依頼し、うち277校(約34%)の回答を得ている。
大学と学生の間で意識のギャップ
記者説明会の第一部には、同研究所・主席研究員の村山和生氏が登壇。調査結果の報告と解説を行った。
キャリアセンターの支援ウェイトの高い学年を訊ねる設問では、実態として「3年生後期」と回答した割合が97.8%、次いで「4年生前期」が89.9%を占めた。
一方で、理想とする支援学年として、「3年生前期」とした回答が最も多く(71.8%)、1、2年次の支援ウェイトを高めたいとする意向も多くみられ、低学年からのキャリア支援が求められていることが示された。
さらに、キャリア教育の観点から自己分析や業界研究など自己理解を深める活動を開始してほしい時期として、大学側の回答では「1年次」が36.1%、「2年次」が37.5%を占めた。
一方学生側は、1、2年次を合わせても13%に留まり、大学と学生の間で意識のギャップが明らかになった。
キャリア教育の完了時期に関しても、大学側の回答で多数を占めたのは「(企業の採用が始まる)3年生7月まで」が44.8%と最多だが、学生側は7.9%に留まり、双方の意識の差が浮き彫りになった。
キャリアセンターが現在提供している支援プログラムについての調査では、「就職活動対策(面接、エントリーシートなど) 」が最多で98.2%。
次いで「進路・就職ガイダンス」(97.5%)、「企業説明会」(89.5%)と続いた。また、「最も注力しているプログラム」としても同じ順序となった。
2023〜2024年度に新しいプログラムを実施したと回答した大学は73.6%にのぼり、この割合はキャリアセンターの職員数が多くなるほど高い傾向があった。
村山氏は「今後の大学改革で求められていくだろう」と述べた。
キャリアセンター運営で最も重視される項目として最多だったのは、「学生の就職先への満足度」で36.8%だった。
以下は「就職数・率」(25.3%)、「就職支援に対する学生の満足度」(21.3%)と続き、"学生の満足度"を重視する姿勢が明確に示された。
この傾向は国公立・私立大学を問わず大差は見られず、村山氏は「ステークホルダーである学生の"満足できる就職"につながる支援を行っていくことは、今後もすべての大学に共通する姿勢として続いていくものと思われる」と評した。
その他、企業に評価してほしい自学生のポイントとして、「学生の人柄や性格」「志望企業への熱意」に加えて、大学での学びの成果である「汎用的なスキル(思考力等の問題を解決する力)」と回答する大学が多かったことも注目すべき結果だ。
同研究所は今回の調査結果を踏まえ、「就職活動の早期化に対応した、1、2年時からのキャリア教育」と「学生の視野を広げるためのプログラム」の重要性を説く。加えて、「学生の学修成果への注目」と「キャリア教育を"点"の指導から"線"の指導に切り替える」ことの2点を課題として挙げている。
立教大学の実施する「線」のキャリア支援
記者説明会の第二部には、先進的な取り組みを行う大学の代表として、立教大学 キャリアセンターの三浦実幸氏が登壇し、同大学で行っている独自のキャリア支援について紹介した。
立教大学では、「学生が社会的および職業的に自立した個人として自分らしい人生のあり方を追求できるように支援する」「学生が一生を通じて自らの資質を向上させ、教養をもって社会に貢献できる人となるよう支援する」ことをキャリア支援の2本柱としている。
そのため、就職という"点"だけではなく、その後のキャリアまで見据えた"線"で支援を行い、4年間を通じた包括的なキャリア支援を行っているのが特徴だ。
「今後の学生生活や将来といったキャリアについて考え、"就職"のためだけではなく、"より良いキャリア"を築くためにさまざまな体験をして視野を広げてほしい」という思いから、1、2年生を対象とした低学年向けのキャリア支援に力を入れている。
その1つが毎年11月ごろに実施する「スタディツアー」だ。このブログラムは1、2年次の学生限定の企業訪問で、参加者は1日につき最大2社まで訪問できる。
大学と連携する企業のオフィスを訪問し、職場や施設の見学、社員との懇談、業務内容を体験するビジネスゲームなどを通じて、社会のしくみや働くことへの理解を深めることが可能だ。
2024年度は、食品メーカーや不動産会社、航空会社など28社・団体が協力し、延べ838名の学生が参加した。低学年の段階から社会を牽引するトップ企業と接点を持てることも魅力の1つで、1〜2割程度の学生が参加しているという。
三浦氏は「やりたいことは知っていることの中からしか生まれません。日本には約360万社の企業がありますが、学生が知っている企業はごく一部。『業界は〇個までに絞るべき』といった話が聞かれたりもするが、やりたいことがわからないのは知識不足が要因。まずは先入観を捨てて広く業界を見ることが納得した進路選択にもつながります。低学年時にキャリア観の醸成につながるプログラムが必要だと考え、スタディツアーを実施している」と、プログラムの狙いを語った。
2年生を対象とした「Rikkyo My Career Gate」が始動
2024年度から新たに開始された取り組みとして、2年生を対象とした「Rikkyo My Career Gate」が挙げられる。従来から行っていた「立教型インターンシップ」をアップデートした、大学と企業が連携したより本格的な就業体験プログラムだ。
キャリアセンターと実習先の企業・団体・行政が協働し、夏季休業期間中に15時間以上、かつ3日間以上、対面またはオンライン、ハイブリッドのいずれかの方法で就業体験を実施する。選考はキャリアセンターが担当し、無報酬ながら企業との間で覚書や誓約書を交わした上で実施するという。
プログラムに参加した学生からは「社会に出て働くことに対して、肯定的な気持ちになれていなかったが、今回の実習を通じて、『意外と楽しいかも』『働くのも悪くないかも』と思えるようになり、参加して良かったなと感じた」、「自分の軸や自分がどのような人になりたいか、将来像を自分なりに設定することができた。それを叶えるために自分がどのようなことをしていくのか、言葉にして行動に移していこうと思う」といったポジティブな感想が聞かれるという。
一方、協力企業からは、「大学時代は自分の将来について考える大切な時期であり、自分自身を知り自分の強み、弱みを低年次から理解することこそが、充実した学生生活や将来のキャリアプランに役立つ」との意見が寄せられた。
また、「一般的に3年生向けのインターンシップだと選考につながるものも多いため、今回は就職活動とは切り離し、学生生活を充実させるための手段の一つとして低学年向けの就業体験の機会を提供したいと考えた」などの声もあった。
立教大学が低学年向けプログラムを拡充している理由として、「受け身で就活に臨む学生の存在も一因」と三浦氏。
「今はネット上に企業の情報が数多く飛び交っていて、就活生向けのYouTubeチャンネルなどもたくさん開設されている。こうした情報はプッシュ型で送られてくるので、受け身でも情報は得られる半面、視野が狭くなりがち。しかし、キャリアには正解、不正解はなく、一人ひとり違ったものであるはずで、学生には自分でキャリアを選択する強さを身につけてほしいという考えから、まだ時間に余裕がある1、2年次にこうしたプログラムを設けている」と三浦氏は述べた。
同大学では、卒業生訪問会も盛んに行われているという。年間5回、対面またはZoomを利用したオンライン形式で実施。約120名の卒業生が協力し、オンライン開催時には海外在住者、育休取得者も参加してNG質問なしで本音を聞くことができるオープンなものだという。
キャリアセンター内に設置されている卒業生検索用のPCには、約4万人もの卒業生の連絡先が登録されているとのこと。
毎年作成されている、就職活動を終えた4年生の連絡先をまとめた内定者名簿には、例年350名以上が登録され、模擬面接を実施するなどキャリアセンター学生サポーターとして卒業生のバックアップも強力に支援している。
しかし、同大学では「手取り足取りの支援は"あえて"しないことをモットーとしている」と話す。
「本当に学生のことを考えるからこそ、答えを教えるのではなく考える余白を与える。経験豊富なスタッフだからこそできる絶妙なアドバイスをしている。その代わり、就職活動が本格化する前に"社会を知る機会"を提供することに力を入れている」と語った。
神野恵美 フリーライター・編集者。ワーキングマザーとして10余年、世の中にあるさまざまな便利ガジェット・ツールを駆使して、生き延びる。趣味は料理に掃除、洗濯と野球、旅行、音楽や映画鑑賞などなど、周りが呆れるくらい趣味人間。"モノ"より"コト"優先で生きてる。 この著者の記事一覧はこちら

マイナビニュース

「キャリア」をもっと詳しく

「キャリア」のニュース

「キャリア」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ