新型コロナで「いよいよこいつの世話に...」 戦前に配布?「軍隊マスク」に思わぬ脚光
2020年4月3日(金)17時0分 Jタウンネット
安倍晋三首相は2020年4月1日、新型コロナウイルス対策のため、全国すべての世帯に布マスクを2枚ずつ配る方針を表明した。
これを「エイプリルフール」のジョークと受け取った人もいたが、残念ながらジョークでも、フェイクニュースでもなかった。
たちまちツイッターのハッシュタグ「#アベノマスク」がトレンドの上位にランクインし、一時はトップに立ったほどだ。マスクへの関心が否が応でも盛り上がってしまった日となった。
そんな中、次のようなツイートが投稿され、話題になっている。
いよいよこいつの世話にならねばならぬか( ー?ωー? )
— 信州戦争資料センター (@himakane1) 2020年4月1日
写真は、なんだか古めかしい袋だ。「愛國印 衛生 軍隊マスク」と記されている。「いよいよこいつの世話にならねばならぬか」というコメントも添えられている。
いったいこれは何だろう?
Jタウンネット編集部は、このツイートを投稿した信州戦争資料センター(@himakane1)に取材した。
日中戦争初期頃のもの?
「軍隊マスク」を紹介した信州戦争資料センターは、長野県を中心として、戦時下の資料で、戦時関連資料を幅広く収集、分析、活用し、戦争の実態を後世に伝えることを目的として活動している。長野市在住の有志がツイッターとブログを運営し、毎年展示会も開催しているという。
Jタウンネット編集部の取材に、「オークションで入手して保管していたものです。詳細は全く不明です。わかる範囲でお答えいたします」と応じてくれた。
このマスクは、いつ頃作られたものだろう?
「分かりません。ただ、国の漢字が旧字であることと、愛国という言葉が流行った時代を勘案すると、日中戦争初期頃かとも思えます」
日中戦争の開始は、1937年(昭和12年)からとされている。盧溝橋事件、北支事変を経て、戦火が広がっていった。ちなみに1940年(昭和15年)9月から開催予定だった東京オリンピックは、戦争その他の影響で開催権を返上し、結局中止された。
英語は敵性言語で使用できなかったとも聞くが、「マスク」は使用できたのだろうか?
「敵性語は、法律ではなく、許認可事務の際に政府が指導したり、民間の活動で取り締まったりしてますので、濃淡があります。影響のない時代のものか、気にとめられなかったか、どちらかだと思われます」
この「軍隊マスク」は、英国、米国との戦争が始まる前の時代の製品なのかもしれない。「軍隊マスク」が作られたのは、1940年前後のころだろうか。有事に備えて、今回のように民間に配布された可能性も、ゼロではないだろう(Jタウンネット記者の推測に過ぎないが......)。
「軍隊マスク」の材質、サイズ、特徴などを聞くと......、
「幅20.5センチ、縦10センチ、四隅にヒモが付いており、長さ11センチ。本体は3枚の布をミシンで縫い止めてあり、ヒモは1枚布です。油紙のような包みにずっと入っていたせいか、少々ホコリの香りがする程度。比較的丈夫な本体に対して、ヒモは短く弱そうという感じです」
けっこう丈夫そうなマスクのようだが、抗ウイルス効果があるかどうかは不明だ。
ツイッター上の反響で、とくに印象に残ったことを聞いてみた。
「マスクを配布するという政府発表のタイミングと重なり、多くの関心を集めていただいたと思いますが、予想以上の反響で驚きました。身近な雑貨でも歴史を伝える存在になると感じて、感想、関心を寄せていただいたのかなと。これまでも、戦争と庶民の関係を示す資料を収集して、将来をあゆむ時の皆さんの参考になればと展示会やツイートで紹介してきました。政府配布のマスクも、100年後には歴史の記録になるでしょう。この時代を伝えるモノと一緒に保管していきたいです」
安倍首相が配布する布製マスクは、信州戦争資料センターに収蔵され、大切に保管され、長く後世に伝えられることになりそうだ。軍隊マスクと「アベノマスク」の比較・検証も、かなり興味深いかもしれない。