【老後】60歳で退職して余生は田舎で暮らしたい! いくら貯蓄があれば実現するか試算してみた
2025年3月5日(水)10時32分 マイナビニュース
昭和の時代では、60歳で定年退職して、残りの人生は旅行や趣味に興じてのんびり過ごすことは普通のことでした。しかし現在は、年金だけでの生活は厳しく、老後も長く働かざるを得ない状況になっています。そんな中で、「60歳で退職して余生は田舎で暮らしたい!」と心に決めた場合、いくら貯蓄を持っていれば実現できるのか、シミュレーションしてみました。老後のライフプランを立てるときの参考にしてみてくださいね。
老後の生活費はいくらかかる?
まずは、老後にどのくらいお金が必要なのか、総務省の家計調査から高齢無職世帯の1か月の生活費をみてみましょう。
65歳以上の単身世帯の生活費の内訳は以下になります。
■65歳以上の単身世帯の1か月の生活費
65歳以上の単身世帯の生活費(消費支出)は約14万5,000円です。これに税金や社会保険料など非消費支出を加えると支出の合計は約15万8,000円になります。
●単身世帯: 月15万8,000円
65歳以上の夫婦世帯の生活費の内訳もみてみましょう。
■65歳以上の夫婦世帯の1か月の生活費
65歳以上の夫婦世帯の生活費(消費支出)は約25万円です。これに税金や社会保険料など非消費支出を加えると支出の合計は約28万2,000円になります。
●夫婦世帯: 月28万2,000円
生活費の内訳をみてみると、住居費が単身、夫婦にかかわらず1万円台と少なくなっていますが、「持ち家・田舎暮らし」とすると妥当と考えられます。また、保険医療費が単身で7,981円、夫婦で1万6,879円と、老後にしては少ないと感じると思いますが、日々の暮らしの中での医療費は医療保険制度によって多くはかかりません。介護が必要となった時の費用は次項で計算して、必要な資金に加えましょう。
介護費用はどのくらいかかる?
生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」から、介護期間と介護費用のデータをみてみます。本調査によると介護期間の平均は55ヵ月(4年7か月)。介護費用の平均は、一時的な費用の合計が47万円、介護費用の月額が9万円となっています。介護費用の月額の詳細をみてみると、在宅で介護を行った場合は平均5.2万円、施設で介護を行った場合は平均13.8万円となっています。
●介護費用総額: 542万円(平均)
自宅介護の場合: 333万円
施設介護の場合806万円
※介護期間を5年とした場合の総額は、平均587万円、施設介護の場合は875万円となります。
年金はいくらもらえる?
厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の平均年金月額は14万7,360円となっています。ここから単身世帯の年金額を月15万円とします。
夫婦の場合は、厚生労働省が公表した「令和7年度の年金額改定についてお知らせ」から、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額が23万2,784 円(月額)と提示されていることから、月23万円とします。ただし、これは専業主婦(夫)世帯を想定しています。
共働き世帯の夫婦の場合は、同資料の年金額の概算から、厚生年金期間中心の男性の年金額17万3,457 円と厚生年金期間中心の女性の年金額13万2,117 円を足して、30万5,574円となることから、月30万円とします。
●単身世帯: 月15万円
●夫婦世帯(片働き世帯): 月23万円
●夫婦世帯(共働き世帯): 月30万円
60歳で退職して年金だけで暮らすにはいくら必要?
データが揃ったので試算してみましょう。
単身者の場合
<試算にあたっての条件>
・60歳から65歳までは貯蓄を切り崩して生活
・65歳から95歳まで年金受給
・90歳から95歳まで介護が必要
・介護費用は875万円とする(施設介護)
・介護期間の生活費は半分とする
60歳から65歳までの収支: 948万円不足
65歳から90歳までの収支: 240万円不足
年金月額15万円−生活費月額15万8,000円=月額8,000円不足
8,000円×12ヵ月×25年=240万円
90歳から95歳までの収支: 449万円不足
年金月額15万円−生活費月額7万9,000円=月額7万1,000円黒字
7万1,000円×12ヵ月×5年=426万円
介護費用875万円−426万円=449万円
必要資金: 1,637万円
夫婦世帯の場合
<試算にあたっての条件>
・60歳から65歳までは貯蓄を切り崩して生活
・65歳から95歳まで年金受給
・90歳から95歳まで介護が必要
・介護費用は1,174万円とする(平均額587万円×2人分)
・介護期間の生活費は半分とする
*片働き夫婦
60歳から65歳までの収支: 1,692万円不足
65歳から90歳までの収支: 1,560万円不足
年金月額23万円−生活費月額28万2,000円=月額5万2,000円不足
5万2,000円×12ヵ月×25年=1,560万円
90歳から95歳までの収支: 640万円不足
年金月額23万円−生活費月額14万1,000円=月額8万9,000円黒字
8万9,000円×12ヵ月×5年=534万円
介護費用1,174万円−534万円=640万円
必要資金: 3,892万円
*共働き夫婦
60歳から65歳までの収支: 1,692万円不足
65歳から90歳までの収支: 540万円黒字
年金月額30万円−生活費月額28万2,000円=月額1万8,000円黒字
1万8,000円×12ヵ月×25年=540万円黒字
90歳から95歳までの収支: 220万円不足
年金月額30万円−生活費月額14万1,000円=月額15万9,000円黒字
15万9,000円×12ヵ月×5年=954万円
介護費用1,174万円−954万円=220万円
1,692万円+220万円−540万円=1,372万円
必要資金: 1,372万円
ゆとりある生活を送るにはさらに資金が必要
試算に使った生活費は、日常生活を送る上での平均的な生活費であって、旅行や趣味などを楽しむためにゆとりを持たせた生活をするには、生活費にその分を上乗せする必要があります。
生命保険文化センター「生活保障に関する調査2022年度」によると、夫婦2人の老後生活において、ゆとりある老後生活費の平均は37.9万円となっています。このことから、夫婦世帯でプラス10万円、単身世帯でプラス5万円あれば、ゆとりある生活ができると考えられます。
ゆとりある生活で試算した必要資金の結果もあわせて表にまとめました。
まとめ
「60歳で退職して余生は田舎で暮らしたい!」を実現するためには、単身世帯で約1,600万円、片働き夫婦世帯で約3,900万円、共働き夫婦世帯で約1,400万円の老後資金が必要という試算結果が得られました。ただし、現行の制度がこのまま続いた場合の試算であり、物価の上昇などは考慮していません。そのため、必要資金は多めに見積もっておき、資産運用で増やすこともあわせて考えておくといいでしょう。
ゆとりある老後生活を送るなら、さらに多額の老後資金が必要となります。自分に合った老後のライフプランをしっかりと描くことから始めてみるといいでしょう。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら