【販売準備スタートと同時に居酒屋での提供が決定】大阪・泉佐野で障がいのある方が育てた「食用こおろぎ」。

2023年1月24日(火)9時0分 ソトコト

背景





株式会社HEMは2022年3月頃から泉佐野市で就労継続支援B型事業所を開所し、こおろぎの飼育・管理に取り組んでいました。さらには株式会社ガイヤと連携し、ECサイト「こおろぎ牧場」の運営と成虫販売も行っています。
その理由は「こおろぎの飼育・管理、商品化作業が障がいのある方と相性が良いこと」です。
就労継続支援B型事業所とは、障がいなどを持つ方の中でも年齢や体力の面から一般的な職に就くことが難しい方に、就労訓練を提供する福祉サービスとなります。
知的障がいや精神障がいを抱える方は、その障がい特性からまだまだ働く機会を得にくいのが現状です。
そしてこおろぎといった昆虫は人によっては触ることに抵抗があり、誰でも抵抗なく作業できるとは言い難いです。
しかし知的障がいを抱えている人の中には、年齢を重ねても感性が豊かで昆虫採集や飼育に興味を持つ方が多く見られます。こおろぎの飼育・管理はそのような感性を持つ方にとって、楽しみながら作業できる環境だと考えます。
また精神障がいは生まれつきではなく、ストレスによる後天的な障がいであることがほとんどです。
精神的に不安定な状態があり、継続的に働くのが難しい反面、ひとつのことに集中して知識を吸収する特性があります。
実際に利用者の方の中には、健常者よりはるかに高い昆虫の知識を持っている方もいます。
そのような特性を活かして、こおろぎの餌や水飲み場所の開発・作成から餌やり・水やり、糞の掃除といった日常的なお世話まで利用者が担当。
実際に2022年12月時点で、6名がこおろぎの飼育・管理に従事しています。
こおろぎの成虫の飼育・管理や商品化を通して、利用者のみなさんが生き生きと働ける環境作りを目指しています。


こおろぎが食料として注目されている理由





日本は食料自給率が高くありません。カロリーベースの自給率は38%と、欧米に比べると決して高いとは言い難い状況です。
現在は輸入でまかなっている食品も、世界的な食糧難や異常気象が発生すれば価格高騰や輸入不可によって、手に入りにくくなる可能性があります。
そのような状況でこおろぎは雑食であることから、日本の食料自給率の低さをカバーできる可能性があると言われています。
例えば何でも食べるため、廃棄物を使って飼育することが可能です。特別な餌を必要としない分飼育コストが低く、廃棄ロスの削減にもつながります。
また生産における水の使用量が少ないことも注目の理由です。
JAICAF(公益社団法人 国際農林業協働協会)のデータによると、食肉の消費量は2020年で319.3トンのところ、2050年には463.8トンにも増えると予測されています。
この数値は2010年からは173%の増加率であり、世界では動物性タンパク質の確保が課題となっています。


2010年 肉の消費量 268.7トン 2010年からの増加率  -
2020年 肉の消費量 319.3トン 2010年からの増加率  119%
2050年 肉の消費量 463.8トン 2010年からの増加率  173%
【出典】JAICAF「世界の農林水産」
https://www.fao.org/3/ax299o/ax299o.pdf


また牛は100gを生産するのに2万2,000リットルと多くの水を必要とするため、水の確保も課題です。
そのような状況で、こおろぎはわずか4リットルの水で生産可能。
従来の5,500分の1の水で生産できることから、資源を守りながら動物性タンパク質を確保することができます。
こおろぎの食料としての活用がSDGsの後押しにもなり得るのです。


こおろぎ牧場で販売するこおろぎの特徴


泉佐野市の就労継続支援B型事業所で商品化したこおろぎは、ECサイト「こおろぎ牧場(https://korogi-farm.com/)」で販売予定です。


特徴1.こおろぎの成虫だからこそ豊富な栄養素





こおろぎ牧場で販売するこおろぎは、基本的に成虫の状態で食べることができます。
こおろぎの成虫には牛肉、豚肉、鶏肉の3倍のタンパク質が豊富に含まれていると言われています。牛や豚、鶏100gあたりのタンパク質が20g前後のところ、こおろぎは60g近いタンパク質を含有しています。
タンパク質の多さから、2013年にFAO(国連食糧農業機関)は食用昆虫に関する報告書(https://www.fao.org/3/i3253e/i3253e.pdf)を提出し、その後昆虫食を貴重なタンパク質として推奨したほどです。
その結果、近年多くの企業がこおろぎパウダーを使った食品を販売していますが、こおろぎのタンパク質は加工途中で失われることがほとんど。
成虫のまま食べることで、こおろぎの豊富なタンパク質をしっかりと摂取することができます。


特徴2.農家の新しい事業となる可能性





こおろぎは雑食のため、泉佐野市の就労継続支援B型事業所では農家の廃棄物を活用して育てています。
農作物の生産はどうしても天候に左右され、自然災害によって農作物がすべて廃棄となることもあります。
農家の方が副業として農作物の廃棄でこおろぎを育てていれば、万が一本業の収益がゼロになっても、最低限の収入を確保することが可能です。


特徴3.餌によって変わる味





こおろぎは与える餌によって味が変化します。
例えば米ぬかで育てるとお米のような甘みのある味、アーモンドを食べさせるとナッツ類の香ばしい味になります。
廃棄物で飼育する場合、農家の方々が育てている野菜やくだものによって味が変わります。同じこおろぎの成虫といっても販売元の農家によって複数のバリエーションが生まれ、好みに合わせて選ぶことが可能です。
実際にこおろぎ牧場では大阪の米ぬか、京都の出汁、青森のソースを使ってこおろぎを育てており、3種類のテイストを楽しめます。


居酒屋「いろり」でこおろぎの提供を開始





株式会社HEMの就労継続支援B型事業所で飼育・管理したこおろぎの成虫が、居酒屋「いろり(https://robatayakiirori.owst.jp/)」のメニューに採用されました。
居酒屋「いろり」は大阪・泉佐野市にあり、もともとかえるの唐揚げや蜂の子などめずらしい食品を提供している居酒屋です。その1つとしてこおろぎが新たに加わります。
こおろぎ牧場の商品はECサイトでの販売も予定していますが、ひと足早くこおろぎの成虫を食べてみたい方は居酒屋「いろり」でも味わうことができます。


株式会社HEMの代表者コメント






障がい者就労支援事業もさまざまな業界・職種が参入しており、利用者にとって就労の選択肢の1つとなればと思っております。
まだまだ障がい当事者含め一般の方々も福祉事業について知らないことが多いです。そのような状況で食用こおろぎ販売を通じて福祉のことを知ってもらいたいと考えています。
気になる方はまず居酒屋「いろり」または今後オープンする「こおろぎ牧場」でこおろぎを試してみてくださいね。

ソトコト

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