筋肉先生・谷本道哉<40代に見える50代><60代に見える50代>は何が違うのか?「高齢だから筋トレしても手遅れ」ということは決してない

2024年3月25日(月)12時30分 婦人公論.jp


テレビでも人気の谷本道哉先生いわく、筋肉はいくつになってもつけることができるそうで——

日本生活習慣病予防協会の発表によれば、いわゆる肥満に該当する人は男性 の33.0%、女性 22.3%(2020年12月発表)に。健康管理維持を考えれば、肥満対策はもはや日本人全員の課題とも言えそうです。一方、テレビでも人気の谷本道哉先生は70歳まで働けるカラダを維持することを目標に掲げ、各種の運動や体操を提唱してきました。その先生いわく、筋肉はいくつになってもつけることができるそうで——

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老いは「足元」から


加齢に伴って筋肉がやせ衰えていくことを「加齢性筋萎縮症」、「サルコペニア」といいます。なんだか恐ろしい響きですね。

そしてサルコペニアはやっかいなことに、体重を支える下半身の筋肉や、姿勢を支える腹筋群、背筋群といった「日常生活に直結した筋肉」において激しく進行します。元気に日常生活を自立して過ごすための大事な筋肉ほど衰えやすいのです。

たとえば、体重を支える太ももの前の筋肉では、30歳代くらいから萎縮し始め、80歳くらいまでに、平均して20歳代の半分程度にまで筋肉が細くなります。

筋力の強さは主に筋肉の太さで決まりますので80歳で脚の筋力は半分になってしまう計算になります。太さ以外の要因もあるので正確には半分以下ですが。

ということは、若いころに片足で立ち上がれないくらいの筋力しかない人は「特に対策をしていなければ」80歳になったときには自立して生活するのが困難になる、と言い換えられるでしょう。70歳まで働く人が増えてきた時代に、これはとても不安な予測です。

脚の筋肉の衰えは特に顕著であるうえに生活機能と直結します。その衰えを自覚しやすいことから、「老いは足元からやってくる」などといわれます。「足腰を鍛えていつまでも元気に」などというのも、足腰の衰えが高齢者から元気さを奪うからに相違ありません。

それゆえいつまでも活動的で元気に過ごすためには、サルコペニア、特に脚の筋肉の衰えをいかに防ぐかが極めて重要となるのです。


『学術的に「正しい」若い体のつくり方』(著;谷本道哉/中公新書ラクレ)

サルコペニア予防にもやはり「筋トレ」


近年では80歳どころか、90歳、100歳までご在命の方も珍しくなくなってきています。

この図には80歳までのデータしかありませんが、90歳、100歳になればさらに筋肉細胞の死滅、筋肉の萎縮は進むと考えられます。

■太もも前面の外側広筋の筋細胞数の加齢変化

ということは、長生きするほど、サルコペニア予防の重要性がより高まるわけです。そして、このサルコペニア予防として現在分かっている最も効果的な運動は、筋肉に強い負荷をかけて鍛える筋トレです。高齢でもしっかりと筋トレをしている方は明らかに体つきが違いますよね。

筋トレ実施者では高齢でも一般の筋トレを行っていない若年者よりも筋力が強く、加齢による筋力の低下率は非実施者の3分の1程度に抑えられているという報告があります。

ほかの運動も効果がないわけではありませんが、筋トレほどの明らかな効果を得るのは難しいようです。ランニングや水泳を行っている高齢者では、運動を行っていない同年代の人と筋肉量に大きな差がないという報告もあります。

「サルコペニア予防にはしっかり筋トレ!」が合言葉だといえますね。

何歳からでも筋肉はつく!


「年をとってから筋トレを始めても筋肉はつくの?」などと疑問に思われるかもしれません。

答えは断然「イエス」です。

ものすごい筋肉をした高齢のボディビルダーの中には、40、50歳の中年から筋トレを始めた方も少なからずいらっしゃいます。

高齢者の筋トレ効果を示す研究はたくさんあって、70歳でも80歳でも、10回をなんとか反復できるくらいに強めの負荷でしっかりと筋トレをすれば筋肉は大きく成長します。一方で軽めの負荷での筋トレでは、完全に追い込み切らない限り、あまり筋肉が大きくならないという研究もたくさんあります。

60〜72歳の被験者が脚の高負荷筋トレを、週3回行った実験の結果です。

3か月間の筋トレ実施によって、なんと脚の筋肉が平均で11%も肥大しています。高齢者ということで元の体力のレベルが低く、筋肉が肥大しやすいという要素はあるでしょうが、

値そのものは、若者の場合の筋トレ実験と比べて遜色ありません。

■高齢者(60−72歳)の筋トレ実施と筋肥大効果


『学術的に「正しい」若い体のつくり方』(中公新書ラクレ)より

加齢により死んだ筋肉の細胞は戻ってきませんが、残された筋肉は高齢になっても、しっかり筋トレで鍛えれば太く成長させることが可能なのです。

つまり筋トレについては高齢になってしまったから手遅れということは決してありません。始めるのに遅すぎることはないのです。

平均年齢80歳を超える被験者を用いた実験でも筋肉がしっかり肥大したという報告はいくつも出ています。

40代に見える50代、60代に見える50代にはそれなりの理由が


筋肉に限らず、われわれの身体機能は加齢とともに衰退します。いわゆる老化現象です。

しかし、「はじめに」にも記しましたが、老化は避けることはできなくても、その程度を変えることは取り組み次第で可能です。

筋肉に関してはしっかりと運動、特に筋トレを行うことでサルコペニアを食い止めることができます。逆にほとんど動かずに家でゴロゴロ過ごしていたら、よりサルコペニアが進んでしまいます。 

50代でも若々しく40代のように見える人がいますが、それなりに理由があります。一方で老けた、覇気のない60代に見える50代の人もいます。やはりそこにもそれなりの理由があります。どうせなら若く見えるほうでありたいですよね。

なお、筋トレに関しては始めるのに遅すぎることはないのですが、やはり早めに手を打っておくに越したことはありません。

筋肉の細胞数が減少し始める30代。このころからしっかり鍛える習慣を身につけておくのが筋肉の細胞数の減少を食いとめるためには理想です。少なくとも細胞数の減少が急速に進む50〜60歳代までには筋トレを始めたいところです。

※本稿は、『学術的に「正しい」若い体のつくり方』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

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