花粉症が自然に治ることはある？ 「突然治った」という体験談の信ぴょう性【アレルギー専門医が解説】

Q. 花粉症が自然治癒することはありますか？

Q. 「10代の頃からずっと花粉症の症状に悩んでいます。たまに『花粉症が治った』という友だちがいるのですが、本当に自然治癒することはあるのでしょうか？ 一生、花粉のシーズンに悩まされると思うと、気が重いです」

A. 勝手に治る可能性は低いですが、ゼロではありません

個人の体験談として「花粉症が治った」という話を耳にすることがあるかもしれませんが、大人になるにつれて症状が和らぐ傾向が高い気管支喘息やアトピー性皮膚炎などと異なり、花粉症が自然に治る可能性は、残念ながら高くはありません。
医師としては、「治った」という自己申告も、やや疑わしいのではと考えてしまいます。花粉症の症状は、その年の花粉の飛散量や、その時の個人の体調によっても出方が変わります。花粉の量や体調によっては、ほとんど症状が出ず「治った！」と感じるシーズンもあるかもしれません。
治ったという話と同様に「再発した」という話もまたよく聞きますので、実際に「治った」のではなく、たまたま運よく、「花粉症の症状が出なかった年があっただけ」ということが多いのではないかと思います。
1〜2年落ち着いていたとしても、その次の年に症状が出たならば、花粉症が治ったと言えないわけです。また、「治った」と確実に判断できる検査方法がなく、本当に治った人が病院を受診することはないでしょうから、実際に「治った割合」の調査がしにくいとも言われています。
一方で、「花粉症が治った」という調査報告もあります。調査によって差がありますが、ある報告によると、スギ花粉症の自然治癒率は「12.7％」とされています（※福井大学病院の調査で、20代から40代の同一人物の変化を10年間追跡したもの。『鼻アレルギー診療ガイドライン2020』より）。
「12.7％」という数値を高いと見るか低いと見るかは難しいところですが、実際に花粉症が治ったという人もいるのでしょう。また、高齢者の花粉症の有病率が低いことからも、自然治癒する人が一定数いる可能性も考えられます。
もし花粉症の症状が、1〜2年ではなく、3年間、5年間という長期にわたって全く出なければ、「治った」と考えてもよいかもしれません。

清益 功浩プロフィール

小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。
(文:清益 功浩（医師）)