シリーズ初の0.3mmもすごいけれど、新発売「フリクションシナジーノック」の開発者が“0.5mm”も推す訳

2024年4月9日(火)21時50分 All About

「フリクション」シリーズの新作「フリクションシナジーノック」は、2019年発売「フリクションポイントノック04」のリブランディング製品です。今回の新製品について、パイロットの開発担当者にお話を伺いました。

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「フリクションシナジーノック」は、パイロットの消せるボールペン「フリクション」シリーズの最新作です。
ノック式のボディーに、細い文字もよりなめらかに書けるペン先である「シナジーチップ」を搭載した製品としては、2019年に発売された「フリクションポイントノック04」がありますが、今回の製品は、そのリメイク的な位置づけでもあります。

シナジーチップを搭載したボール径0.3mmのフリクションが登場

とはいえ、ボール径0.4mmのタイプしかなかった「フリクションポイントノック04」とは違い、今回は0.3、0.5mmのタイプもラインアップ。
また、軸のデザインも大幅に変更しているので、ユーザー側からすると“新製品”というイメージです。
実際、今回発売された「フリクションシナジーノック(0.5mm)」を使ってみたところ、従来の「フリクションボールノック」の0.5mmと比べて、ハッキリと違いが分かるくらいなめらかにスムーズに書けることに驚きました。

同様に、0.3mmの激細タイプでも、インクの粒子が大きいフリクションインキだというのに、まるでゲルインクボールペンの0.3mmに近いなめらかさを感じました。
つまり、これが「シナジーチップ」の威力なのでしょう。2016年にゲルインクボールペンである「ジュースアップ」で登場した「シナジーチップ」ですが、その威力を改めて思い知った気がしました。

極細字を滑らかに書くために開発された「シナジーチップ」とは?


「もともとは、2010年代に入って、特に国内で“細書き市場”がとても大きくなってきたという背景がありました。日本では漢字を書くということもありますし、スケジュール帳などの狭いスペースに書き込むシーンも増えたということもありました。
当時、細い文字をボールペンで書くならペン先は『パイプチップ』が主流だったのですが、その構造上、『コーンチップ』に比べると、どうしてもインクの出が悪くなったり、パイプチップの耐久性に問題があったりしました。
そういう背景から、細く書けるけれど、同時になめらかに書けて耐久性が高いものを生み出そうというところから生まれたのが『シナジーチップ』です」と解説してくれたのは、株式会社パイロットコーポレーション、グローバル企画部筆記具企画課主任で、「フリクションシナジーノック」の開発を担当された長田康暉さん。
「パイプチップ」は、細いパイプの先にボールを付ける構造なので、どうしてもインクの通り道が細長くなります。その分、ボールの手前までたっぷりとインクを供給できる「コーンチップ」に比べると、インクの流量が減ってしまうのです。
また、パイプが曲がりやすいなど耐久性にも欠ける部分があるのです。
一方、「コーンチップ」は、インクの流量も多く、耐久性も問題ないのですが、ボール径を小さくすると、筆記時にチップが紙面に当たってしまうので、小さいボールを入れるのが難しく、極細字用にはあまり向いていません。

「そこで、『パイプチップ』と『コーンチップ』の長所を掛け合わせ、パイロット独自の『シナジーチップ』が生まれました。
パイプを短くして、なるべくボールに近い部分にインクを溜めるダムのようなものを作るという構造です。
ただ、染料系のゲルインクのように、インク自体の粒子が小さければ、パイプチップでもインクの出は良いのですが、粒子が大きいフリクションインキでは、『シナジーチップ』はより効果的です」と長田さん。
それなら、細字用のボールペンは全部シナジーチップにすれば良いのではとも思ったのですが、「シナジーチップを製造するのは、一般的なチップよりとても手間がかかります」という長田さんのコメントのように、コストや手間の問題もあり、そう簡単な問題ではないようです。

0.5mmでのなめらかな書き味にも注目してほしい


今回の「フリクションシナジーノック」で面白かったのは、0.5mmも従来のものより圧倒的に書きやすかったことなのですが、それに関しては「0.5mmまでがシナジーチップの効果を感じられる限界だと思います。
0.7mmになると、もうコーンチップとほとんど差がなくなってしまいます」ということでした(長田さん)。

「『フリクションシナジーノック』は、もともとは、『フリクションポイントノック04』の0.3mmバージョンを出そうというところから始まりました。
ただ、同じ0.3mmを出すだけでは面白くないし、世間的にも『シナジーチップ搭載のフリクション』の書きやすさが、いまひとつ浸透していない感じでしたから、それなら全面的にリブランディングしようというところから出来た製品なんです。
なので、フリクションシリーズ初の0.3mmというのが注目されると思うのですが、ぜひ0.5mmの書き味にも注目してほしいと思っているんです」と長田さんも言います。
海外では、すでに「フリクションポイントノック」の0.5mmを発売していたそうですが、国内では今回が初の発売です。
そして、やはりフリクションボールノックは、フリクションインキの粒子が大きいこともあって、書き味のなめらかさという点では、他のゲルインクボールペンなどに比べると、一歩譲る感じだったのです。
ところが、今回の0.5mmなら、日常の筆記に、それこそシャープペンシルの代わりにも使えると感じて、実際、普段はシャープペンシルを使っていた確定申告の明細作りのメモに、「フリクションシナジーノック(0.5mm)を使ったほどです。

リブランディングというより“新製品”と言えそうな変化


シナジーチップの威力を端的に感じるには、0.5mmが有効だと感じたのですが、フリクションインキで0.3mmが可能になったのも、シナジーチップだからこそなのです。
つまり、インクの粒子が大きくても、なめらかに細い文字が書けることを実現するためには、シナジーチップが必要だったということです。
「なので、『フリクションポイントノック04』の0.3mmを発売するというのでも良かったのかもしれません。ただ、そのままでは、シナジーチップの可能性を生かすことはできないかもしれないと思い、それならデザインから何から全部変えてしまおうと考えました。
しかし、『フリクションポイントノック04』が売れていないというわけでもないので、実際、変えてしまっていいのかというのは、かなり悩んだところです」と長田さん。
リブランディングとして、「フリクションポイントノック04」と今回の「フリクションシナジーノック」では、デザインが大幅に変わっています。
マットなグレーの軸にインク色に合わせた透明パーツのクリップ、「ポイントノック」では金属パーツだった口金は樹脂パーツに変更されて、全体的に落ち着いたイメージになりました。

高級感の時代からシンプルでナチュラルな時代へ


「デザインに関しては、何か引っ掛かるものはあるなというところがあって、『フリクションポイントノック04』の評価を調べると、『高級感がある』とか『高価そうに見える』といったワードが多かったんです。
ただ、今は、そっちの路線じゃないなと思いました。高級感よりデザイン性や身近に使える感じを重視したいと考え、このシンプルなデザインにしました」と長田さん。
かつて、普及価格帯のボールペンと言えば、軸の色とインクの色を合わせるか、透明軸にするのが当たり前だったのですが、ここ数年、単色のマットな質感の軸が増えています。
そういった流行からも、今回のシックでシンプルなデザインは、リブランディングにふさわしいものになっていると言えるでしょう。
口金が樹脂になったのには賛否がありそうですが、個人的には低重心より軸全体が軽い方が書きやすいと思っているので、筆者は今回の方が好きです。見た目もスッキリしたと感じます。
製品としては、「フリクションポイントノック04」のリブランディングではあるのですが、製品のポジションとしては、「フリクションボールノック」に置き換わるもののように感じます。
価格も、20円しか違わない(リフィルの価格は同じ)ので、書き味と軸のデザインを重視するなら、こちらを選びたいと思うのです。
実際、フリクションの0.3mmはこれしかないわけですし、0.5mmを使ってみれば、その書き味の違いはハッキリ分かります。フリクションのユーザーなら、とにかく一度、試してみてください。

納富 廉邦プロフィール

文房具やガジェット、革小物など小物系を中心に、さまざまな取材・執筆をこなす。『日経トレンディ』『夕刊フジ』『ITmedia NEWS』などで連載中。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方を伝える。All About 男のこだわりグッズガイド。
(文:納富 廉邦(ライター))

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