玄理が年の始めに誓う「シンプルな目標」と就寝前の新たなルーティン
2025年1月14日(火)11時0分 大手小町(読売新聞)
2024年で終わる予定だった韓国ドラマの撮影が終わらずに、2025年の年明けまで持ち越し。半年行ったり来たりしてみて気づいたけど、日本で3か月くらいかけて起こることが、韓国では1〜3日の間に起きる。とにかく情報量が多い。
感情がジェットコースターみたいにブンブン振り回されて、「現実がドラマチックすぎて、よっぽど面白くなきゃドラマなんて見てくれない」は、映像関係者の口癖だ。数年前、東京からソウルに引っ越した母も、さも当然、というふうに言う。
「ここは東京と違う。気をしっかり保たないと持ってかれるよ」
これまでは、日本で3か月でドラマ1本を撮るペースだったから、なんとなくこうやって忙しくしていくんだろうと思っていた。
今は大きな作品、海外作品に関わることが増えて、ドラマ1本に10か月。本読みや衣装合わせなどの事前準備や、撮りこぼしによる延長なんかを含めるとほぼ1年。変だと思うかもしれないけど、死ぬまでにあと何本撮れるんだろう?って、冗談じゃなく真剣に考える。年齢と共に、演じられる役も変わっていくし。
今のところ、将来に対する不安はありがたいことにあまりないけど、時間が足りないという焦燥感はある。どんなに生き急いだって体は一つだし、私一人が急いだからって作品が早く完成するわけでもない。
さて、2025年の目標は。みなさん考えましたか?
私は、とにかく今決まってる仕事を責任持ってやり切ること。どれもカロリーが高めの作品なので、
今年の目標は、「人や物事を自分の物差しでジャッジしない」にした。自分の物差しは、言い換えたら先入観かもしれない。去年、自分でも気づかない先入観や思い込み、決めつけのせいで苦しんだ気がする。
よく知っていると思ってた家族が、まるで全然違う人に見えて、どうコミュニケーションを取ればいよいのか分からなかった、父が亡くなって、家族の形が変わっていく段階や時間なのかもしれない。
元々、誰かの苦しみや悩みを、他人が「それは大変」とか「それは大したことじゃない」なんて言えないと思ってる。その人の痛みは、その人にしか分からない。すごく幸せそうに見えても、抱えてるものがあったり。なんでそんななの?って腹が立っても、その人なりの理由や背景があったり。
例えば、去年韓国でお世話になっているパーソナルトレーナーさんが、新人の後輩さんを連れて東京に遊びに来た。担当しているアイドルの方が、日本でツアーをするという。トレーナーさん自身はハキハキしてて気持ちのよい人なのだが、この後輩さんはすごい美人だけど、やる気がなさそうというか無気力というか、無口というか。だいぶ若かったし、マイペースな人なのかな〜、でもこの人に運動教わっても楽しくなさそうだな、まで勝手に考えた(笑)。
後輩さんがお手洗いに席を外した時、「実は彼女、昨日飼ってたわんちゃんが亡くなって……」。えー!!! 逆によく来たね!? 確かに、その割にメンタル保ててる方だわ。私だったらきっと今、人と会話出来ない。この場にいるだけ立派だと思った。「一人にしてたらすごく落ち込んでしまいそうだったから、連れてきたの」とのことだった。
毎度ちっぽけな私一人の経験や推測じゃ、推し量れない個人の事情というものが億万通りもあって、後から運良く事実を知ることが出来た日には、「だからかー!」とか、「そんなことが……」ってなって、自分の浅はかさを思い知ることになるのだ。
なんの問題もない、完璧な幸せなんて、きっとないのかもしれない。逆に、完全な不幸なんてのも、きっとないと最近思う。気づかなかったり、見ないふりしてるだけで。
つらい時、私を救ってくれたのは時間だったり、だれかの優しさだったり、
ある本を読んで最近良いなと思ってるのは、寝る前に「その日あった良い出来事」を10個思い返すこと。最初は「〜してもらったこと」とかラッキーだったことなど、何か大きなことだけをカウントしてたけど、今では「昼間歩いてた時に見えた日差しがとても奇麗だった」「団子がおいしかった」とかまで入ってる。そのうち、「今日は空気の酸素が多めだった」とか言いそう。
幸せは、感情ではなく状態なのだという。その辺に転がっている幸せの種から実を受け取れるかは、自分の受け取り態勢次第なんだって。本当に、日に日に気持ちが前向きになるし、今日というささやかな1日に感謝できるし、おすすめ。
新年明けて、1月3日からJ-WAVEの新番組が始まった。金曜深夜25:30〜26:00の「JT TIMELESS THEATER〜NeoClassica」。古典文学を、新進気鋭の脚本家さんと声優さんが現代版によみがえらせる。ナビゲーターを務めさせていただいてます。
1作目は、原案「若きウェルテルの悩み」改め「若き上杉の悩み」。大学生の劇団員、上杉のにっちもさっちも行かない青春が、クスッと笑えます。寝る前に、またはradikoアプリでどうぞ。耳にだけ集中する時間、心地よいです。
もうすぐ舞台「浪人街」の稽古も始まる。もう何年ぶりの舞台なのか考えるのも怖いので、毎日台本を抱きしめて寝てます。こちらは2月20日から東京・新橋演舞場で開演です。ぜひ会いにきてください。皆さんの2025年が、素晴らしいものになりますように。(俳優 玄理)