「ディスカバー農山漁村の宝」アワード(第9回選定)受賞者決定【特別賞-後編】

2023年2月27日(月)17時0分 ソトコト

ディスカバー農山漁村(むら)の宝

【特別賞ー若者とっとり賞】NPO法人bankup


おもしろがろう、鳥取





事業概要
鳥取県鳥取市のNPO法人bankupは、職員7人と大学生ボランティアスタッフ107人が構成員。平成14年から大学生ボランティアを農村へ派遣し始めて20 年以上継続して実施。交流企画や地域特産の加工販売を行う「農村 16きっぷ」、米生産から販売まで行う「田舎応援戦隊三徳レンジャー」等と、地域活動のプロジェクトをおもしろいネーミングで運営しています。





◯今回応募したきっかけ


2022年の春に、中国四国農政局の鳥取拠点の方に棚田支援の活動についてヒアリングを受けたのですが、その時にこれまでの活動の積み重ねなどをお話しすると、今回のアワードについて教えていただきました。ちょうど法人名も変えたタイミングでよい機会だと思い応募しました。


◯20年以上活動を継続しているなかで、いちばん活動で大事にしていることを教えてください


お互いがフェアであることだと思っています。地域活性化や農業支援という言葉は地域側にとっては必要なことであっても、大学生や若者にとっては必要ではない場合もあります。
外から関わる人が、興味を持つ、おもしろがることをデザインして関係性を作っています。そんなひと手間を入れることが20年続いているポイントでもあると感じています。


◯地域活動のおもしろいネーミングはどんな形で決められていますか?


大学生たちと話しながら浮かぶ場合もありますし、最近の企画は学生側で決めてもらうことほとんどかなと思います。農村に若者が関わるという世代を超えた出会いが必須になるので、どういう意思と動きをもった企画なのかわかりやすい名づけを意識しています。


◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?


調整役がいることで、若者が地域に関わり続ける仕組みができることです。キッカケづくり、両者の言葉や要望、文化の翻訳。プロジェクトが安定的に動くための伴走の3つを作っていくことで、地方大学だからこそ地域の農業や農村に触れることができます。短期的には評価しにくいですが、ここから生まれた動きや定着した人材が地域にもたらす影響は大きいと感じています。


【特別賞ーNOUHAKU賞】一般財団法人丘のまちびえい活性化協会


農業×観光の融合 持続可能な美しい村づくり





事業概要
北海道上川郡美瑛町にある一般財団法人丘のまちびえい活性化協会は、農家に代わって畑の大切さを伝えるガイド(インタープリテーションガイド)の案内で、生産農家の畑をリアルに体感できる各種プログラムを実施。景観と農と食を結びつける本物体験型プログラムを展開。観光マナー問題の解決に向け、農泊事業を通じ生産者と一体となって実施しています。





◯今回応募したきっかけ


北海道庁主催の農泊推進セミナーに何度かお招きをいただいて、地域の事例発表を行う機会がありました。また、同じく北海道庁が推進する「農村ツーリズム」の優良事例にも選出していただきました。そんなつながりの中、北海道庁の方からこのアワードについてご紹介をいただいたことがきっかけとなり、応募させていただきました。


◯観光マナー改善のための施策で一番苦心した点、一番成果のあった点を教えてください


やはり、直接被害を受けている生産農家さんに寄り添ったコンセプトにするという点を最も重要視しました。農家さんが望まないことはしない、手間や時間は取らせない、入っていい場所や取っていい量を確認する、防疫対策を徹底する、そして農家さんが伝えてほしいことをしっかり伝えています。
主役はあくまで農家さんであり、我々はその代弁者として動く。畑にも農家さんにも負荷を与えず、持続可能なプランニングにするという点を意識しました。
成果としては、単なる収穫体験や農業体験という概念に留まらない、確固たるポリシーと独自のオリジナリティ溢れるプログラムになったのではないかと考えています。


◯体験型プログラムに参加されるお客様がいちばん満足される点はどんなところですか? またそれが参加者の増加につながっていますか?


普段は立入禁止であるパッチワークの丘のど真ん中に足を踏み入れることができるという点は、美瑛の景色を知るファンにとってはそれだけでも非常に貴重で特別な体験になります。また、アスパラガスやとうもろこしなどを生でかじるおいしさは、畑でしかできない驚きのレア体験です。
ガイドの案内も好評で、ただ風景を眺めていただけではわからなかった、さまざまな新しい発見を知ることができてよかったという声をいただいています。
参加者の増加という点では、美瑛は夏だけに一極集中してしまう観光地でしたが、冬の丘を歩く絶景スノーシュー体験が人気を集め、冬にもたくさんの方が来ていただけるようになったという効果がありました。


◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?


絶景の丘はただの風景ではなく、農作物の生産現場であるということ。そして、そこには傾斜地で農業を営む美瑛の農家さんの苦労があることを知っていただきたいです。そういった事実を、美しい景色を見たり、おいしい農産物を味わったりしながら、ガイドが楽しく、わかりやすく説明します。
どうして勝手に畑へ入ってはいけないのか、それがどんな影響をもたらすのか、そうした事実を知ることによって、自然と畑を大切にする気持ちや、農家さんに対する感謝の心が芽生えてきます。この体験プログラムを通して、訪れる方々が皆さんそういう気持ちになっていただけたら、いつかこの観光マナー問題をなくすことができるのではないかと願っています。


【特別賞ージビエ賞】高知商業高等学校ジビエ商品開発・販売促進部


ジビエで陸の豊かさを守ろう!





事業概要
高知商業高等学校ジビエ商品開発・販売促進部は、高知市役所レストランでジビエ部の活動として高校生ジビエ・レストランの名で販売を実施。高校生が地元のシカやイノシシ肉を原料として商品開発を行い販路拡大に寄与。クラウドファンディングによって森林の保護活動の資金を調達し返礼品にジビエ商品を活用。県内のシカの食害が著しい地域で植樹や防鹿ネット敷設作業を実施しています。





◯今回応募したきっかけ


令和3年度、中国四国農政局の方に「第8回ディスカバー農山漁村の宝」への応募をお勧めされたことがきっかけでした。この年、中国四国農政局版での選定を受けました。そして、令和4年度も昨年度より進化したジビエ部の活動を全国の方々に知っていただこうと応募しました。


◯実際に高知市役所レストランでジビエ部の活動として高校生ジビエ・レストランを実施するなかで、レストランに来るお客様の反応を教えてください


令和3年度から実施している高知市役所レストランでの「高校生ジビエ・レストラン」については、生徒たちは2年間で25日間実施し、300食近いジビエ料理を調理、提供してきました。
若い方からお年寄りまで多くの世代にご賞味いただく中で、「ジビエにトラウマがあったが、これを機に食べてみる」や「思っていたジビエとは全く違う。おいしい」、「高校生が取り組むジビエを利活用し野生鳥獣の食害を受けた森林を保護するという循環型社会貢献活動に協力したい」という多くの意見をいただきました。
高知の中心地でジビエの魅力と私たちの活動を社会に広めることができました。


◯クラウドファンディングをやってみて苦労した点、実施してよかった点を教えてください


クラウドファンディングは、2つの目的を達成するために実施しました。1つはコロナ禍によるイベント消滅で森林保護を支援するための販売利益が減少しても、継続的に森林保護を続けるためです。そしてもう1つは、コロナ禍で在庫を抱えるジビエ加工施設を、クラウドファンディングの返礼品にジビエ商品を使用することで支援するためです。
・苦労した点
生徒が返礼品の発注作業を自分たちで手配したこと、また、鹿の革製品を自分たちの手で作製し、支援者のみなさんに送り届けたことです。部員たちは放課後、部室で鹿革コースターの作製を行いました。しかし、一連の作業の中で、社会の先進的な取組の一端に触れたことで、生徒たちは大きく成長しました。
・よかった点
支援金だけではなく、北海道から沖縄までの全国の方からの応援メッセージです。ジビエ部がジビエを利活用し、野生鳥獣被害という地域課題の解決に向けて循環型の社会を実現しているこの活動にご理解をいただいたみなさまからの応援メッセージに生徒たちが勇気づけられたことです。この応援メッセージのおかげで、「答えがない課題に対してもチャレンジしたい」という前向きな意見を持つ生徒が増えて来ました。


◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?


「人間社会と海山川など自然とがつながっている」ということです。日本中、世界中さまざまな地域課題があります。その中で高知商業高校ジビエ部は野生鳥獣による食害、森林崩壊に目を向け、「陸の豊かさを守ることで、持続可能な社会を実現する」という目的のもと、ジビエ利活用、商品化、販売、利益を森林保護活動に支援するという循環型社会の実現に向けて取り組んでいます。
その過程で、生徒たちは海山川は繋がっていることを認識しました。森林を守ることで川が豊かになり、海洋資源が豊かになります。人間社会の持続性を維持するための基本がここにあるとジビエ部員全員が信じています。


【特別賞ーむらの宝食文化賞】高木 幹夫


次世代につなぐ「食」文化





事業概要
愛知県大府市の高木幹夫さんは、昭和50年代、地元の在来タマネギから播種作業を始めて40 年以上、種苗会社が扱わない「あいちの伝統野菜」を栽培・播種。「次世代につなぐ採種作業」をテーマに講座・講演・食イベントを通じて「あいちの伝統野菜」の普及活動を実施しています。





◯今回応募したきっかけ


以前からこうした認定、表彰制度などには興味を持っていませんでしたが、畑に東海農政局担当者の方が訪問され応募を進められた。過去の選定された組織等に比較して規模的にも内容的にも蚊帳の外のような気がしましたが、内閣総理大臣官邸での授賞式に魅力を感じ応募させていただきました。


◯あいちの伝統野菜の伝承活動を続けるために苦心した点を教えてください


「あいちの伝統野菜」に認定されている21品目35品種の野菜について県外は勿論のこと愛知の県民の大半が認識していないことを知ったときでした。また、認識していない「食」に携わる専門家や農業関係者にどのようにしてアプローチしていったらよいか分からず苦労しました。
結果、仲間づくりに心がけるとともに、食にまつわるさまざまな資格(調理師、野菜ソムリエ、フードコーディネーター、薬膳マイスター etc.)を取得、自ら伝統野菜を主軸とした「食」イベントを開催して広めていくことしかありませんでした。


◯ここまで活動を続けているなかで、活動してきて良かったと思える(具体的な)エピソードがあれば教えてください


活動を通じてさまざまな業態に携わっている方々との交流が広がり、よき仲間づくりができ「食」の入り口部分から出口部分まで体験できるようになったことです。
そして長く続けてきたことで伝統野菜がメディア(TV、新聞、雑誌など)に取り上げられる機会が増え伝承活動に役立てることができました。また、地元で生まれ育った野菜がその土地、土地の食文化を育ててきてくれたことを肌身で感じることもできました。


◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?


いままでさまざまな農業関連事業で表彰されてきた方は法人格をもつなり、その規模も大きく、その事業を生業(なりわい)としている皆さまばかりと認識していましたが、私のように生業とせず「趣味の領域」内での活動に対しても高く評価していただいたことに感謝するとともに規模の大小問わず、このプロジェクトの趣旨に沿った活動をされている方々に「貴方も対象者です!」を伝えたい。


【特別賞ー地域復興大賞】株式会社やまもとファームみらい野


住民参加型による持続可能な新しい農業経営





事業概要
株式会社やまもとファームみらい野は、耕地面積の約8割が津波被害を受けた宮城県亘理郡山元町で、地域農家と協力し営農組合を設立。平成29年5月に「復興創生とまと」として初出荷し、令和3年からはさつまいもの輸出を開始しています。





◯今回応募したきっかけ


東北農政局の担当者の方からの紹介があり応募しました。特に、仮に受賞した場合は授賞式が首相官邸で行われることもあり、チャレンジの想いで応募しました。


◯どんな想いを持って事業を始めたのか教えてください


東日本大震災で壊滅的な被害があった地で、農業で地域の再生をいう町の復興計画を相談され、120haの広大な畑地での再生、持続可能な農業先進地の実践場として、地域とJAグループが一体となり事業を開始しました。
そこには、ご支援をいただいた世界中の方々への感謝の気持ち、再生整備された畑地を価値のある農地に仕上げ、貸していただいた地権者の方々へ恩返し、雇用の創設、スマート農業技術にチャレンジと普及など、単に再生だけでなく新たな創生が事業目的にあります。


◯さつまいもづくりで一番意識しているポイントは?


消費者の皆様に「おいしい」と喜んでもらえる商品づくり、そのための安心安全な商品づくりに努めています。栽培管理と収穫後の保管管理が、「おいしい」さつまいもの秘訣となるため、生産管理の可視化と保管管理の最適化を探求しています。まだまだ、課題は沢山あり、日々勉強です。


◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?


我々は、日本の自然の恵みをわけていただき、おいしい農産物と加工品が作れています。特に、消費者の皆さんには、時にやさしく時に厳しく試練を与える、日本の自然環境がくれる恵は、世界中の国々に比べてトップクラスであります。その豊かな農山漁村の持続には、国産国消が必要です。それが我々の作る力になります。

ソトコト

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