ピルは小学生から使える? 産婦人科医が伝える「子供のつらいPMSや生理痛の対処法」

2023年2月10日(金)7時32分 マイナビ子育て

下腹部痛や腰痛、むくみ、イライラ、便秘や下痢……月経(生理)前や月経中に起こる不快な症状や経血は様々な活動の妨げになります。それは子供だって同じ。そこで、産婦人科医の宋美玄先生に子供の月経対策やピルについて詳しく聞きました。

初潮を迎えたらピルを使えます

ときどき「ピルは何歳から使えるんですか?」と聞かれますが、じつは初潮がきたら低用量ピルも黄体ホルモン剤も使うことができます。何歳以上という決まりはないので、小学生でも大丈夫です。

そもそも、初潮の平均年齢は10〜15歳、つまり小学校高学年から中学生くらいにあたります。個人差がありますが、大人と同様に子供も「月経困難症」といって月経痛が強くて苦しんだり、吐き気や頭痛に悩むことや、「過多月経」といって経血が多くて漏れが気になる子もいます。

また、「PMS(月経前症候群)」といって、月経前になると体調が悪くなったり、むくんだり、下痢や便秘をしたり、イライラして精神的に不調になったりする場合もあります。

そのほか、排卵日近くになると、「排卵痛」といって下腹部が痛くなったり、胸が張るなどの不快な症状に悩まされる場合もあるでしょう。

これらの症状があると、当然のことですが、勉強や運動に集中できなくなってパフォーマンスが落ちてしまうことも。さらには体調不良だけでなく、月経前や月経中に気分が落ち込んでしまい、毎月必ず学校を休んでしまうといった例もあるのです。

月経によって起こる様々な不快な症状を減らしたいと思ったら、ぜひお子さんと一緒に産婦人科を受診して相談してみてください。

低用量ピル、黄体ホルモン、鎮痛剤の特徴

産婦人科では月経周期、困っている症状などを聞いて、おなかに超音波を当てて診察をします。性交経験のない子供の場合、何か特別な理由がない限り内診はしません。

そして低用量ピル、黄体ホルモン薬、鎮痛剤などの選択肢について説明されるだろうと思います。それぞれの特徴は、以下の通りです。

✅<低用量ピル>ルナベル、ヤーズなど卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2種類の女性ホルモンが含まれている薬です。21〜24日間は実薬を、4〜7日間は偽薬を飲む(または何も飲まない)ようにして軽い月経を起こします。低用量ピルは、ホルモンの変動を少なくして排卵を抑制し、子宮内膜を厚くさせないので、月経痛や経血量を減らすことができます。PMSやニキビなどの肌荒れにも効果が期待できることも。

副作用として吐き気や頭痛、血栓症などが起こることがあります。なお、身長が伸びなくなる、乳がんのリスクがあるといわれることがありますが、大きな影響はないとされています。

✅<黄体ホルモン剤>ディナゲストなど黄体ホルモン単独の薬です。1回1錠を1日2回内服することで、卵巣の機能を抑制し、子宮内膜を薄いままに保つので、月経痛や経血量を減らすことができます。

副作用としては不正出血、ときに胸の張りなどが起こることがありますが、血栓症のリスクはないとされています。未成年、初めてピルを使う人、血栓症のリスクの高い40歳以上におすすめです。

✅<鎮痛剤>アセトアミノフェン、ロキソニンなど低用量ピルや黄体ホルモン剤に抵抗がある場合に処方することもあります。痛みを抑えることはできますが、月経過多などには効果がありません。

月経困難症の治療のための低用量ピルは保険適用(3割負担)で1シート(約1カ月分)が600〜2,500円ほど、黄体ホルモン剤は保険適用(3割負担)で2,000〜3,000円くらいで、そのほかに診察料や処方料などがかかります。

通院を手間に感じる方もいるかもしれませんが、3〜4カ月分ずつ長期処方してもらうことも可能です(地域差があります)。

月経の痛みを我慢する必要なんかない

月経にまつわる様々な症状は「病気じゃないんだから」「そのくらいの痛みは我慢できて当然」などと言われることがよくありますが、我慢する必要はまったくありません。

月経痛やPMSなどがあるせいで、女の子たちが勉強や運動などの様々なことにチャレンジする機会を失ったり、受験などで本来の力を発揮できなかったりすることがあればとても残念なことです。

ちなみに受験直前に受診される方がいますが、飲み始めは不安定ですし、できれば本番前年の秋ぐらいには受診しましょう。

私のクリニックでは、小学生から高校生まで幅広い年齢のお子さんに低用量ピルや黄体ホルモン剤を処方しています。治療によって、いつも月経前になるとPMSで学校を休んでいたお子さんが元気に通えるようになったり、つらい月経痛がすごくラクになったと喜んでくれたり、月経がウソみたいにラクになるからと毎回きちんと受診してくれるようになったり。

そうして月経の不快な症状が軽減されて元気になった女の子たちの姿を見ると、とても嬉しく思うと同時に、これまでずいぶん我慢していたんだろうと思わざるを得ません。

現代は昔と違って初潮は早く閉経は遅く、しかも妊娠・出産の回数が少ないために、一生涯に起こる月経の回数が多くなっています。月経・排卵の回数が多すぎると、卵巣がんや子宮体がん、子宮内膜症、子宮筋腫などの病気になるリスクが高くなります。低用量ピルや黄体ホルモン剤は、それらのリスクも下げてくれるのです。 

ですから、月経痛を無理に我慢したりするのではなく、様々なことに前向きにチャレンジするためにも、健康でいるためにも、子供の頃からかかりつけの産婦人科で相談しながらコントロールしていくのがおすすめです。

(解説:宋美玄 先生、聞き手・構成:大西まお)

※写真はイメージです

お話をお聞きしたドクター 産婦人科専門医・医学博士 宋美玄 先生 大阪大学医学部医学科卒業。丸の内の森レディースクリニックの院長として周産期医療、女性医療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。主な著書に、ベストセラーとなった「女医が教える本当に気持ちいいセックス」がある。一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事。

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この記事の執筆者 大西まお 編集者・ライター。出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な担当書に、森戸やすみ 著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、名取宏 著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。■Twitter

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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