“いつもある生活は保証されていない”からこそ好きなことを仕事にして生きる

2023年2月8日(水)17時30分 ソトコト

〈Profile〉
マルサラ飲食店・店主 春井春乃さん
はるい・はるの 大学在学中から大好きな映画プロデューサーの元で映画のチラシを作るなどデザイン関係に従事。その後、デザイン会社に就職。28歳で飲食業界へ。表参道のフレンチレストラン、三軒茶屋にあるスタンディングバー『霧の中の風景』勤務を経て、2016年に東京・三軒茶屋でマルサラ飲食店をオープンし独立。コロナ禍以降にスタートしたケータリングは「美しくて美味しい!」と話題に。趣味はサウナとキャンプ。
Twitter:@hal_haruno
ー春井さんの3つのルールー
RULE1.同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
RULE2.月の周期に合わせて心と体のバランスを保つ
RULE3.好意的な目線で物事を見る


元パートナーに反対されながらも28歳で飲食業界へキャリア変更


フェムテックtv:幼少期から料理好きとのことですが、どんなきっかけがあったのでしょうか?
春井さん:3人兄弟の末っ子で、兄2人と両親がいつも家で麻雀をしていたんです。そうなると、その輪の中に入れない。せめて夜食を作って家族に振る舞おうと思い、缶詰を凍らせてシャーベットにするとか簡単なものを作り始めました。それから休日には兄たちにごはんを作ることも。
居場所がほしくて始めた料理で褒めてもらったことが、ずっと心に残っていました。漠然と“将来はこういうことをしていきたいな”と。それが小学生時代の話です。
フェムテックtv:お兄さんたちも当時は小学生だったんですよね。すでに麻雀デビューしていたことに驚きです(笑)。
春井さん:早いですよね(笑)。初めて料理をしたのはもう少し前で、4歳のときにクッキーを作りました。母が家庭科の先生だったので、いろんな料理を教えてもらっていましたね。
高校を卒業したら料理の専門学校に行くつもりでしたが、両親は「大学に行ってくれ!」と。仕方なく2番目に興味のあったグラフィックデザインが学べる学校に進学しました。
フェムテックtv:大学在学中から関わっていたデザインの仕事についてもお聞かせください。
春井さん:映画がすごく好きで、なかでも鈴木清順監督の作品が好きだったんです。就活はせず、鈴木監督のプロデューサーを務める小椋悟さんの事務所で映画のチラシなどを作成していました。
就活をしなかったのは、何をしたらいいかわからないし、ひとまずごはんが食べられればいいというマインドだったので。卒業後も働き続け、その後は映画関係のデザイン会社に就職しました。




OL時代。趣味の山登りへ。


フェムテックtv:それから28歳でいきなり飲食業界へ。不安はなかったのでしょうか?
春井さん:26歳の誕生日に東日本大震災が起こりました。“いつもある生活は保証されてないんだ”と思ったとき、どうせ安定していないなら好きなことをしたほうがいいと思ったんです。デザイン会社では楽しく働いてそれなりにお給料ももらえていて、不満もなかった。ただ、こなしてはいるけど、素晴らしいと言えるほどの才能はない。
ぬるま湯に浸かっている感じはありました。今思えば、このまま同じ場所にいることのほうが不安だったんだと思います。休日に料理を作っているほうが、自分的に生き生きできていましたしね。




飲食店として営業してていた頃の様子。


とはいえ、2年ほど考えてから飲食業界に進みました。震災直後の26歳のときに結婚して、当時はパートナーからの反対もあったんです。「急に飲食なんて、何を言ってるのかよく分からない」と。それでもこの道に進み、お店をスタートして1年後の32歳になったくらいのタイミングで離婚しました。パートナーからしたら、私の人が変わったように感じたんだと思います。同業じゃないと分かり合えないことも多いですしね。


月の周期を見ながら食べるものや過ごし方を調整する


フェムテックtv:料理を仕事にして、ライフワークバランスの変化はありましたか?
春井さん:お店が7年目に突入しましたが、コロナ禍を機にケータリングに切り替えてからだいぶバタバタは収まりました。飲食を始めて体重は10kgくらい増えましたが、子供の頃からの貧血や冷え性が治って健康面は改善したんですよ。これまで生きてきて、今が一番健康な気がします。体のケアをしてあげられているからかもしれません。
フェムテックtv:具体的にどのような体ケアをされていますか?
春井さん:運動に関してはスクワットのみ。走っていた時期もあるけど、そのときの体重の減り方より、スクワットの減り方のほうが大きいんです。歯磨きをしながらとかズボラで50×4回、1日100〜200回くらいやってますね。
吉永小百合さんもやっているらしいし、いいのかなって(笑)。それから今は忙しいことを分散できるように、スタッフの数も増やしています。寝ないという時間は作らない。なるべく同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。スタッフみんなのおかげでそれができてます。




ケータリング会場にて仕事中の様子。


フェムテックtv:忙しくても効率よく運動をしたり寝る時間を確保するために、1日をどのように過ごされているのでしょうか?
春井さん:6時頃に起きて、料理の仕込みから会社の細かいことなど16時頃まで仕事をします。そこからお酒を飲みに行ったり、ごはんを作ったり、本を読んだり、銭湯やサウナに行ったりして、21時か22時には就寝。
2022年からこういう生活ができるようになりました。それまでは睡眠導入剤を飲まないと寝られないような時期もあったんです。健康になって心が変わりました。人のやさしさや好意に気づけるようになりましたね。
フェムテックtv:自分の心に余裕がないと気づけることにも気づけないことってありますよね。先ほど「今が一番健康」とお話しされていましたが、女性特有の健康課題があったことはありますか?
春井さん:健康ではあるものの、PMSが酷くて……。飲食業界に携わる少し前からピルを飲んでました。ただそれも2022年に辞めたんです。辞めたことでPMSが出てくるようにはなったけど、その周期が満月の周期と一緒ということがわかりました。
だから家に月齢カレンダーを貼り、月の周期を見ながら自分の体を調整。外にお酒を飲みに行かない、決断が必要なコミュニケーションを取らない、ゆっくりする時間を意地でも作る、アロマを焚くなど。満月対策として、スマホのメモに書き出しています。
ちなみに一緒に住み始めて1年ほどのパートナーから「怒ってるときは大体満月前」と言われたことが、気づいたきっかけ。ピルを辞めた理由は、パートナーとの子供が欲しいからです。子供を作るための病院へはお互い通っていますが、先に籍を入れるとか結婚に関してはあまり考えていないですね。子供がいたら意味がある制度かなと思っています。




お休みの日は好きなお店をハシゴ酒するのが楽しみだそう。


フェムテックtv:PMSや生理のことなどはパートナーにも共有していますか?
春井さん:なんでも話しますね。「満月が近い!」とかギャーギャー騒いでます(笑)。パートナーからは「(生理前は)別人だと思うことにした」と言われました。
フェムテックtv:理解があるのは助かりますよね。食事面でもPMSのケアをされていますか?
春井さん:油分、辛いもの、塩分など、胃に負担がかかるもの食べないようにしています。内臓に負担があるとイライラがすごいんですよね。油分でもオリーブオイルを使ったり、野菜スープを多めに摂取したり意識しています。
でも不思議なことに、満月前や生理前ってなぜか外に飲みに行きたくなっちゃう。ただ酒癖が悪いので控えなきゃなと(笑)。家では毎日飲んでいます。それからPMSのときって、普段は薄味が好きなのに濃いめの味付けになってしまいがち。むくみや体の水分量に関係があるのかもしれません。




趣味はキャンプ。火おこしをしている様子。


フェムテックtv:生理中で味覚の変化があることに気づいていなかったので、驚きました。生理中のフェムケアで使用しているアイテムはありますか?
春井さん:生理中はタンポン派で、国産のものを使うようにしています。うちで働くスタッフは、女性がほとんど。私は生理が3日くらいで終わってあまり重くもないので、生理が重い子たちの気持ちは本当の意味では理解できていないと感じますね。“この子とこの子の周期は近いな”とかは、なんとなく把握しています。
フェムテックtv:本日取材にお邪魔して、スタッフのみなさんと一緒に美味しいごはんを食べて日々コミュニケーションを取っているんだろうなというのが伝わりました。
春井さん:本当に性格の良い人たちばっかりなので、ネガティブに物事を捉えにくい環境ではありますね。わかりやすいようにメモを書いてくれているとか、言葉に配慮を感じます。


起きた物事に対して“やさしい目線”で考えていきたい


フェムテックtv:春井さんの今後のライフプランもお聞かせください。
春井さん:店舗再開をする予定です。それから隣の駒沢大学駅にキッチンだけの物件を借りているので、春からラボとして活用したいと思っています。将来的には、野菜などを育てながら田舎に住みたい。コロナ禍以降、東京の流れについていけないなと思ってるんです。ペースダウンして生きたいですね。




仕入れ先にもこだわり、収穫にも参加。


フェムテックtv:店舗再開はもちろん、春井さんの今後のライフスタイルも楽しみです。最後に、春井さんにとってのウェルビーイングな社会とは?
春井さん:私は一人で働くのが向いてないと思っていて。みんなで楽しく生きたい。それができるように頑張りたいです。それから、なるべく好意的な目線で物事を見たい。一つの物事が起こったときに想像力は膨らみますが、ネガティブな方向に考えたくないなと。先日サウナに行ったときに、服が荒らされていたんですね。すごく悲しい気持ちになって、フロントの方にお話ししたんです。そしたら「最近ボケがひどいおばあちゃんがいるので、その方かも」という話をされていました。そのとき、自分には優しい目線が持てていなかったと気づきいたんです。悪意をもって物事を動かす人って、あまりいないはず。相手の思っていることを考えられる努力をしていきたいですね。


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