老々介護の現状。既に介護者の年齢分布は60歳以上が8割、70歳以上が47%。介護は「する側」も労われるべき
2025年4月2日(水)12時30分 婦人公論.jp
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身近な人に看護・介護が必要になったとき、みなさんはどこに相談しますか?
総合的な相談先として、主治医の所属機関を問わず、活用できるのが「訪問看護ステーション」です。
その地域に開かれた独立した事業所である「訪問看護ステーション」に、黎明期から関わり、自ら起ち上げた「桂乃貴メンタルヘルスケア・ハートフル訪問看護ステーション中目黒」で、自分自身も看護に当たるのが渡部貴子さん。
自らの経験を元に、介護や看護で困っている方への質問・疑問に答えてもらうのがこの連載です。第11回目は、「老老介護に向けて」です。
(構成:野辺五月)
* * * * * * *
前回「介護や看護に困ったら【おとなの相談室】10」はこちら
早めに動くことがかなり重要
Q:母の世話をしていますが、私自身もそんなに身体が強いほうではなく、最近疲れを感じます。もしかして老老介護になっているのでは?と思うのですが、どの段階からどういうことに気を付ければいいのか分からず……アドバイスをいただきたいです。
A:2022年の統計データで、既に介護者の年齢分布は60歳以上が8割……特に70歳以上が47%ととても高く、「老老介護」が一般的な状態まできています。
介護の内容は、排泄や食事の補助、薬の管理など「物理的」なことが多く、体力がしんどい……負担になる動作もあるので、ある程度年を取った方がやるのには厳しい部分も多くあります。特によく相談されることとしては、腰が痛い、自分が眠れなくなってしまう、外に出られないなどなのですが、年齢問わず、今後を考えて行き詰まりそうであることについて、苦手な部類のこと、身体的に無理があることはなるべく「分担していく」必要があります。
特に体力は、何かで崩れると急激に動けなくなるのは、年齢によってどうしても防げないことでもあります。普段から、体調を崩したら誰に頼むのかを決めておく、頼り先を決める必要があります。さしあたりご近所の仲良しさんでも構いません。醤油が借りられるくらいの距離感を作っておいていただきたいところです。どこかに話を繋げられるようにしておくことが必須なのです。もちろん、本当に困ったら主治医でも構いません。ただ話はきいてもらえますが、生活の状況は見えないので日頃からまめにお話できるような関係性はとても重要です。
そういう部分も含めて、早めに動くことがかなり重要になってきますので、「不安だな」「少し疲れたな」という段階で動きたいところ。
我慢できる、何とかなるという気持ちも分かります。身内にこそ頼みづらいという場合もあるでしょう。そんな中でご相談のように、負担が増えているようならばまずどこに頼んだらいいのか?どこに相談するべきか?
介護は「する側」も労われなくてはならない
最初は、「地域の中で」頼れる場所を作ることをお勧めします。
あまり知られていないのですが、地域の訪問看護ステーションで仕事をしていく中で、私達現場の人間は「介護される人も介護する人も両方がケアされる人だ」という考え方でいます。基本的には、介護は「する側」も労われなくてはならない対象なのです。
介護される側だけでなく、自分側の状況も含めて相談することをいとわないでください。
まだお世話になる先が決まっていない段階での相談も気軽にしてもらってかまいません。
それでも、声がかけにくい、あげにくい場合は、一番親しみがあるところや物理的に近いところ(簡単なところ)にしましょう。
具体的に他の選択肢としては、「包括支援センター」があります。
地域の介護全般を担っているので、まずここから行ってみましょう。電話で相談してもいいですし、ふらっと訪ねて行っても大丈夫です。更に、来てもらうこともできるのです。
事情を話せば助けてくれる先として覚えておいてください。
場所が分からない、窓口に迷う方は、まず回覧板をチェックしましょう。それでもわからなければ、子どもたちに調べてもらうのも手です。自分で検索しても見つからない場合は、市役所や区役所にきくのでも構いません。
普段から質問できる駆け込み寺
イメージ(写真提供◎Photo AC)
次に、「お金の問題(前回連載もご参照下さい)」が気になる方も多いと思いますが、介護認定を早めにちゃんと取ること。
この時に、介護される側はもちろんですが、ご自分の状態も健康診断などを通して、すぐに確認できるようにしていきましょう。認定により、経済状況に合わせたサービスも受けられます。また要介護認定を受けていない場合でも利用できる民間のサービスを受けたい場合も、地域包括センターが相談に乗ってくれます。状況に合わせて、普段から質問できる駆け込み寺を用意してください。
当然人間ですので、相性や状況もあります。もし地域のセンターがダメならば役所、それでも合わなければ訪問看護ステーション……行き詰らないように、早めに当たることが大事です。相談の仕方自体に迷う方は、「どういうサービスがあるのか」を知るだけでも大分気持ちが違います。
駆け込む場所については、少なくともこれで幾つか候補が見えたと思います。必要な情報を集めていきましょう。
また、自分はまだ大丈夫という状況の方も、ご近所で困ってそうな人を見かけたら教えて下さい。行き詰ってしまうと自分達だけで、社会との関りを持ちづらくなるケースが最近とても増えています。私ども看護の専門家も、アクセスできなければお手伝いできません。
このところ、地域の訪問看護ステーション自体の数は増加傾向にあります。ここを起点として、的確な介護を、介護者する側も含めて進めていけるように願っています。
何かある前の専門家……先に「サービスを知る」「駆け込み寺を作る」「疲れを感じたら相談のしどき」ということで、少しでも質問の答えになっていれば幸いです。
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