日本の景気をよくするカギは「相続税100%」。和田秀樹「経験を重ねた高齢女子こそいいお金の使い方をしよう」

2025年2月9日(日)12時30分 婦人公論.jp


おしゃれは若返りの効果が…(写真提供:Photo AC)

「60歳の壁を超えると、女性は元気になり、男性は萎んでいく」。女80歳、もう年だからと自分を抑えるのではなく「あれもしたい、これもしたい」と積極的に生きてみませんか。ベストセラー『80歳の壁』の著者である高齢者専門の精神科医・和田秀樹さんによると、夫や子ども、世間体からやっと自由になれる高齢期こそ、女性の幸せのピーク《幸齢期》だと言います。最新作『女80歳の壁』より、楽しく壁を乗り越える秘訣を紹介します。

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経験が/貴女の魅力を/惹(ひ)き立てる


60代になると多くの人は、子供の教育費や家のローンから解放され始めます。やっと「自由に使えるお金」ができるわけです。

それなのに、長い習慣から「お金を使う」ことに罪悪感を覚えてしまう人がいるのです。こうした考え方は、日本人に特有のものと言えます。

例えば、欧米では、白髪の幸齢者がポルシェから颯爽と降りてきたりします。杖を突いた幸齢の女性が真っ赤なシャネルのスーツを着て歩いていたりします。

「素敵ですね」と話しかけると、さらに素敵な言葉が返ってきます。

「シャネルはね、私のような年齢になって着るものなの。若い人にはシャネルの本当のよさはわからないから」

「ポルシェやフェラーリは、若造が乗るクルマじゃないのさ。俺たちは時間に縛られないからね。余裕をもって乗りこなせるんだよ」

カッコいいですよね。美学があるのです。

何の雑誌か忘れましたが、「年をとったらユニクロなんて着るな」という記事を見て、「確かにそうだ」と大いに共感しました。

ユニクロの服は機能的なのにリーズナブルで、すばらしいと思います。でも、私が幸齢者に提案するなら、こうです。

「ユニクロじゃなく、渋谷の109に行ってみたら」と。ユニクロと同じようにリーズナブルでありながら、109には個性的なお店が多数入っているからです。

ウインドウショッピングは若返りの効果があることが知られています。「これを着てどこに行こうかしら」「どんな服と合わせようかしら」と頭が回転します。

考えることが脳の刺激になるのです。そして、さらなる効果も期待できます。

それは、脳に体が騙されること——。脳はとても単純で、若々しい自分を想像すると、若々しい肉体になろうとするのです。

「小娘に、/わかるものか」と/気炎上げ


幸齢者のいちばんの強みは何でしょうか?

私は「経験」だと思っています。多くの方は、自身の経験をないがしろにしてしまっているように見えます。

そして「テレビで言ってたから」とか「あの人がそう言うから」などと、他人の言いなりになっているようにも見えるのです。

とてももったいないですよね。みなさんの「生きた経験」のほうが、よっぽど頼りになるのに……。

例えば、私はおいしいラーメン屋さんを探すのが趣味です。ネットを検索すると山ほど出てきます。

でも、私が何より大事にしているのは、自分の経験です。年間200店ほど回っていますからね。舌も肥えるし、味覚も磨かれています。

もちろん「うわ、なんだこの店は」という失敗も1度や2度ではありません。でも、自分の体を使って得た経験だからこそ、信頼できるわけです。

それが「経験の強み」です。強みは人それぞれです。お花、お茶、推し活、宝塚、マージャンなどの趣味も経験です。

長年やってきた仕事なら、さらに強力な体験と言えるでしょう。ご自身の経験に、もっと自信を持ちましょうよ。

その体験は、物事の善し悪しをはかる「物差し」にもなります。経験をないがしろにするのではなく、独自の経験で培(つちか)った「物差し」で意見を言う。

病院の患者さんと話していると面白いですよ。「ああ、そういう物の見方、考え方があるのか」と勉強になります。

テレビに出るコメンテーターなんかより、社会の荒波に揉もまれてきたみなさんのほうが、よっぽど確かな「ご意見番」になれると思うのです。

失敗は/「年だからね」と/笑い飛ばす


「好々爺」——。爺と書きますが「こうこうや」は女性も含むそうです。

「気のいい老人。善意にあふれた老人」という意味です。こんな言葉があるためか、「年をとったら穏やかに」とか「いいよいいよと、何でも許さなきゃ」と思う人が多いのかもしれません。

ですが、そうやって「好々爺然」としていれば、どんどん萎んでしまいます。そこで提案したいのは、好々爺ではなく「バンバン爺(じい)」で積極的に生きることです。

私も今年は65歳で「バンバン爺」の仲間入りです。だからますます、世間に向けて、言いたいことを言っていこうと思っています。

どんどん悪くなっていく日本に対し、バンバン言う。そのひとつが「相続税100%」という政策です。低迷する日本の景気をよくするカギだと思うのです。

相続税が100%(ただし親子が100%で、配偶者はこれまで通りです)になれば「タンス預金」は一気に解消です。120兆円以上あると言われるタンス預金が動けば、経済の起爆剤になるでしょう。

「みんな国外に逃げてしまう」という反対意見もありますが、幸齢者で住み慣れた日本を離れて外国に移住する人は少ないでしょう。

何事もやってみなければわかりません。腰を引くのではなく、まずはやってみる。ダメだったら次の展開を考える。そうやって初めて前進できるわけです。

過去30年間、金融緩和や財政出動など、政府の経済政策はひとつも成功していないのですから、試してみる価値はあると思いますけどね。

ちょっと話が逸それてしまいましたが、幸齢者は、年をとったいまだから「バンバン爺」になれるチャンスなのです。


失敗しても笑い飛ばす(写真提供:Photo AC)

失敗しても「年だからねえ」と頭をポリポリかきながら、笑ってごまかす。

文句を言われても「年だからねえ」と聞こえないふりをする。そんな芸当ができるのも、したたかな「バンバン爺」だからこそです。

※本稿は『女80歳の壁』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

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